七話. 黒糖はクッキーに合うらしい
家で寝てるとママからテストについて聞かれた
私の夢は看護師なので60~70点ぐらいとってれば許された。
あぁ、看護師になって彼を助けたい。彼と向き合って彼と話し合いたい。
「あぁ、早く明日がこないかなぁ」
明日、また彼に会える。それがこんなにも素晴らしいことだなんて
いつか彼が私に告白するまで……
(何馬鹿なこと考えてるんだろう)
「もう寝よ」
*
PiPiPiPi
「ふぁあ」
眠い。でも、とりあえず起きて着替えなくちゃ。寝癖も直さないと
彼には完璧な私を見てほしいからね。
「おはよう、ママ」
「あら、おはよう」
「朝ごはん何?」
「お味噌汁としゃけのムニエルよ」
「やったぁ」
前に納豆しかなかったことがあってケンカしてからはすっかりまともな朝ごはんになった。
そういえばあの時が初めてのケンカだったんだなぁ。
それからずぅっと仲良く生活してるの。
「あぁそうだ」
「何?ママ」
「金子さん家のおばあちゃんが行方不明なんだって」
「えぇ!」
「昨日の真夜中に息子さんが探してて、うちにもなにか知ってることはありませんかって」
「そうだったんだ」
金子さん家のおばあちゃんは夜中に徘徊する癖があって、たびたび行方不明になる。警察のお世話になったことも一度や二度ではない。ただ、大抵はすぐ見つかるので今回はすごい珍しいパターンだ。
「早く見つかるといいね」
「そうだねぇ」
……
「ねぇ、ママ。しゃけのムニエルなんだけどさぁ」
「何?」
「味が薄いんだけど、調味料が超微量だったんじゃない(ドヤッ」
「ハッハッハ」
これで雰囲気も良くなったね。彼の手法を真似したけどうまくいってよかった。
*
「よし、いってきます」
「いってらっしゃい」
登下校が嫌いな人は多いと思う。溢れ出る人に押され、塗りつぶされていく感じ。
でも、私は登下校が好きなの。今日も学校があって、何も変わらずみんながいて、そして、彼がいる。
そんな変わらない日々が好きなの。