異世界群馬
世界観を理解する用です。世界設定とかわかるかも?
古き時代。今で言う群馬と栃木には神がいた。群馬方面にはムカデの神が、栃木方面には蛇の神がいた。山を住処とし、周辺にいる動物を食べたり、お供物を食べたりしていた。
お互いが存在を認知しているが積極的に攻撃することはなかった
今までは。しかし、見た目が気に入らないなどといった理由からだっただろうか、争いが始まった。
蛇の神がムカデの山に侵入してきた。
ざぁぁぁぁぁぁぁと木が揺れる。
ムカデは言った。
「何故ここに入るか」
「ここには我が同胞の蛇がいたはずだが」
「それは知らん」
「それの保護に来た」
「お前に従う道理もない」
ムカデの神は蛇の神に噛み付いた。その強靭な顎は鱗を破り、毒を回し、強烈な痛みを与えた。
蛇の神もムカデを噛み付いた。パリパリする足を噛み砕き、より強力な毒を与えた。
ムカデの神はあふれる神気を身にまとい、多くの足を突き刺した。
蛇の神はその長い体を活かしてムカデを締め上げた。
このような争いが何年も続いた。お互い似た者同士だからというのもあるだろうが、何よりどちらの神も同格と争ったことがなく、なかなか決着はつかなかった。
そして、神の流した血や肉片がこの地を歪ませていった。毒は地を汚し、血は歪んだ力を与え、肉は争いの種になる。
まず、そこに生息する動植物がわずかながらの神気を得ることになった。
続いて、他の神が干渉できなくなった。より高位の神でさえ、この地の事を知ることは難しくなっていた。
これには日本の高位の神たちは悩んだ。ただの地方の喧嘩だと眺めていたら観戦ができなくなったのだ。高位の神も少しの不安を抱いた。群馬や栃木の内情がしれないのは痛いが、なにか対策を取れるというわけでもない。現状把握をしに行くことが急務だった。
直ちに神たちは群馬、栃木に視察に行った。何があっても良いように本を持った神、弓を持った神、動物の神をいくらか多めで構成されていた。
派遣された神はすぐ異変に気づいた。予想外に神気を持つ動物が多かったのだ。理由は簡単で川を通じて神気が広がってしまったからだ。原因となっている件の山に向かった。
異臭。色のついた気体。飛び回る虫。それを乗り越えた神が見たものは地獄だった。
肉片に群がる虫、それごと喰らう獣。そして、青と赤の血が動き、未だ残る肉を削りあっていた。
すぐにも神はこの地を浄化しようとした。まず、不毛な争いを続けるゴミを近くにあるマグマに捨て、生き物たちも一度全部殺した。そして、神として人間に信仰させることで気性を比較的大人しくさせたのだ。
これで万事解決かと思ったが、そこまで単純なことでもなかった。土地に血が染み込み過ぎたせいで新たに動物が生きれなかったり、呪われたり、逆に神気を獲得したりするようになったのだ。
この報告を受けた神はこの地を見捨てることにした。神たちには自分たちを信仰している人が大陸から伝わった宗教に取られないことのほうが重要だったのだ。周辺に広がっていた神気を持っている動物を群馬に押し付けた。そして、結界を張るのが得意な神にこの地から動物が出ないようにしたのだ。その神は鶴の神だった。
鶴の神は結界を張るのが得意でもなんでもなかったが、自分が何もできない神とは思われたくなくて、なにか仕事も頼まれづらい結界が得意ということで通していた。
鶴の神は非常に困った。このような重大なことを押し付けられるとは思ってなかったのだ。今日は調子が悪い、今日は星の出る位置が、今日は運勢が、と神たちに言い訳をして、毎晩出回ってはなにか良い案が浮かばないかと必死に考える。月に向かって鳴いて、風に聞いた。それでも案は浮かばなかったのだ。
もういよいよごまかしきれないというところまで来ていた。
この今でいう愚かな小学生ムーブが、この世で一番タチの悪いやつに見つかった。
「私がお力を貸しましょうか?」
ある晩のことであった。人間の子が鶴の神にそう話しかけてきたのだった。鶴の神は驚いた。そして、侮辱されたと憤った……が、寸でのところで思い直した。ここはこいつの話を聞いてやってもいいではないか。どうせ行き詰まってるのだ。神の深き心で許してやろう。
「申してみよ」
「感情豊かだね。面白いやつじゃん、君」
「は?」
何を言われたのか理解できなかった。こいつは何を言ってるんだ?
「でも、それだけじゃだめだ、私に利益がないと。力がほしいなら対価だよ。現状、僕からしたらなんの利益もないんだよ」
「神に対価を要求するのか」
鶴の神はようやく、目の前のモノが人間でないとわかったようだ。それとも、姿を変えた上位の神なのだろうか?
「何を要求するか?」
「うーん。お命かな?」
「は?」
命。神になってからは久しく存在を忘れてたものだ。それが対価?命はなくなるとどうなるのだ?確か、ヨミノクニだったかの辺境で暮らすことになるとか……岩をどかして入ったことがあると自慢していたやつもいたなぁ、もっと真面目に聞いておくべきだった。ただ、向こうでも仕事があるだろうし、自分の能力を活かせるかもしれない。もともと、こっちでの仕事も無理があるとは思っていたのだ。毎日、上位の神に媚びへつらい、歌を読み、傘下を集め、不満を解消する。それに、また結界の仕事を振られてはたまらない。心機一転するにはいい機会か。
「うーん。命はなぁ」
「駄目なの?正直、俺くらいしか手助けできないと思うけど」
「そっちの具体的な力を教えてくれ」
「あー、問題の土地を結界で囲うよ。安心して。この結界はすごい頑丈で、まるで異世界みたいに外界から取り残されるよ。そうだ!君が死力を尽くして結界を張ったというように噂を流してあげるよ。結界も鶴形にする。お得だよ!」
ふーん。言われてみればお得な感じがする。
「さぁ、もう時間がないよ!こんな奇跡は二度とない!」
「……わかった。それで手を打とう」
すると、目の前のモノは異種族である鶴からみてもにっこりと笑っていた。口角を上げて上げて言った。
「まいどあり」
「こんなもんなかな。ここらへんの神の力でぎりぎり壊せない程度だし、ちょうどいい塩梅だ。アフターサービスもしっかりつけてやっと取引成立かー。まぁ、鶴肉って初めて食べるししかたないか。ああ、ここに蒔いた芽はいつ芽吹くかなぁ。ひどく楽しみだよ」




