夏祭りのクジ引き景品の活かし方
私こと袖掛町子が小学校の同級生と参加した校区の夏祭りは、概ね大満足な結果だったの。
花火に盆踊り、それに夜店も楽しかったからね。
唯一の不満は、夜店の籤引きかな。
初代アルティメマンのお面が一つに、腕に巻いた蓄光ブレスと浴衣の帯に差したマジックハンドがそれぞれ二つずつ。
特賞欲しさに五回引いた結果が、ガラクタを装備した間抜けな風体へのお色直しとはね。
何とも冴えないなあ…
「そう肩を落とすなよ、お町。ゲーム機は逃したが値段的にはトントンだろ?」
「う、うん…」
同級生の和歌浦マリナちゃんは慰めてくれたけど、私の間抜けな風体は何も変わらない。
しかもマリナちゃんは、切れ長の赤い目の右側を長い前髪で隠した独特の風貌が特徴的な、クラスで評判のクール系な美人さんなんだ。
その端正な面立ちは普段と変わらず、蒸し暑い夏の夜を物ともせずに美しい。
そんな美人の同級生と一緒だと、私の間抜けさが一層に際立っちゃうよ…
そんなマイナス思考一直線な私を見かね、マリナちゃんは新しい切り口で宥めてくれたんだ。
「そろそろ切り替えなよ、お町。まずは籤の景品の使い道でも考えてやりなよ。」
そうしてガラクタを装備した私の全身を、値踏みするように眺めたんだ。
こうして見つめられると照れ臭いな…
「取り敢えずマジックハンドは落とし物を拾うのに便利だね。壁と箪笥の隙間に何か落とした時に備え、お母さんにあげなよ。蓄光ブレスは夜道を歩く時に巻くと安全だから、お町が使いな。」
さっきまでガラクタと思っていた品々に役割が見つかっちゃった。
正しく目から鱗だったよ。
「ゲーム機を逃して残念なのは分かるが、悔やんでも何も変わらない。それなら今ある物を次に活かせるよう知恵を絞った方が、遥かに建設的だと思うよ。」
ぐうの音も出ない正論だったね。
「だよね、マリナちゃん…このお面も従弟にあげたら喜ばれそうだし。」
「その調子だよ、お町。そうして従弟への気遣いが出来れば、親御さんからの評価も上がるはずだ。それが巡り巡って、お町の信頼に繋がるだろうね。」
マリナちゃんの笑い声に頷きながら、私はアルティメマンのお面を手に取っていた。
特撮テレビ番組の巨大ヒーローを象ったお面は、無表情な顔をしているはずだった。
だけど、一瞬だけ微笑んでいるように感じられたの。
恐らくは錯覚だったのだろう。
でも、もしかしたら喜んでいたのかも知れないね。
ガラクタ扱いだったのが新しい役割を与えられて。