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ブライトン魔術学院編6





夏休みも終わり、今日から新学期。




夏休み最後の思い出の王立図書館の帰り、女の子だと思っていた思い出のルーが男の子でアルフレッドだったと知った時の驚きと言ったらなかったが、目の前で頭を抱えたアルフレッドを見てそれ以上は何も言えなくなってしまった。

帰り際にはいつものアルフレッドに戻っていたが、何とも気まずい別れとなってしまった。



(だって、髪の毛も長かったし、キラキラふわふわした可愛らしい女の子だと思ってたのに……!!)



思い出すと恥ずかしくなってしまうが、今日からは待ちに待った魔術の実技授業も始まる。

アネットに気合い入ってるわね、と言われ両手を目の前でグッと握り、うん!と大きく頷くと、二人で寮を出発した。



教室に入ると、ジャンが日焼けをして肌が黒くなっていた。

何でも夏休み中に海沿いの街に行き、新しく商会で売り出す商品の勉強をしてきたとか。

アネットも夏休み中は実家のお手伝いばっかりで大変だったようだが、将来の夢に一歩近づいたと嬉しそうに寮で話してくれた。




ふとアルフレッドの席を見ると、すでに登校していたようで周りに女子生徒が群がっていて姿があまり見えない。

隣にはクロヴィスも座っていて、リディに気がつき何か言いたげな顔をしてニヤニヤとこちらを見ていた。

相変わらず感じが悪い…と思いつつ、ジャンと一緒に席に着く。

挨拶ぐらいはした方が良かったかな、などと思っていたら授業開始のチャイムが鳴った。





魔術の実技は専用の結界が張ってあるホールで行われる。

シンプルな大理石の壁と天井で、窓は高い位置に最低限の光が入る程度に作られているだけで、全体的に薄暗い。

魔術師が身に着けるローブを支給され、格好だけでも魔術師っぽくなれたとリディは心躍る。




まずは台の上に置かれた、子どもが抱えるくらいの丸い水晶に向かって、生徒一人ずつ手を当てて魔力の測定を行う。そこから先生が相性のよさそうな二人一組を作り、実技の練習を行うと説明された。



順番に生徒が魔力の測定を行っていく。まだ魔力の少ない生徒が多い中で、アルフレッドの魔力はずば抜けて大きかった。その次が以外にもジャン。きちんと測定したことがないと言っていたが、そんなにあるとは思わなかったと本人も驚いていた。



そしていよいよリディの番が来た。

緊張しながら水晶に手を当てると、先生も言葉に詰まるくらいの少なさ。

やっぱりと思いつつも、学院に入ってから少しは増えているかと期待していた気持ちは、ものの見事に打ち砕かれた。




「じゃあ二人一組にするから、名前を呼ばれたら隣同士でならんでくれ。」



先生が、測定された魔力量と相性を見ながら次々に名前を呼んでいく。

ジャンは、魔力が多くはないが安定しているという貴族の男の子と組むことになったようだ。



「次、 アルフレッド・オリオール と リディ・エルランジェ」



(  えっ!!!  )



思わず、リディは驚きの言葉を飲み込んだ。

何故なら、アルフレッドとパートナーになれると期待していた女子生徒たちの悲鳴が木霊したからである。女子生徒たちから痛いほどの視線を受けつつ、アルフレッドと隣に並ぶ。

この間のこともあってか、まともに彼を見ることが出来ない。



「じゃあ、まずはお互いに魔力の相性を感じてみてもらうから、向かい合って両手を合わせてくれ。」



言われたとおりに向かい合って両手を合わせてみるが、この体勢が思ったより恥ずかしかった。

魔力の相性で男女の組み合わせになっている子は他にもいたが、その子たちも同様に恥ずかしそうにしていた。



ただでさえ一緒にいるとちょっと緊張してしまう上に、この間の件でまだ気まずいのだからどうしたものかと、手を合わせながら視線をウロウロとさせていて、リディは明らかに挙動不審の不審者である。


その時、



「ふふっ……!」



目の前でアルフレッドが笑い出した。

何が起きたのかわからずキョトンと彼を見ると、手を合わせながらも堪えられないという様子で下を向きながらクスクスと笑っている。



「……あはは!リディ、そんなに困った顔しないでよ!この前のこと気にしてるんでしょ?あの事はもういいから、今は魔力に集中しなきゃ。」



と、顔をあげてリディに向かう。

あれからどうやってお詫びをしようかとか、お詫びをしたらもっと失礼になるんじゃないかとか、色々悩んでいたのに、まさか笑われると思っていなかった。



「わ、わかったわよ!ちゃんとやる!」



恥ずかしくて顔を赤くしたリディは、慌てて目を瞑ってアルフレッドの魔力に集中する。



(……やっぱりあったかくて優しい魔力。でも、もう少し…)



じわりと感じるアルフレッドの魔力の奥に何かを感じたリディは、彼の指と指の間に自分の指を挟みこむ。



「…………えっ!?」



思わずアルフレッドが小さな声で呻いているのも気づかず、両手を握りしめる。

さっきまで、見たことのない無防備な笑顔でクスクスと笑っていた彼が、今は目の下を赤くして上体が後ろに傾いている。




( なんだあれ?? )




クロヴィスが少し離れたところで、珍獣でも見るような目でその様子を見ていた。


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