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ブライトン魔術学院編10




うだるような暑さも落ち着き、日が高い時間でも肌に当たる風が涼しく感じられるようになった頃、以前カロリーヌに誘われたお茶会が開催された。


ドレスなど堅苦しい服装でなくて良いということなので、ソフィアが昔来ていたというワンピースを着ていくことにした。




「ほわあぁ~……」



思わず口から漏れ出てしまうため息。

やはり貴族の家というのは門構えからして立派で、建物もそれこそ豪奢であったが、案内されたお茶会会場の庭は計算された配置の中、植物本来の形を生かした花で美しく彩られていた。



お茶会の庭では、長方形のテーブルの上に、焼き菓子やフルーツなどが様々用意されている。

そこで食べたいものを好きなように取って、そこここに配置された丸テーブルと座席に着くとモンタニエ家の侍女たちがお茶を運んできてくれるというスタイルだ。



既に何人もの人が来ていて、リディとアネットはまずカロリーヌを探すことにした。

キョロキョロと見回すと、何人かの貴族のご令嬢と思われる女の子に囲まれた中心にカロリーヌの姿を見つけた。彼女もこちらに気づいたらしく、その輪から抜けてこちらに向かってきた。



「アネット、リディ、今日は来てくれてありがとう。」



いつもは制服姿でしか会ったことがないが、シンプルだが一目で上質なものだと分かるドレスを身に纏い、プラチナブロンドの髪もきれいに結い上げて素敵な髪飾りがついている。



「こちらこそ、こんな素敵なお茶会に招待してくれてありがとう。」



アネットは、緊張するでもなくいつも通りの可愛らしい笑顔でカロリーヌに挨拶をする。

一方、リディはカロリーヌがあまりにも綺麗でうっかり見惚れてしまっていた。



「ほ、本日はお日柄もよく……!このような素晴らしい会に…」



ガチガチに緊張したリディは、スピーチのような挨拶になっている。



「ぶふっ……ちょ、ちょっと、笑わせないでリディ。今日はお母様もいらっしゃるから、あんまりはしゃぐと叱られてしまうのよ。とりあえず、席に着いてお茶を飲みましょう?今日のお茶は隣国から取り寄せたお花の香りがするお茶なのよ。お菓子も侍女に持ってこさせるわ。」



カロリーヌが目くばせをし、三人は席に着く。間もなくすると、焼き菓子やフルーツがきれいに盛り付けられたお皿と、温かいお茶が運ばれてきた。



カロリーヌに勧められて、お茶を飲んでみると飲んだことのない香りと風味で、思わずおいしい!と声に出してしまうほどだった。焼き菓子も見たことのない形をしていて、これもひと口食べてみるとふんわりと柔らかく、香ばしさと上品な甘さが口いっぱいに広がった。


アネットは、この紅茶を気に入ったようで、カロリーヌにどこで手に入れたのかとかレストランでも出せるだろうかなどと聞き、貴族のお茶会でも商人魂に火がついているようだった。






しばらく三人で少し話をしていると、一人の貴族と思われるご令嬢が近づいてきた。



「ごきげんよう、カロリーヌお姉さま。」


声の主に目を向けると、そこには自分たちより少し幼いが、場違いなくらいフリッフリの派手なドレスを身に着け、ストロベリーブロンドの髪をくるくるとカールさせた女の子が立っていた。

可愛らしい見た目とは裏腹に、何かに挑むようなその視線に思わずリディとアネットは身構えた。



「あら、ごきげんようマリエル。あなたも来ていたのね。」


「えぇ、おばさまにお話ししてご招待いただいたの。来年からお世話になるから、お姉さまやご友人にもご挨拶しなければと思って。」


「あら、わざわざどうもありがとう。」



いつも以上に上品に話しているカロリーヌが、どこか不穏なオーラを纏っている理由がすぐにわかった。

マリエルは、リディとアネットの頭から足先まで視線を流すとクスリと笑った。



「お姉さま、お優しいのは結構なことですけど、お友達はもう少しお選びになった方が良いのではなくて?」



リディとアネットのことを指しているのだと分かった二人は思わず俯く。



「あら、このお二人はとても優秀なのよ?こちらのリディはいつも学年トップの成績ですし、アネットはあなたがいつも使っているレストランやお化粧品を扱っている商会のご令嬢なのよ。それに、まだ入学できるかもわからないのだから、こんなところで油を売っていないでお勉強を頑張ったらいかがかしら。」



「…………なっ!!?」



マリエルは顔を真っ赤にして、目を吊り上げている。

クロヴィスと口喧嘩をしている時とは違い、今のカロリーヌは全身に氷のオーラを纏った恐ろしさを感じる。

それでもこのままでは引き下がれまいとマリエルは続ける。



「……そ、それに来年は第二王女のセシル様もご入学されますから!そこのあなた方より優秀でしょうし、せいぜい思い上がらないことですわね!」



捨て台詞を残して、スタスタとその場を去っていった。



「優秀な生徒が増えるのは喜ばしいことでしょうに。相変わらず狐がうるさいこと。」



深いため息をひとつついて、お茶を飲む。



「せっかく来てもらったのに、気分を悪くしてごめんなさい。あの子、私の従妹なのだけどなんていうか……頭が悪いっていうか、弱いっていうか、馬鹿なのよね。馬鹿でしかないの。まったく恥ずかしいわ。」


「ううん。カロリーヌが私たちのこと庇ってくれて嬉しかったよ。」


「カッコよかったよね!」



身分差については幸いなことに、はっきりとそれを態度で表してくる子が学院にはいなかったため面食らった二人だが、カロリーヌの冷静沈着かつ完膚なきまで叩きのめす姿を見て頼もしいと思う反面、絶対敵に回したくないなと思った二人だった。





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