第8話 「バチバチな食事会 スープ」
エントランスに入るために網膜認証をする機械の前に立つ、そしてその機械が搭載しているカメラに向けて目を大きく見開く。
(セキュリティーのためだと言えどもなぁ…)
そんなことを思いながらカメラを見つめているとapproval、訳は承認という意味を持つ英語が機械の液晶パネルの出て来たので中へと入っていく。
最近ではこの機会を設置することがどんなマンションでも義務付けられているため、マンションに住む人からすればあるあるなのだが、、、これからは重要な場所にどんどん設置されていくらしい。
(技術が発達していくに連れて、どんどんセキュリティーも進化していくな。最終的にはどうなってしまうのだろうか。)
そう考えながら後の二人を待っていると入口からサイレンが聞こえ始めて来た。
どうやら誰かがセキュリティーに引っ掛かったらしい。
最近では一昨日宅急便のお兄さんが引っかかってしまって、警備員の屈強なおじいさんに取り押さえられていたと言う事例が起きたばっかりだ。
ちなみにそのおじいさんは元自衛隊員だとかで力を入れすぎてしまって、お兄さんの腕の骨を折ってしまったとか言う噂を昨日聞いてしまったが、それは本当なのかと疑っている。
「さて誰が今回引っかかったのかな?」
そう呟きながら入り口を見ると氷見谷が大きな声でこちらに向かって叫んでいた。そして夢咲もなんか笑っているな。
(あいつら何してんだ?戯れあっているのか?)
そう思いながら俺は横のテラスへと出た。テラスからなら入り口へ声が届くし、何よりちょっと聞こえにくいかもしれないが一定の会話が可能だからだ。
俺は軽くドアに手を振るとドアが開いたので、檜の木でできた立派なテラスへと走って行く。
ちなみにこの檜の木はどうやら特殊な加工をしているので壊れないし、腐らないと言ったとても優れ物らしい。
「おーい、何をしてるんだ?さっさと来ないと警備員がくるから早くして!」
俺は必死に部活で声を出す時よりもはるかに大きい声で、氷見谷に向かって叫んだ。
部活の時に詠唱をしてサーブを打つと言う謎の行動をしたときから、少し喉が痛く感じたがその痛みをぐっと堪えて大声を意識して叫んだ声はどうやら氷見谷の耳に入ったらしい。
「ええとね、、、私の網膜が認識されなかったみたいなの!」
「はぁ!?ヤバイじゃん!」
俺が衝撃の事実を知ってしまった時、あるものを俺は見てしまった。
警備員のおじいさんが捕まえに行こうとしているのをだ。
「待ってください!その子は僕の同級生なんです!」
俺はおじいさんに向かってそう大声で叫んだが、おじいさんにはどうやら届かなかったようでまさに今捕まえようとしていた。
「待ってください!!」
俺はそう言いながら氷見谷の元へ向かい腕を掴むとおじいさんは何かを察したかのように捕まえるのをやめ、
「お二人さんお幸せに。ほな」
そう短く行って去って行った。俺と氷見谷は二人同時に顔を見つめあったが二人とも頬を赤く染めていた。