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僕は人々が嗅覚を奪われた世界で、アロマセラピストをしています。  作者: 梅屋さくら
Perfume3. 悲痛な決断と伯剌西爾での三日間。
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幕間 クリスマスにジャスミンが香る。

 十二月二十五日、深夜三時。

 ヒカルは、んが、という大きな音に驚いて目を覚ます。

 身体をもぞもぞと動かすと、布の擦れる音とベッドの軋む音。

 ベッドの下に敷かれた布団には先ほどの異音の発生源であるマコトが横たわっていた。彼は酒のせいで顔を真っ赤にしている。

 くりぼっちだなんて寂しい言葉を跳ね除けるため、ヒカルはマコトを家に呼んでいたのだ。

 暖房をつけてあるとは言えど年末。身体を動かすと布団が冷たくて思わず丸まってしまう。しかしマコトは布団を蹴り飛ばし、上半身が布団から出てしまっている。

 ヒカルは立ち上がり、ベッドの下から赤い袋を取り出した。なるべく音を立てないように注意しながら。

 そして穏やかに寝息を立てるマコトの枕元に袋をそっと置いた。

 布団を優しく掛け直してやり、自分はまたベッドに潜る。

 暖かい布団が気持ち良い。

 ヒカルはあっという間に眠りに落ちる。


 そのときマコトは薄目を開けて、むにゃむにゃと寝言を言うヒカルをちらりと見た。

 しばらく彼と枕元の袋を交互に見て、思わず微笑む。


(ジャスミンの香りに起こされちゃったよ。でも危なかった。目を覚ましたら朝、っていう最悪なことになりそうだった)


 マコトはそう思いながら目の前の引き出しをそっと開け、緑色の袋を取り出した。

 手を伸ばしてゆっくりとヒカルの枕元にそれを置く。


「メリークリスマス」


 マコトの囁く声は、眠っているヒカルの耳には入っていなかった。しかし彼は夢を見ながら微笑んでいた。

 メリークリスマス!みなさまは素敵な日を過ごせましたでしょうか?

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