No.6 青春は...
とりあえず普段着に着替えた。まぁ普段着と言っても、長袖長ズボンのただのパジャマだ。
俺は普段、学校が終わると仕事以外では外に出ない。その為、寮の中では一日中パシャマでいる。
別に寮の奴らにどう思われようと気にしない。というか、もう慣れた。
“バタ“
今日までの疲れが溜まっている事もあり、俺はベッドに倒れるように横になった。とりあえず明日の事は明日の俺に任せる事にして、今日はひとまず休むか。
“ドン“
「ただいまー。あれ? レンもう着いてたの? あんなに校門前で待ってたのに来ないから、居残りでもしてるのかと思った」
ベッドで休んでいると、下の玄関の方から聞きたくもない奴の声が聞こえてきた。玲奈だ。
あいつ無駄に声が大きいから、あんまり帰ってきて欲しくなかったがそう言う訳にもいかないか。それに、大した用も無かったら部屋に来るなとも言ってあるし、気にする事もないだろう。
「レンは? ......部屋かぁ、ちょっと見に行こうかな?」
今、下で玲奈が変な事を言った気がするが、きっと冗談だろう。明日も早いし早めに寝るか......
“ドン“
「ただいまレン! あれ? どうしたのこんなに早く寝て、体調でも悪いの?」
「......」
「ねぇ、どうしたの?」
「......」
「まさか! 前に言ってた女の子に話しかけられると身体中の細胞が壊死して死んじゃう病が再発しの?」
「......」
「ちょっと見せて......ほら毛布をかして! 命がかかってるの変に抵抗しない......」
「......あーもー。勝手に入ってくるなって何回も言ってるだろ。それに女に話しかけられると死ぬ病気ってなんだよ、あんなの冗談に決まってんだろ! いつまで信じてんだよ」
「はー? せっかく心配してあげてるのに何その態度、ひどい」
急に入って来て、人の毛布を取り上げようとした奴が良く言うぜ。ただ正直、今日はこいつと言い合っても疲れるだけだ、ここは適当に済ませよう。
「お前、用が無かったら来るなって言ったよな? なんで来たんだよ」
「そんなの用があるから来たんだよ」
こいつが、まともな用事で俺を訪ねた事なんて一度も無いのに、まぁ一応聞いてやるか。帰ってすぐ真っ先に俺の部屋に来たんだ相当大事な事なんだれろう。
「実は私......
二年二組になりましたー!」
「お休み」
俺は何も聞いてないとばかりに、そのまま夢の世界へと入って行った。
「え? 無視!」
翌日
長かったのか短かったのか、よく分からない春休みが終わり、普段通りの学校がはじまった今日。俺は学校に着いてすぐ違和感に気がついた。
確かに昨日、爪先の方から入れたはずの上履きが何故か、かかと側から下駄箱に入っていた。
まさかな......。
俺の勘違いだと思ったが一応、上履きを手に取り中を確認してみる。......間違い無い、勘違いなんかでは無い。上履きの中にはキラキラと輝く鋭く小さな物があった。画鋲だ。
いつか来るとは思ったが、まさか新学期2日目から仕掛けてくるとは、少し油断していた。
どうやら俺は熊谷のターゲットにされたようだ。