No.4 席替えは...
「よし! みんな集まったな。それじゃ今からホームルームを始めるから挨拶を......レン君、よろしく頼む」
「はい。えー起立。きおつけ。よろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
これも名簿一番の宿命とでも言うのか、多分これからずっと最初の挨拶は俺になるなこれ。本当に青山君がこいしいぜ。
一通りバーゲンセールが終わり玄関にたまっていた生徒達が席に着くと新しい先生がホームルームを始めた。
「今日からこのクラスの担任を務める事になった寺田幸一です。一年間よろしくお願いします」
「寺田先生よろしくー、フーーー!」
「「イェーーー!」」
隣に瑠奈が座っているからか、さっきからニヤニヤが止まらない熊谷がいつも以上にテンションを上げて挨拶を返した。
ただでさえいつもテンションが高いくせに、さらに高いとなるともう迷惑でしか無い。さらにウザいのが一緒になって、はしゃいでる囲い奴もだ。
「うん......よろしくね」
もう先生も少し引き気味だ。
昨日はあんなに楽しみにしていたクラス替えだが今となってはやり直したいぐらいだ。俺の隣の女子なんてさっきから一言も喋んないし。
もう誰か助けてくれ......。
「あの先生、一つ良いですか? 私、目が悪くてここからじゃ黒板が見えないので前に移動してもいいですか?」
一瞬で教室が静まり返った。
ある女子生徒が席の移動を申し出た、ただそれだけのはずなのに何故か突然人がいなくなったかの様に静かになる。
その理由は簡単だその女子生徒が瑠奈だからだ。さっきまで、あんなに嬉しそうにはしゃいでいた熊谷はまだ状況が読み込めないのか呆然としていた。
「瑠奈さんだよね? 視力的な問題なら別に構わないですよ。それじゃ先頭の女子と代わってもらおうかな。誰か瑠奈さんと席を変えても良い人いますか?」
これは緊急事態だ。もし瑠奈が俺の席の隣に来ようもんなら間違い無く熊谷の標的にされる。
だが、俺にはそんな心配は無い何故なら俺の隣の女子は俺が14回話しかけても反応しない様な奴だこいつに限ってそんな事は......
「阿部さんありがとう。それじゃ二人とも席を入れ替えて下さい」
「ヨイショ! 浅田レン君だよね? これから一年間よろしくね」
幻覚でも見ているのだろうか。さっきまであんなに静かだった女子生徒が何故か明るい生徒に代わっていた。心なしか可愛くなった気がする。
あの阿部とか言う女のせいで俺の高校生活が台無しになった。本来ならここは喜ぶ所なのだがそれも後ろの殺気のせいで台無しだ。
「レン君、何の委員会入るかか決まってる?」
「まぁ放送委員かな」
「ふーん。じゃ私も同じ委員会入ろうかなぁ。まだ入る所決まって無かったし放送委員にするね。レン君委員会もよろしくね」
善意か悪意か何故かこの女は俺をどんどん地獄へと追い込んで来る。流石に同じ委員会に入るのは本格的にマズい。あとで入る委員会は変えておくか。
「おい! レンお前、近視で近いもんが見えないとか言ってたよな俺が席変わってやるよ。寺田先生、別にいいですよね?」
「レン君が本当にそうなら構いませんよ」
「本当だよなレン!」
熊谷が瑠奈の隣になる為、存もしない嘘をついた。もちろん俺の目は正常だ。とは言えここでアイツに逆らえば後々もっと面倒くさい事にるのは目に見えている。ここは譲ってやるか。
「ダメ」
俺が席を変える為、席を立とうとすると瑠奈が俺にギリギリ聞こえる程度の小さな声で呟いた。
俺はその二文字で大体の察しがついた。恐らく瑠奈の目が悪いと言うのは嘘だ、瑠奈は熊谷から逃げる為に視力が悪いと嘘を言ったのだろう。
その証拠に瑠奈は眼鏡はおろかコンタクトもしていないようだ。何があったのか知らないが瑠奈は熊谷を避けている。
もちろん助けたいが、クラスの陽キャ男子を敵に回すのは武が悪い。
とは言えこのまま見捨てるのも......
「寺田先生。俺、別にこっからでも全然見えるので席替えしなくて大丈夫です」
「そうか。じゃ席はこれで決定でいいかな?なら今からこれからの予定について話して......」
今更、後悔しても遅い。まぁ別にアイツらに何かされたって俺には頼れる友がいる、それにいざとなれば実力行使だ。
それに案外この席も悪くない......
良かったらコメントよろしくお願いします