No.3 クラス替えは...
長い冬が明け新しい生活に胸踊らせる春。多くの生徒たちがこれから待っているであろう出会いに、期待しなが登校する中、俺はただ一人腹を鳴らしながら天にもすがる思いでクラス替えの結果を祈る。
去年あんなに苦労して作った友達と同じクラスで無ければ、このまま退学するつもりだ。
校門をくぐるとまだ早朝だというのに校舎の玄関付近に大勢の生徒たちが開店前のバーゲンセールかのように群がっていた。まぁおそらくクラス替えの結果が書かれた紙を見に集まっているのだろう。
俺もバーゲンセールに参戦したいがあまりに人が多いせいでたどり着ける気がしない。
去年はこんな人混みは酷くなかった。何故か今年は人が多過ぎる。
まぁ俺はその理由を何となく知っている。まず俺の前に群がってる奴らの大半は自分のクラスよりもある女子生徒のクラスが気になっているに違いない。
その女子生徒は去年、入学するとたちまちそのルックスが話題になったマジで可愛い松井瑠奈という生徒だ。
正直、喋った事もないので俺には関係無い......。
「おーレン! 俺達、同じクラスなったぞ。しかも瑠奈さんも同じクラスだぞ。やばくねぇか!」
俺の数少ない友達の聖夜が、俺の高校人生を救う一言を言ってくれた。後半はどうでもいい。
「マジで良かった。もし聖夜が同じクラスじゃなかったら、俺退学してたは」
「流石に退学は盛りすぎだろ。そんな事で退学はありえんは」
本気で退学する気ない奴が退学届を持って学校に来ると思うか? まぁこの退学届は寮の奴らにはバレないようにあとで燃やしておこう。
「とりあえず早く教室入ろうぜ、席の並びも見ておきたいし」
確かに席の並びは大切だ。クラスも分かった事だしさっさと教室に行くか。
教室に着くとまだ生徒は僅かにしかいなかった。それに妙に静かだ。ある生徒は読書を、またある生徒は必死に何かの勉強をしていた。
まぁ何とは言わないがそう言う人達が一早く教室に集まっていた。何キャとは言わないが。
「お、浅田レン一番前! おめでとうー。一年間先頭で頑張れよ」
聖夜がそう言うので俺はまさかと思い黒板に貼ってある席順を確認すると本当に一番前だった......。
今年は青山君が別のクラスになったせいで俺が先頭になったのか。やはり退学届は保管しておこう。
「うわぁ。俺の席瑠奈さんからめっちゃ遠いんだけど......てか! レンお前、右三つ後ろに瑠奈さんいるとか近過ぎだろ。マジでズルイ」
右三つ後ろってそれ、そんな近くなく無い? てかさっきからこいつ瑠奈さん瑠奈さんって瑠奈のこと好き過ぎだろ。
正直、瑠奈の噂は何度か耳にするがまじまじと顔を見た事は無い。まぁ一年も女子寮にいた俺が今さら可愛い女子を見たところでどうも思わないだろう。
それに瑠奈の隣の席の熊谷健太は結構な陽キャ男子で瑠奈を狙っていると言う噂もある。下手に瑠奈に近づくとそいつに消されるとか......。
まぁこいつが万一にも俺を標的にした場合は逆に返り討ちするがな。もちろん物理的に。
「なぁレンみんなが来るまで暇だし俺が持ってきたトランプでもやって暇潰そうぜ......あれ? マジかよ、嘘だろ」
「どうしたどうした。まさか自分で言っといてトランプ忘れたのか?」
「......まぁいいや、やっぱ指相撲でもやって待ってようぜ」
指相撲で何分もたせる気だよ......。
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