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聖夜に轟く英雄の嘆き

作者: とりあたま

婚約破棄ものっぽい何かをクリスマスに託つけて書いてみました。

グダグダでも構わず食っちまえる方にオススメです。

 婚約者の告白をルシアンの心は強く否定した。


「私はこの方に嫁ぎます。父も、貴方のお父様も了承済みです」


 彼女は悲痛な面持ちながら頬を薄く上気させ、傍らの美丈夫に(しな)()れ掛かっている。表情と口振りは思い詰めたように悲しげでも、その姿はとても嫌がっているようには見えない。

 二人の婚約は家同士の結び付きを強固にするための、所謂政略的な縁組だ。

 それでもルシアンは婚約者のサロメを一人の女性として愛し、彼女もまたそれに応えていた。

 関係は良好そのもの。愛のない結婚が常である貴族たちにとっては誰もが羨むカップルだった。

 彼らは半年後、ルシアンの騎士叙勲を経て婚儀を上げる予定であった。もはや秒読み段階といえ、同年代の貴族子女からは冷やかされ、騎士団の同僚からは手荒い祝福を受ける日々を送っている。

 折しも今日は聖なる夜。恋人として過ごせるのは今年が最後であり、思い出を素晴らしいものにするための準備も万端整えて臨む筈だった。

 なのにこれは何なのだ、と。ルシアンはこれまで積み上げたものの一切を打ち砕くこの一幕をなんとしても否定したかった。


 サロメの傍らに立つ男、今年三十二歳で名はイグナーツという。隣国出身の戦士で、南方に出現した魔王とその眷属たちを屠った英雄だ。

 彼は偉業を成し遂げた後も精力的に活動を継続し、民の安寧を脅かす魔物の脅威を退けている。また一所に長く留まらないことでも有名で、浮名を流したこともなければ誰かしらを娶ったという話もない。

 そんなストイックな英雄は若者たちの間では模範的、憧れの英雄像とされており、ルシアンも例外なく彼の英雄譚に夢を馳せた。


 イグナーツがこの王都を訪れた事、滞在中に彼の世話役を任された事はルシアンにとって望外の幸運だった。旧市街の廃屋に巣食った吸血鬼を共に討伐した経験は、彼にとって掛け替えのない宝となった。

 想像していたよりも気さくで飾らない、評判通りに一本芯の通った誠実な人柄は目標にしたいと素直に思える好人物だと思えた。

 その彼がよりによって自分の恋人を奪うなど、信じたくなかった。

 否定を求めるルシアンの視線を受けるイグナーツの表情もまた、苦り切ったものだった。


「ルシアン殿。今の君には納得し難いかもしれないが、諦めた方が良い」


 重々しく口を開いたイグナーツの言葉にルシアンの顔が絶望に染まる――。


「彼女()()勿体ない。君には彼女()()()よりもっと相応しい女性が現れる筈だ」


 ――が、続いた言葉にルシアンは虚を突かれ「……は?」と間の抜けた声を出してしまった。

 サロメは英雄が自分との縁談に乗ってくれたのだと気を良くしているが先程の言葉、そして全く彼女を見ていなければ手を触れようともしないイグナーツの様子から、ルシアンは二人の間に隔絶した温度差があることに気が付いた。


「えっと、彼女との縁談はイグナーツ殿から提案されたものでは……」

「そんな訳がないだろう。ここに来てから準備や打ち合わせで忙殺されて、誰かと会うような暇など無かったのは君も知っている筈だ。それに彼女とは君を通じて一度会っただけで、挨拶以上の会話もしていない」


 確かに、とルシアンは彼と過ごした目まぐるしい一週間を思い出す。

 吸血鬼討伐の依頼を請けたイグナーツが王都に到着して以来、討伐のための聖別武具や逃亡を阻止する結界装置、それを維持する人の手配とてんやわんやで寝る時間も削られてしまい、放置された婚約者(サロメ)(むく)れて彼を訪ねてきたくらいだ。

 イグナーツとサロメが顔を合わせたのはその時のこと。以後、作戦行動に入ったイグナーツはルシアンとほぼ一緒に旧市街で下準備をしていたため、彼に隠れてサロメやその父親と話すどころか会う機会など無かった。

 どういうことか、とルシアンはサロメに視線で問うが、彼女はイグナーツの顔を見上げるだけでそれに気付く様子もない。


「俺の加護について話そう。これは魔王を討伐した際に授かった『異性に好かれやすくなる』というものだが、少々癖が強いものでな……」


 言葉を濁したイグナーツは眉間を(しか)めて苦り切った表情を浮かべる。そして意を決し、言葉を続けた。


「……貞操観念が緩く、自信過剰な者ほど転びやすい」


 先程とは微妙に違った意味で信じられないものを見る、引き攣ったルシアンの顔を見据えつつ、イグナーツは「少し昔話をしよう」と件の加護を授かった当時の事を語り始めた。




 イグナーツは片田舎の農村で生まれ育った衛兵の倅である。

 父は真面目さが取り柄の堅物だが、それだけにマメな仕事ぶりは村民から確かな信頼を集めていた。

 対して母は何事につけて面白みを見出して楽しもうとするなど朗らかでノリの良い人で、良くも悪くも村では有名だった。

 一見すると正反対な二人だが、お互いにないものを補い合うかのようにかっちり噛み合って支え合う仲の良い夫婦である。

 その両親のもとで厳しくも愛情深く育てられたイグナーツは十五の時に冒険者を志して村を出たのだが、両親のような夫婦は普通のようで中々居ない事を外に出て初めて知る。そして自分もいずれあのような家庭を築きたい、と平凡な夢を抱いた。


 イグナーツには幼馴染で仲の良い女性が居た。

 魔物を討伐し、隊商を護衛し、魔境を調査し踏破する。そんな冒険者稼業で国の内外を駆け回るイグナーツは、行く先々で見聞きしたものを手紙に認め、手に入れた珍しい物を彼女に送っていた。返信は冒険者の互助組織を通じて受け取り、そこには慕う気持ちが確かに綴られていた。

 明確に約束はしていなかったが、将来は結婚を視野に入れた交際だとイグナーツは考えていた。

 村を出てから五年が過ぎ、若手の有望株と周囲から注目されていたイグナーツは魔王討伐のため招集され、南方へ向かった。そして二年後、多くの犠牲を払いながら討伐を成し遂げた。

 自分一人で挙げた功績ではないため殊更に吹聴するつもりは無いが、それでも彼女に結婚を申し込む許しを得る程度には働いたと考えたイグナーツは、骨休めも兼ねて七年ぶりに故郷へ帰った。

 しかし彼を待っていたのは非情な現実だった。


「昔からあの娘が好きだったお前には辛いだろうが、諦めるしかない」

「分かってるよ。ここを発ったばかりのガキの頃ならともかく、俺も色々と見てきたからな……冒険者や傭兵みたいな根無し草に娘を嫁がせたがる親なんて、そうは居ないさ」


 英雄の凱旋にしては寒々しい歓迎の後、イグナーツは自宅で父と向かい合い土産の酒を酌み交わした。

 幼馴染の女性は既に結婚していた。

 相手はイグナーツに何かと因縁を付けて絡んでいた村長の息子。彼との間に二人の子供がおり、上の子は五歳になる。

 つまりイグナーツが村を出て間もなく、彼女は村長の息子に嫁いでいたということだ。

 迎えてくれた彼女や懐かしい面々の気まずそうな顔、何より村長親子と彼女の両親の憎々しげな顔は、十年経った今でもイグナーツの脳裏にこびりついて離れない。

 昔馴染と近況を語り合いたかったが、とてもそんな空気ではなかった。


「でもなぁ……分かっちゃいるんだけどさぁ、せめて報告くらい欲しかったなぁ」

「文面からは気付けなかったのか?」

「全然。それどころか帰ったら一緒になりたいみたいな事が書いてあったぞ」

「そうなのか……? 何を考えとるのか分からんな」


 空になった父の杯に酒を注ぎ、自分の杯を煽ったイグナーツは息を一つ吐いた。

 鍛錬と戦いの日々に鍛えられた身体は大きく逞しくなり、使い込まれた装備品も見る者が見れば何れも一級品と分かるものばかり。母譲りの整った顔立ちは男らしく引き締まり、同業者や酒場の女に交際を求められたのも一度や二度ではない。

 苦労を掛けないなどと軽々しくは言えないが、少なくとも冒険者の妻だからと惨めな思いはさせないつもりだった。彼女が安定を望むのならば、それなりに実績を積んだ今なら仕官先にも困るまい。

 しかし今となっては虚しい、まさに絵に描いた餅であった。女たちの誘惑に耐え続けた日々は一体何だったのか、と今ばかりは遣る瀬ない気持ちを吐露しても罰は当たらないだろう。


「故郷に錦を飾るとは言うものの……俺はもうここに帰ってこないほうが良さそうだな」


 親父たちには悪いけどさ、そう呟いた息子に父は普段はめったに見せない笑みを滲ませる。


「それだがな、近い内に転属願を出そうと考えている」

「……すまん、俺のせいで面倒を掛ける」

「気にするな、と言っても無駄かもしれんが。何にせよ村長があの(ざま)では仕事に影響が出かねん」

「口利きくらいは出来ると思う」

「要らんよ。三十年の積み重ねはそう軽いモンじゃない」

「そうか……転属先が決まったら教えてくれ。それと母さんにばかり手紙を書かせないで、たまには自分でも書いてくれよ」

「自慢にもならんが俺の字は汚いぞ? まぁ、言われたからには書くが……それにしても旨いな、この酒」

「あいつの親父さんに贈るつもりだったからな、それなりに奮発した」

「そうだったか。明日、母さんと全部空けてしまおう」

「そうしてくれ」


 ささやかな酒席を終え、ほろ酔い気分で自室に戻ったイグナーツは程なく寝入った。

 このベッドで寝るのもこれで最後だろう、などと感傷に浸ることもなく地鳴りのような寝息を立てているイグナーツ。それなりに長い冒険者生活を送る彼は、眠っていても警戒を怠らない。微かな物音、微細な臭いの変化、平時であってもそういった何気ないものに敏感に反応してしまうのは最早職業病と言っても良いだろう。

 なので足音を忍ばせて部屋に近付いてくるものの存在にも、イグナーツはとっくに気付いている。こんな夜更けにやってくる人物に心当たりは無いが、面倒事の予感をひしひしと感じた。


「あ……起きてたんだ」

「お前……何をしに来た?」

「うん。ちょっとお話したいな、って思って」


 恐る恐るという感じで木戸を開いて入ってきたのは、幼馴染の彼女だった。

 七年前は背中の半ばまで伸ばしていた髪は肩の高さで切り揃えられ、身体付きも柔らかみを増しており、イグナーツの記憶にある純朴な少女は成熟した色香を纏った女性へと成長を遂げている。

 如何なる意図かは分からぬが、彼女の嘘に付き合っていた事から手引きしたのは母であろうとイグナーツは見当をつけた。


「あの……怒ってる、よね?」


 肩を縮込ませて上目遣いに見詰める幼馴染。

 領都と言わずこの国の王都、更には国外の都や異民族の集落を渡り歩いてきたイグナーツは多くの出会いを重ねた。農村の暮らししか知らなかった少年の目には何もかもが眩しく映り、煌びやかに着飾る垢抜けた都の人々と丈夫さ重視の装いで如何にも芋っぽい幼馴染とでは比べるのも烏滸がましい程の差があった。

 それでもイグナーツにとって彼女は特別だった。

 都会での暮らしは華やかだった。しかし落ち着くものではなかった。

 幼馴染からの手紙を読んで身を案じる気遣いに触れる時、幼い日々の思い出に浸る時、見聞きしたものを文に綴る時は心を穏やかに鎮める事が出来た。血と泥に塗れ魂をすり減らす荒んだ生活の中で狂気に染まらずにいられたのは、彼女と両親の存在があってこそだとイグナーツは思っている。

 故に感謝こそすれ彼女を恨む気持ちは無い。ただ、もう想ってはならないことが辛かった。


「いいや。だが、せめて報告くらいは欲しかった」

「ごめんなさい。言わなきゃって思ってたんだけど、どうしても……おばさんにも黙っていて欲しいってお願いしてたの」

「いつまでも隠し通せる事じゃないくらい分かるだろう?」


 ふぅ、と溜息を吐くと彼女はビクッと身を震わせる。

 その姿が悪戯を見咎められて共に大人に叱られた幼き日のそれに重なり、焦がれ続けた彼女が確かにそこに居る事を実感させた。

 思わず緩みそうになった頬を、歯を噛み締めて強張らせる。

 こんな場所、こんな夜更けに二人きりで話し込んで良い相手ではない。明日にはここを離れるイグナーツには些細な事だが、家庭がある彼女にとってこの醜聞は致命傷になりかねない。


「だが過ぎたことだ。今更謝る必要はない。婚約していたわけでもないからな」

「冷たいね。手紙ではもっと積極的だったのに」


 敢えて突き放して淡々と話すイグナーツ。

 剥れたように唇を尖らせる幼馴染だが、彼を上目遣いに見詰めるその目は逢瀬を愉しむような妖しい光を湛えており、彼の心をさざめかせる。


「知らなかったからな。知っていれば控えていたさ」

「そっかぁ。じゃあ、やっぱり知らせなくてよかった」


 嬉しそうに呟いた幼馴染の、仄かに浮かべた笑みがイグナーツの心に警鐘を鳴らす。

 強引にでも話を打ち切らねば、と直感が告げていた。


「話は終わりだ、帰れ。人妻が独り者の男の部屋に来るんじゃない」

「イヤ。ずっと待っていたんだから、貴方が帰ってくるこの時を」


 薄暗い部屋の中、イグナーツは幼馴染の瞳がギラリと鈍く煌めいたのを見た。

 心臓は鐘を打ち鳴らすが如く狂ったように拍動し、背筋に冷たい汗が流れ落ちてゾクリと身が震え上がる。

 これは拙い。

 何がどう拙いのか分からんが、この場をいち早く脱せねばならない。

 地獄そのものであった魔王討伐において、考えるより早く反応せねば生き残る事は叶わなかった。理屈ではない、ただ生存本能に任せて我武者羅に生き延びたからこそ、今のイグナーツがある。

 かの魔王を破るにあたり、彼は秘技を編み出した。しかし無我夢中で繰り出したそれを未だ再現出来ていない。

 しかし今ならば、この追い詰められた状況ならば出来ると確信した。

 やはり理屈ではない、やらねば()()()()と本能が告げている。ならば最早迷う余地などイグナーツにはない。

 人は飛べる! イエス・ウィー・キャン!! 豚だっておだてりゃ翼の付いたカヌーで空を舞うッ!!


「エレクトリックスピィィィィィィンッ!」


 ベッドに腰掛けた姿勢から真上に飛び上がったイグナーツ。頭上に真っ直ぐ伸ばした両手の爪先から眩い雷光を発し、幾筋もの稲妻が全身を包む。

 稲妻を纏ったイグナーツの身体は高速回転しながら天井付近で方向転身、巨大な雷の矢となって木窓を突き破った。

 この間、僅か3秒足らず。

 目の前で起こったことに理解が及ばず呆然と立ち尽くす幼馴染を部屋に置き去りにし、大地に降り立ったイグナーツはそのまま闇夜を疾走し生まれ故郷を後にした。



「――以来、俺は何かと女難に遭うことが増えた。最初は魔王討伐の武功に惹かれての事かと思ったが、そういう俗世の噂とは無縁の地で里長(さとおさ)の奥方に寝込みを襲われた際にこれは違うと疑った。その場を逃れた後日調べて貰ったところ、そのような加護を得ていたことが分かったのだ」


 淡々と、しかし内から込み上げてくるものを抑えつけるようなイグナーツの語りにルシアンは唖然とした。


「それは、その……討たれた魔王の呪いでは?」

「俺もそう思っているのだが、鑑定してくれた神官は神より授けられた魔王討伐の報酬であると、頑として曲げなかったのだ。まったく、余計なことをしてくれる……!」


 魔王討伐という偉業を成し遂げてより十年。

 己を律し決して驕らず、各地を転戦し続ける彼の実績と名声は戦いに身を置く者の模範と呼ぶに相応しい立派なものだ。

 彼の英雄と縁を結ぶ事の利は計り知れず、一国の姫君であろうと得ることは難しくないだろう。しかしイグナーツがそれを望んだ事は一度もなかった。


「初対面なのに擦り寄って身体を押し付けてきて、自信満々に不倫やら浮気を持ちかけてくる……もう、うんざりだ。しかも俺というよりは加護に惹かれて集まってくるんだ。やってられるか!」


 悔しげに吠えるイグナーツの(しか)め面と、彼の苦い思い出話を完全に聞き流しているサロメの蕩け顔の対比が酷い。

 憧れの英雄の知りたくなかった苦悩を目の当たりにしながら何処か現実感を失いつつあるルシアンは、ふと気になった事を口にした。


「イグナーツ殿。先程の話にあった幼馴染の女性はその後、どうなったのでしょうか?」

「ん? ……ああ、知らん」

「ええ? ご両親からも何も聞いておられないのですか?」

「うん。知ろうとも思わなかったし、あちらからも何も語られなかったからな……この加護さえなければ彼女を狂わせることはなかっただろうに。本当に忌々しい事この上ない」


 吐き捨てるように呟いたイグナーツは、纒わり付くサロメをルシアンの方へやや乱暴に振り払う。


「きゃっ! イグナーツ様!?」

「裏切者を側に置き続けるのは苦しいぞ、ルシアン殿。君はまだ若い、良い出会いはまだあるさ。ではな!」


 ルシアンに抱き留められたサロメが手を伸ばす先で、イグナーツは稲妻を纏って飛び上がる。そして――。


「全世界のリア充にF△CK Y○Uーーッ!!」


 ――血を吐くような謎の咆哮を轟かせて聖夜の空に消えていった。




 ルシアンとサロメの婚約が再び結ばれることはなかった。

 逃した大魚への未練から、サロメとその両親は更なる良縁をと高望みしてしまったのだ。しかし同年代の良縁などとうの昔に売り切れている。当然であろう。

 かと言って手前勝手に捨てた元鞘に、これまた自分たちから頭を下げて収まるなど矜持が許さない。そうして時間は容赦なく過ぎ去っていく。

 対してルシアンはといえば、騎士叙勲の翌年に同僚の女騎士と縁を結んだ。

 平民出身の彼女はルシアンよりも年嵩ではあるが、大らかで肩肘を張らずに居られる気安さはサロメと婚約していた頃には考えられなかった安らぎがあった。

 一男二女の子宝に恵まれたルシアンは、かの英雄の言葉を何度も噛み締めた。


 そして件の英雄はこっそり荷物を回収して王都を発った後、東に広がる大森海に住まう魔女を討伐に向かったという報せを最後に消息を絶った。

 生死は不明、そもそも魔女の元へ辿り着けたか否かも分からない。

 そして彼の足跡を辿るように旅をしている三十絡みの女戦士もまた、大森海に足を踏み入れたまま帰ってこないという。

イグナーツ「何がクリスマスじゃあい!」

かような駄文を読了いただき、ありがとうございます。

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