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18 我はこの世界を終わらせるもの也!

 淫魔参戦!


 21人のサキュバスが肉の塊、ドスケベボディユナテッドと化して神を名乗る白づくめの少年に群がる21対1の大乱戦ハンディキャップマッチ!

 神と悪魔ならぬ、自称神と淫魔の一大決戦! ハメルマゲドン接近!


 かつては(一応)全年齢向け健全MMORPGであった剣と魔法の世界に顕現する女体の石垣!淫欲の人垣!

 一己の生命体の如く蠢くその姿、生命の蟻地獄か背徳の組体操か!

 伝説の淫魔の力が衣類を引き剥がす!


 少年の自慢していた白いロングコートが! 白いシャツが! 白いズボンが!

 そして遂には白いブリーフパンツまでもが淫乱悪魔合体した合体淫獣の隙間から吐き出され、堕ちる鳥の羽の如く、手折られた花の花びらの如く舞い落ちる!


 水の都と謳われた王都ラレンティニアの王宮前広場は今、色欲の狩場と成り果てた!

 狩猟解禁! 飢えたドスケベモンスターがハンターと化したフロンティア!

 罠に嵌ったG(ゴッド)級少年の貞操は風前の灯! 散らす生命の素たる星々の灯火!

 色とりどりの淫魔達が紡ぐ炎の螺旋! 螺螺螺(ららら)、ある種の地獄の扉が開く!


 スーパー破廉恥タイム! この後すぐ!


 ……



「ほらぁ…♡ 暴れないの…♡ 我慢しないで身を任せて…♡」

「うふふ♡ 可愛いのね…♡ ここが弱いのかしらぁ…♡」

「もうこんなになってピクピクしてる…♡ 出したいんでしょう…♡ いいのよぉ出しちゃって…♡ 思いっきりぶちまけてぇ…♡」

「あはっ♡ 出たぁ♡ 一気に5レベルも出ちゃったねぇ♡♡」

「するーい♡ わたしにもちょうだい♡ ほらほらぁ全部飲んであげるからぁ♡ んんっ…♡ すごぉい…♡ 8レベルも♡ お口からあふれちゃう…♡♡♡ 誰に断ってレベル下がってるの? 死ねよ」

「まだここはこんなになってるわよぉ…♡ 経験値パンパンに溜めてたのねぇ…♡♡」

「もっとレベルぴゅっぴゅしようね…♡ 経験値カラになるまで搾り取ってあげる…♡」


「らめぇぇぇぇっ♡ もうレベルドレインしないれぇぇぇぇっ♡ 魔法使えなくなっひゃうぅぅぅぅっ♡ スキルも発動しなくなっひゃうぅぅぅっ♡ らめええぇぇぇっ♡ ステータス真っ白になっひゃうっ♡♡ ザコになるっ♡♡ 低レベルのザコになっひゃうぅぅぅぅっっ♡♡♡♡」


 訳の分からない嬌声が漏れ聞こえる肉塊を前に仲間達は呆然と立ち尽くした。


「わ、妾の王宮の前で…歴史あるラレンティニア宮殿の前で…な、なんという事をぉぉ…!」


 王宮の前で繰り広げられる淫魔の乱舞にババア成分不足のロリババア、ティルダ女王が膝をついて悲嘆の声を絞り出す。


「……意味ありげに頷くから何か作戦があるのかと思って時間稼ぎをしてあげたニャに…こんニャのだとは思わなかったニャ……」

「いやでも、魔法攻撃も物理攻撃も跳ね返すんじゃ、こうするしか無いだろ。レベル500なんてヤツとまともに戦ったらどうなるか解らないし、サキュバスが居てくれて良かったよホント」

「でもサキュバスに囲まれたぐらいじゃ、いくらでも逃げようはあったんじゃないですか?」

「……知らなかったのか…? おっぱいからは逃げられない……!」


 あの少年の中身が自らを運営の人間と語っていた通りなら成人男性である可能性は高い。

 そして健全な成人男性であれば迫り来る色とりどり、形とりどり、よりどりみどりのおっぱいの群れを前に、力づくで脱出など出来ようはずも無いなのだ。


 俺は真理を語ったつもりだったが、リリカとナツミは蔑むような視線で俺を睨んだ。

 畜生、猫耳の中のオッサンはおっぱい星人ではなく尻派だったのか。重大な裏切り行為だ。


「俺なら逃げるけどなあ」


 ブラザー風ガチムチマッチョも困ったような顔でサキュバス達から目を逸らしているがアレは例外だ。


「とにかく、これで脅威は去った! ショウゴ、大丈夫か?」

「ああ、女王の回復魔法のお陰だ。助かった」


 ショウゴが感謝を述べるがその女王は未だ蠢く肉の塊を前に四つん這いで嘆いている。


「街の人たちを避難させておいて良かったニャ。王宮の眼前でこんな光景が繰り広げられてるのを見たら、もうこの国は再起不能だったニャ」

「まあ、変なのが乱入したけど、今度こそこれで一件落着だ。それで元凶のゆうたママは……」


 カムイに群がるサキュバスたちの尻から目を離して、周囲を見回すと髪を振り乱したゆうたママが寄り添っていたベアトリクスを突き飛ばして立ち上がった。


「あはは、あははははッ! 何が神だクソガキがッ! 全然役に立たないじゃない!」


 ゆうたママは狂ったように笑いながら、不気味に紫色の光を帯びる五つの鍵を空に掲げる。


 鍵は禍々しく光を強め、空中に浮き上がると何も無かった空間に空いた五つの黒い鍵穴へとそれぞれ吸い込まれた。


「あ、アレは魔王の鍵ニャ! いつの間に盗ったのニャあ!?」

「戦後の何も無い時代にヤミ市を走り回って育った人生の大先輩を舐めるなガキどもッ! 体が自由に動けばこのぐらい朝飯前なんだよッ!」


 正直、ゆうたママを舐めすぎていた。このババア逞しすぎる。


「こいつを使って呼び出した魔王とかを倒せば日本に帰れるんでしょう! さあ呼び出してやったわよッ! さっさと倒してワタシたちを日本に帰してッ!」

「そいつを倒せる武器が無いニャあ! しかもこんな街のど真ん中で呼び出すなんて、どれだけ被害が出るか解らないニャ!」

「知るかッ! こんな街や国が、こんな世界がどうなったって知ったもんかッ! 誰か倒せるんでしょうッ! ここで死んでもそれまで待ってれば良いのよッ! さあ! 魔王だか将軍だか大統領だか知らないけど出て来なさいッ!」


 鍵の吸い込まれた穴は一つに重なり、巨大な暗黒の円になり、その中から人影が現れて地上に降り立った。

 その姿を見た俺たちは、息を飲んで目を見開く。


「……ダサっ」

「……名前からして期待はしてなかったニャけど、ちょっと酷いニャ」

「……ド◯ターマ◯ハッ◯ン、ですかねぇ」

「……いやあ、どっちかっつーとス◯ース◯ョッキーじゃねぇか? エイ◯アンの」

「……いや、ボスとしては結構ありがちだと思うぞ? スキンヘッドの大男」


 黒い穴から現れたその姿は青い肌にスキンヘッドの大男。

 トゲの付いた肩パッドから黒いマントをなびかせ、上半身には胸の中央でクロスする鋲の付いた十字ベルト、下半身は黒い革パンのようなズボンに膝パットの付いたブーツ。

 身長は3メートルはありそうだが、受ける印象は某世紀末救世主伝説のコスプレをしたヒーロー映画の宇宙人のようだ。


「ち、違うっ♡ そいつはっ♡ あひぃんっ♡ 魔王じゃ、あン♡ ないインッ♡」


 ようやくサキュバスから解放されたカムイが、ガクガクと全裸の生っ白い体全体を震わせながら言葉を絞り出す。


「魔王をっ♡ 召喚できるはずっ♡ 無いっ♡ インっ♡」

「何言ってるんだ! コイツが魔王じゃ無いのか! あとちゃんと喋れうっとおしい!」


 ディアスに怒鳴られ、カムイは一度深呼吸して続ける。


「鍵を集めても魔王を召喚できるはずは無いんだ! 魔王は、根元破滅魔王バッドエンドはデザイナーが逃げてデザインも調整も間に合わなくて実装されなかったんだから!」

「どういう事ニャ!? 魔王討伐がサービス終了を掛けた最後のイベントだったはずニャ!」

「どうせもうほとんどプレイヤーの残ってない赤字ゲームなんだからそこまで辿り着くプレイヤーなんか居ないと思ってガチャで課金を集めるために強行したんだぁっ! 本当は魔王なんか居ないんだ! 鍵を集めてたのだってこの世界がいつまで続くか解らなくなった今、それを隠すためだったんだ!」

「じゃ、じゃあ何なんですかあの青ハゲは!」

「知らないっ! 俺はあんなの知らないっ! 知らな…あひぃぃんっ♡」


 衝撃の事実を語るカムイは背後から尻に伸びたサファイアの手によって黙らされた。


 魔王ではないらしい正体不明の青ハゲが口を開く。


「……我を呼び出したのは貴様か」

「そうよッ! さっさとあのクソガキどもを殺しなさいッ!」

「無論、我は生きとし生けるもの全てを殺す。……が、その前に褒美をくれてやる」


 青ハゲはゆうたママの顔を掴んで体を持ち上げる。


「我が最初の贄となる栄誉をやろう。光栄に思え」

「……ッ!?」


 そのままゆうたママの体が発火し、炎の中でもがく人影はすぐに黒い塊となってバラバラに崩れ、光の粒子と共に舞い散る火の粉となって消えた。


「ママっ!!」


 母親の消滅を眼前で目撃したベアトリクスがアイテムボックスから光を帯びる両刃の剣を取り出して青ハゲに斬りかかる。

 しかし、その斬撃は身動ぎすらせずに体で受けた青ハゲの肌に傷つけることも出来ずに硬い石か金属に当たったかのように弾かれてしまった。


「そんな物では我に擦り傷一つ負わせる事は出来ぬ」


 剣を弾かれて尻餅をついたベアトリクスに青ハゲが手を伸ばす。


「エリカ!」

「了解」


 俺の叫びと共に三体のエリカが足元からジェットを噴射させて突進する。

 一体がベアトリクスを抱き抱えて離脱し、二体が青ハゲにそれぞれ拳と脚を叩きつけた。


 しかし青ハゲはそれを受けても微動だにせず、叩きつけられたエリカの硬質の装甲に覆われた腕と足が粉砕した。


「下らぬ」


 青ハゲは腕を砕かれた方のエリカの頭を鷲掴みにしてそのまま握り潰した。


 頭部を失ったエリカの体が首から火花を散らして崩れ落ちるのと同時に脚を砕かれた方のエリカが両手から熱線を発射したが、それも青ハゲの体に当たっているものの、煙を上げるだけで効いている気配は無い。


「つまらぬ」


 熱線のエネルギーが途絶え、片足を失い倒れ込んだエリカに、青ハゲは脚を乗せてその上半身を踏み砕いた。


「な、なんニャあ!? あんな見た目なのに強すぎるニャあ!」

「ヤバいですよ! これは本当に逃げた方が良いかもです!」


 二体のエリカが為すすべも無く瞬殺されてリリカとナツミが慌てふためく。

 俺だって焦ってる。あれは普通じゃない。


 しかしショウゴが青ハゲに向かって構えたまま訊いた。


「お前は何者だ! 魔王じゃないのか!?」

「我は魔王…我は破滅をもたらすもの」


 青ハゲは大袈裟に両手を広げ宣言した。


「我は根元破滅大魔王カタストロフ! 我は全ての命を滅する者! 我はこの世界を終わらせるもの(なり)!」


 何なんだ? 意味がわからない。


 五つ集めた鍵で呼び出されるはずだったイベントボスの根元破滅魔王バッドエンドは最悪な運営の怠慢により実装されていなかった。

 しかし現れたのは根元破滅大魔王と名乗る青ハゲ。


 カタストロフなんて名前のセンスはバッドエンドとどっこいどっこいだが、義体で本体に影響が無いとは言え二体のSFチートアンドロイド、エリカが問題にならずに瞬殺されてしまった。


「マスター、目標の体表硬度、筋力は想定の400%を超えています。さらに総戦力は不明で危険度は測定不能ですが、私の義体を破壊するなどあのサイズの自然界の生物ではあり得ません。現区域からの離脱、若しくは大型兵器による排除を提案します」

「これは本当に逃げた方が良いかもな……」


 隣に居たもう一体のエリカの報告を聞いて、俺はこの場からの脱出を考える。

 これは王都の人たち全員を退避させて、本当に核ミサイルでも撃ち込まなければならないかもしれない。


「虫けら共め、数だけは多いようだな」


 辺りを見回して、大魔王青ハゲが両手のひらを発光させ、胸の前で合わせた。

 何かするつもりなのか。


「マスター! 周囲で粒子の異常振動! これまでに無い規模です! 目標の両手の間で影響された原子が連鎖的に衝突して高エネルギーを発生させています! これは核融合…核攻撃を行おうとしています!」


 核攻撃!?


 ファンタジー世界に似つかわしく無い突然のエリカの報告にその場にいた全員が顔を引きつらせた。


「あ、あれも実装されなかった究極魔法れすぅっ♡ もうらめぇっ♡ みんな死んじゃうにょほぉぉぉっ♡」


 どこからか緊迫感を削ぐ気色悪い声が聞こえた。

 そう言えば昔のゲームではそういう設定の攻撃魔法もあったかもしれない。

 質量(ウェイト)揺らす(ティルト)系のヤツだ。


「EMPで阻止しろ!」

「間に合いません! 目標がエネルギーを解放したら直ちに爆発します!」

「全員俺たちの後ろに退避! クルセイダー投下! あいつの真上に落として着地と同時に最大出力でシールド展開! 封じ込めろ!」


 エリカの警告と俺の指示で、物騒な単語に反応した元地球人(プレイヤー)が訳の分からないといった様子で惚けている現地人(NPC)とサキュバス達を連れて俺とエリカの後ろに下がる。

 青ハゲの頭上から降ってきた歩行戦車クルセイダーは青ハゲを掴んで抑え込むと共に球形のプラズマシールドを周囲に展開した。


「クルセイダーⅣのシールドでは抑えきれません!」

「ドラグーンを間に落として盾にしろ! 爆発が来ると同時にこっちもシールドを展開だ!」

「了解!」


 俺たちの目の前に、墜落するようなスピードで全長30メートルの輸送艇が降ってくる。

 着地の衝撃でステルスが解除された暗灰色の機体が青ハゲとクルセイダーの姿を覆い隠した。


「だ、大丈夫ニャか!? 防ぎきれるニャ!?」

「知るか! これでダメなら諦めて復活できるように祈っとけ!」

「来ます!」


 エリカが警告と共に二体とも俺の前に立ち、ドラグーンと合わせてシールドを展開する。


 その直後、

 空が、

 世界が白い光で覆われた。

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