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13 カワイイが最強のチートだって事を証明するニャ!!

 突然押しかけた大所帯となった俺たち一行と兵士側の代表として伯爵と衛兵隊長、そして村に残っていたサキュバスをまとめていた青い髪のサファイアと呼ばれているサキュバス、オークのゴムロとゴブリンのザザ、村長宅の客間になんとか収まった面々を見回してこのタリヤ村の村長を務めているおばちゃんは溜息をついた。


「こんなのはこの村始まって以来だよ。しかも女王様までいらっしゃるとはねえ。あたしゃ初めてお目にかかったけど、こんなちっこい女の子が女王なんかやってたなんて驚きだよ」

「すまぬな村長よ。突然このような大所帯で押しかけて迷惑だとは思うが手は煩わせぬ故、しばし容赦するのじゃ」


 それほど大きな声ではなかった村長の言葉にのじゃロリ女王が耳聡く反応してしまったので困った村長は「はあ」とだけ返事をして奥に引っ込んで行った。


「それでクラリスとやら、どうやってゆうたママの企てを止めるつもりじゃ? ぬしに考えがあるのじゃろう?」


 のじゃロリ女王が俺に話を振ったのでこの場にいる全員の注目が俺に集まる。

 ほとんど顔見知りとは言え少し緊張する。


「ええ、まあ一応。本当はサキュバスの皆さんにだけ力を借りられれば良いかと思ってたんですが……」


「なに畏まってんスかクラリっちゃん。男の目があるからってかわい子ぶらないでいつもの男勝りな喋り方でいいっスよぉ」

「あらぁ、ウチはそちらの方そういうキャラで男を釣っているんだと思ってたわぁ。最近じゃ同性の友達みたいに気安い女の方が男ウケが良いらしいからぁ」

「なんと、庶民の間ではそのような流行があったとは。粗雑な女じゃと思うておったが油断ならぬのじゃ。ショウゴもそのような女が良いのか?」

「い、いや俺は武道家として…プロゲーマーになるまで異性にかまけている気は……」

「そもそも女ってのは何考えてるか解らねェ。男同士の方が良いぜ」

「やっぱり女はお淑やかな方がいいブヒ。静かに家を守って子供を沢山産むのが良い女ブヒ」

「ボクチンも煩い女は嫌いブヒ。出しゃばって冒険者になるような女はロクなもんじゃないブヒ」

「それはちょっと前時代的すぎるゴブよ。これからは女性も魔物も社会進出して新たな時代を切り開くべきゴブ」

「静かにするニャあ! これじゃいつまで経っても話が始まらないニャあ!」


 スカーレットのどうでもいいツッコミを皮切りに一斉にどうでもいい話を始めるアホ集団にリリカがキレた。

 一人だけ黙っていてくれた衛兵隊長はやはり良い人だなあと思いつつ、こんなアホ共の手を借りて大丈夫だろうかと少なからず心配になる。


「う、うむ、(わらわ)とした事が淫魔などの下らぬ言につられてしまったわ。じゃがサキュバスなんぞの手を借りてどうしようと言うのじゃ。魔物を引き連れて王宮に押し入るなど妾は許さんぞ。歴史あるラレンティアの王宮を血で(けが)すなど以ての外じゃ」

「はー、自分でその王宮から逃げ出してきた癖によく言うっスねぇ。自分の不始末のお尻を拭いてもらうんだから突き出してよく見えるように両手で広げてお願いするのが礼儀ってもんっスよ」

「スカーレットぉ、それを言ったらアナタも大口叩いて出て行ったのにショーカンのできる場所は見つからなかったじゃなぁい」

「いい加減にするんだ。これじゃ本当に話が進まないしまたリリカさんに怒られるぞ」


 ショウゴに言われて漸くティルダ女王とスカーレットともう一人のサキュバス、サファイアも口を閉ざした。


 まったく、人数が多くなると話をするのも一苦労だ。

 俺とリリカとナツミの三人だけだった時はなんのかんの言っても気楽で良かった。

 リリカは兎も角、ナツミは大人数で集まっているのが相当なストレスらしく、部屋の隅で落ち着かなそうに天井と窓の外を交互に眺めている。

 これは用件だけ伝えて早めに解散した方がいいだろう。


 俺は一度深呼吸をして話し始めた。


「今回の事件の首謀者は聞こえのいい、耳障りのいい言葉で王都の大人たちをその気にさせて扇動している面倒なヤツだ。多分、自分が出てきて戦うなんて事はしないだろうし、こっちが力に訴えたら余計に立場が悪くなるだけだろう」

「じゃあ夜中にコッソリ忍び込んで暗殺でもするっスか? あーし達はそういうのあんまり得意じゃないっスよ」

「そいつは一応冒険者だから死んでもすぐ神殿で復活するだろうし、もうそいつ一人を消しても無駄だろう」


 俺が殺せばその限りでは無いだろうが、最早ゆうたママ一人殺した所で思想に感化された大人や、地下水路で冒険者狩りをしていた騎士のようにこの事態に便乗している人間は止められない。

 それにこの世界に来ているのかもしれない「ゆうた」と言う息子が母親を殺されたと知れば俺は相当恨まれるだろう。そんな事は避けたい。


「ある種の思想ってのは伝染病みたいに広がって仲間を増やすんだ」

「ああ、特にこの国…いやこの世界の人間はそういう耐性がまるで無かったろうしな」


 俺の言葉にショウゴも腕を組んだまま頷いた。

 こういうのは勢いが大事だ。俺はテーブルに両手をついて声を張り上げた。


「そう言うわけで目には目を歯に歯を、声には声、プロ市民にはプロ市民のやり方で対抗するしか無い! 今回は武器も戦いも無しだ! 人数は多い方がいい、サキュバス達とこの場にいる皆んなの力を借りたい!」


 ◇


 この村から王都までの移動を考慮し、翌日の早朝にドラグーン二機を使い必要な人員を乗せて出発する手はずを整え、その場は解散となった。


 村人を驚かせないように村の外へドラグーンを着陸させ、グランシール製の魔法の船だと適当にごまかしたがしばらくは大勢の村人達、その中でも特に小さな子供達が物珍しそうにSF輸送艇の周りを取り囲んであれこれ言いながら眺めていた。

 しかし日が暮れるとさすがに見飽きたのか、村人達は次第に居なくなり最後まで残っていた子供達も村の大人達に手を引かれそれぞれの家に帰って行った。


 俺とリリカとナツミ、そしてショウゴとディアスは村の中に部屋の空いている家がないのでここで寝ることになった。

 前に止まった村長宅の客間では今頃ティルダ女王がゴダート伯爵と衛兵隊長、そして村長に接待をされているらしい。

 ゴダート伯爵が率いていた兵士たちは殆どが船を使い街まで帰って行き、残った数名は村の男達と宿の酒場で夜を明かすようだ。

 スカーレットも再開した仲間達と共に宿の方に行っているのだろう。


「こんなので上手くいくんですかねえ」


 解放されたドラグーンの後部貨物ハッチから伸びる車両搭載用スロープの上に座って、村の人から差し入れられた野菜と肉の入ったスープを口に運びながらナツミが夜空を見上げて呟いた。

 リリカはシャワーを使っているし、ショウゴとディアスはさっさと食事を済ませて外で何か相談をしているようなので今は俺とナツミの二人きりだ。

 集会の時に落ち着かない様子だったので少し気になったのもあってナツミのペースに合わせていたせいもある。


「どうだろうなあ、正直言って解らないが、まあ、サキュバスが居れば何とかなるんじゃないか?」

「何ですかそれ、あんなに自信ありそうに言ってたのに」


 俺の曖昧な返答に呆れたように半目で文句を付ける。


「他に良い方法が思いつかなかっただけだ。俺だってガラじゃない」

「失敗したらどうするんですか」

「そうなったらグランシールまで戻って外交圧力でなんとかして貰うしか無いだろうなあ、時間は掛かるだろうけど」

「迂遠な計画ですねえ、そこまでしてこの世界のために何かする必要ってあるんですかね?」

「まあ、そう言われると、無いよな。でもいつまでこの世界に居るのか解らないし、元々ただのゲームのキャラクターなのかも知れないけど、この世界の住人が転移したプレイヤーのメチャクチャな行動のせいで迷惑をしてるなら止めさせないと行けない気がするんだ」

「本当にお人好しですねぇ」


 ナツミは一旦言葉を区切って手の中のスープの入った椀を見つめて続けた。


「でも、なんかクラリスさんが何でこんな飛行機やロボットや宇宙戦艦みたいなとんでもないチートを持って転移したのかは解る気がします。ショウゴさんもそうですけど、困ってる人を放って置けないみたいなタイプじゃないですか。きっとこの世界に転移させた神様かなんかがそういう風にしたんです。あたしが特別な力を持っててもそんなに人助けなんかしませんよ」


 ナツミはそんな風に言うが、この女装ショタエルフの中のお姉さんだって目の前で理不尽に晒される人がいたら真っ先にキレて突っ込むだろう。

 ただ何となく微妙な空気を察して突っ込むのは躊躇われた。


「自分じゃそんなつもりは無いんだけどな」

「結局、あたしみたいなのが異世界に来たって主役になんか成れないんだなぁって考えたら、少しヘコみました」

「……もしも鍵を集めて魔王を呼び出して、そこに核ミサイルでも撃ち込んだら元の世界に帰れたりするのかな?」

「なんですか急に。あたしの話聞いてました?」

「ああ、俺も元々好きでこんな世界に来たわけじゃ無いし、少なくともナツミとリリカが帰りたいって思うならすぐにでもその方法を試してみるさ。俺は…そうだな、この世界に来ているプレイヤー全員とは言わないが、少なくとも仲間が無事に現実へ帰れるならこの世界がどうなっても構わないくらいには考えてる」


 ナツミは少し驚いたように顔を上げてから笑った。


「それこそなんですか、クサいですよ」

「そっちが神妙にしてるから合わせただけだ……ま、魔王を倒したら元の世界に戻れるなんて与太話はイマイチ信じられないけどな」

「ですよねえ、そんなので現実とゲームの世界を行ったり来たりなんて馬鹿馬鹿しいにも程があります」


 ナツミが再びスープを口に運ぶと、背後から能天気な声が飛び込んできた。


「どうしたニャ二人して、まだ食べ終わってなかったのニャ? 明日は大事な作戦を成功させてラレンティアを訳の分からないPTAモドキから解放するニャよ! グダグダ言ってる場合じゃ無いニャ! 今までたまった鬱憤を晴らすのニャ!」


 シャワーを浴びてホクホク顔になったピンク色の猫柄パジャマ姿のリリカだ。

 俺の思いついた作戦だが何故かもうコイツの方がすっかり乗り気になっているらしい。

 俺とナツミがリリカのアホっぽくも明るい声に苦笑しているとショウゴとディアスも戻って来た。


「おう、そっちはどうだ? こっちは話がまとまったぜ!」

「い、いやディアス…本当にアレで行くのか…? 俺はちょっと抵抗があるんだが……」

「何言ってやがる、こういうのは勢いが大事なのよ! 王都の連中をアッと言わせてやろうぜ!」

「こっちは全部リリカにお任せニャ! 成功間違いなしニャよ!」


 コイツらは何か独自に話を進めていたらしい。

 リリカが自信満々なのには少し不安になるが、今更引き止められそうに無い。

 俺は少し後悔しながらも食事を終え。簡単に身支度をすませると明日に備えてドラグーンの貨物デッキの奥で寝袋に包まり寝る事にした。


 ◇


 翌朝、俺とリリカとナツミ、ティルダ女王とゴムロについて来たタリヤ村のフィーナ、スカーレットたちサキュバスの女性陣。

 ショウゴとディアス、ゴダート伯爵と衛兵隊長、ついでにタリヤ村のニール、そしてゴムロとザザを中心としたオークとゴブリンたちの男性陣。

 それぞれを二機に別けて乗せ、ドラグーン輸送艇は王都ラレンティニアに向けて飛び立った。

 俺は中身が男だし、ナツミも厳密には男性だが準備の都合でこうなったのだ。


「ディアス、そっちはどうだ?」

『ああ、伯爵やら何とかって村の男やら何人かビビってるが概ね問題ナシだ』


 男性陣が乗っている方のドラグーンと通信で連絡を取って一応現状を確認する。

 ディアスはメカに関する飲み込みが早いし、両機ともエリカが二体づつ乗っているので問題は無いだろう。

 俺は通信を切り、リリカに渡されたモノを見て頭を抱えた。


「やっぱり、俺も着なくちゃダメか……?」

「何を言ってるニャ。言い出しっぺがそんな格好じゃ士気が上がらないニャ」

「あはは、諦めてくださいクラリスさん、これも世のため人のためですよ」

「はいマスター。説明を受けた任務の成功率はそれに掛かっていると言っても過言ではありません。今回ばかりは猫耳の判断が正しいと言えます。早くそれに着替えて下さい。着替えたら念の為動画を撮影します」


 リリカとナツミだけでなく白いメイド服身を包んだにエリカまでも俺を急かす。

 こんなの俺の計画には無かったのに……どうしてこうなった。


 俺は諦めて今まで着ていたモブっぽい地味ながらも布地が多く安心感のある服を脱いで、真っ黄色のスカートの短い胸元が大きく開いた破廉恥なメイド服に袖を通した。


「ニャフフフフフ、せっかくの剣と魔法のファンタジー世界で可愛い服を規制しようなんて不届きモノに、カワイイは正義、カワイイは絶対無敵、カワイイが最強のチートだって事を証明するニャ!!」


 本来剣と魔法のファンタジー世界と可愛い服は全く関係無いが、リリカの妙な勢いに押され俺はその事について突っ込む事は出来なかった。

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