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「手ぇ出されたろ、って意味だよ」
「?殴られたことはありませんよ?」
「…。えっと、触られたろ?ってこと」
「?よく手を引かれたり頭を撫でられたりしますよ」
「……。あーもう、セックスしたろって言って」
「嫌ぁ!!!変態!!!痴漢!!!破廉恥!!!」
ガコーン。どこからともなく取り出したお盆を純花が思い切り投げ、男の顔にめり込んだ。
カ――――――ット!!!!カ――――――ット!!!!まって、ツッコミどころ満載過ぎて追い付かない。ってか、純花ちゃんお願いだから察して!!話進まない!!
「ほへぇ?何をですか?」
あんのシスコン男ぉぉぉぉぉぉ!!!!!純花ちゃんはもう大学生だろうがそれ遠ざけてどうすんだあのアホぉぉぉぉぉ!!!!
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「おんなぁ」
目をギラギラさせ、今にも飛び掛からんばかりの男たちが何人も向かってくる。目の前に立った男が、怒り狂った目で指を鳴らし、拳を大きく振り上げる。純花は思わず固く目を閉じた。刹那。
「申し訳ありませんでした!!!」
「…へ?」
恐る恐る目を開けると、男たちが土下座をしていた。あっけに取られる純花に一番近い男がガバっと頭を上げると目を輝かせて純花を見つめる。
「いやぁ、視野の狭い俺たちを叱ってくださるとは、何て素晴らしいお方でしょう。先程の言葉、胸にしみました!!一生ついていきます、姐さん!!…。」
姐さんと口にした次の瞬間、何かを思案する風情でまじまじと純花を見る男。戦々恐々として純花が様子を窺っていると、男は急に目を輝かせて言った。
「いや、お嬢だ、お嬢と呼ばせてもらいます!!」
「「「一生ついていきますお嬢!!!」」」
カ――――――ット!!!!はーい、ストーップ!!何か間違ってることに気付けー?何この急展開。おかしいにも程があるだろ。意味不明だわ。つーか、どんなキャラしてんだ悪役ポジ。いつの間にか愛すべき素直な馬鹿になってんぞ?
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「おうおう、早かったじゃねぇの大上よぉ?」
呆けていた男の一人が我に返った。大上と電話で話していた男だ。若干引きつっている笑みを浮かべると、大上を見やった。すっとその傍らに視線をうつすと、首を傾げた。
「それに、見慣れない顔が居るな。誰だソイツ」
「どーもー。そこの純花の兄貴分の狩野って言います」
ニッコリと狩野が挨拶する。すると男は。
「ああ、ご丁寧どうもどうも。遠くまでご苦労様です」
「いえいえ、お気になさらず」
にこやかな挨拶合戦が始まった。純花が微妙な顔をしてぽつんと呟く。
「…礼儀正しい?」
カ――――――ット!!!!だからちゃうねん。違うんだよ。そうじゃなくて、どうしてそこまで愛すべき馬鹿になりたいの⁈
以上、NG集でした。