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三十一呪 変わってしまった

「それであの女とどっかの組織の奴らを魔法を駆使して撃退した。けど、僕も父さんも傷が深かったし、それにどこまで連れて行かれたかもわからなかった。僕は意識がほとんどなかったし、父さんはすごい方向音痴だし」


 それは叶真も知っている。自分が住んでる町内だって危ういのに、県外まで出ていたとしたら帰って来られるわけがない。


「一応その魔法組織は壊滅させてあの女も放り出すとこまでは成功したけど、そこで限界が訪れた。だから僕が、魔法をかけたのさ。僕の魔法、覚えているかい?」


「……物体の強度を上げる代わりに、壊れやすくなる魔法」


「正解」


 矛盾に満ちた、妙な魔法だった。強くしたはずなのに、時間が経てばちょっとした弾みで壊れてしまう。それはまるで、物体の寿命を消費する代わりに、一時的にだけ強度を上げているかのように。


「けどキュウ、あの魔法は……」


「そう。人間にかけたことはなかったね。けどそこまでの博打を打たないと、僕も父さんも死んでいた」


 事の起こった現場を見ていない叶真には、何も言えない。それが本当なら、他に方法なんてないのはわかりきっている。求磨なら、間違いなくそうしただろうという確信が叶真にはあった。


「結果は……まあ、僕がこうしてキョウの前に姿を現すことが出来たってことでわかるよね?」


 強度を上げる魔法を使い耐久力を上げたから、死なずに済んだのだろう。それが一時的にかけたものなのか未だかかったままなのかはまではわからないが、少なくともそれで求磨は助かっている。


「親父は? 親父はどうしたんだ?」


「一命は取り留めた。けど、それだけ。今もまだ病院で眠ってるよ」


「そう……か」


 ずっとどこに行ったかわかっていなかった父親と兄二人の居場所が、わかった。それは本来喜ぶべきことなのに、ずっと知りたかったことなのに。今はもう、知らない方がよかったとさえ思ってしまう。

 一年前に何があったのか、どうして二人が姿を消したのか。知らなければ、もっと希望が持てたのに。求磨がこんな風に変わってしまったことを、知らずに済んだのに。


 そう思いかけて、慌ててその考えを頭から振り払った。それは、求磨と父親のやったこと全てを否定することだ。二人が悪者だったらよかったなんて、一瞬でも思った自分をぶん殴ってやりたくなった。


 それよりも、と叶真は今一番大事なことに気持ちを切り替えた。


「何があったかは、大体わかった。それでお前は、あの家追い出されて引っ越した俺の居場所を、どうやって知って――いや、この際方法なんてどうでもいい。そんなことよりキュウ、お前蛇喰に何をした?」


 二人が会話している間も、鈴音は虚空を見つめたまま壊れかけた人形のようにゆらゆらと立っているだけ。話に参加する素振りはおろか、何かをハッキリ目に映すことすらない。明らかに異常だ。


 叶真が鈴音について言及した途端、求磨がカクリと首を傾げた。


「なんでそんなことを訊くの? どうでもいいでしょ」


「どうでもいいわけが――」

「どうでもいいだろ」

「っ……」


 突如として、求磨の瞳にドロリとした闇が絡みつく。それはまるで、この世の汚泥を全て煮詰めたようなおぞましい色をしていた。


「僕にはわからないよ、キョウ。どうしてキョウが、そんなにもこいつに執着するのか。こいつの様子を見て怒っているのか」


「執着とか、そう言うんじゃねえよ。ただ、様子がおかしいから何があったかを訊いているだけだ」


「それが執着してるって言ってるんだよ。こいつは、僕達をこんな地獄に叩き落とした奴の子孫なんだよ?」


 どうしてそれを、キュウが。


 その質問を発する前に、答えはあった。


「僕達を売り捌こうとした連中は、どうも独自に魔法を研究してたみたいでね。何をどうやったのか、レネルアの墓の場所を突き止めてこっそり暴いてまで真相を掴んだのさ。

 その時、僕達にかけられている呪いの真実を知ったんだよ。呪いが僕達まで遺伝してる理由と、呪いを解くために必要なものをね。これを聞けば、キョウだってわかるさ。こいつらが、どれだけどうしようもないか」


 呪いの遺伝、とは魔王にかけられた呪いが叶真達子孫にまで遺伝していることに関してだろう。ならば、呪いを解くために必要なものとはなにか。叶真には全く思い浮かばなかったが、求磨はそれを知っているらしい。 


 求磨が告げた真実は、予想だにしないものだった。


「呪いが僕達に遺伝したのは、どうやら若ハゲの呪いが原因らしい」


「はぁ!? なんでそんなただの嫌がらせみたいな呪いが……」


「髪が抜ける、という呪いを実現させるために、呪いは遺伝子に作用した。そして一部を書き換えて、髪が若いうちに抜けるようにしたのさ。その時に、他の呪いまで遺伝子に刻まれてしまった。だから僕達子孫の代まで、呪いは遺伝しているのさ」


 三つの呪いの中では最も地味な効果しかないはずの呪いが、ここまで効いて来るとは。つまりそれさえなければ、もしかしたら呪いの効果範囲は魔王本人のみで済んだかもしれないのだ。


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