元勇者な姉と元魔王な妹4
元勇者な姉と元魔王な妹4
暗黒の空。時折。蒼き稲光が走るその下に不気味にそびえ立つ魔王城。
その玉座の間に白き甲冑を身に纏い聖剣を携えた勇者と黒き甲冑を身に纏い魔剣を携えた魔王が対峙している。
何事か会話をした後。両者とも剣を構え雄叫びをあげながら肉薄し白と黒が交差する。
カーテンの隙間から差し込む朝日に照らし出されるベッドの上で少女が身じろぎして起き上がる。
彼女の名は宮本菫。前世では白き勇者として魔王と対峙し、相討ちとなり前世の記憶を保持して現代日本に転生した少女だ。
私は起き上がると先ほどまで見ていた夢を思い出していました。
(懐かしい夢を見ましたね)
転生してから十数年が経ちましたが、前世の夢を見たのは初めてです。しかも、それが私と百合-と言っても前世では百合は魔王で男でしたが-の最期の場面とは。
私はベッドから出ると部屋着に着替え一階に降りる前に夢の事を話そうと百合の部屋の扉をノックします。
「百合。起きてますか?入りますよ?」
休日の百合は起きるのが遅いのでまだ寝ているかも知れません。しばらくすると扉が開き眠そうな顔をした百合が顔を見せます。
「姉上か。起きておるぞ」
眠気まなこを擦りながら見上げてきます。
あまりの可愛さに抱き締めたくなるのを抑えて要件を伝えます。
「少し懐かしい夢を見たので話したいです。部屋に入れてください」
「うむ。構わぬ」
百合とともに部屋に入り見た夢の話をすると百合が驚いています。
「あ、姉上。その夢なら余も見たぞ」
なんと百合も同じ夢を見ていました。すごい偶然です。
「すごい偶然ですね。これも姉妹の絆が成せる技ですかねー?」
偶然に驚きながらも嬉しくなります。最愛の妹である百合と同じ夢を見るという姉としては喜ばしい限りです。
「姉妹の絆かは判らぬが、確かにすごい偶然だな」
偶然だと言うことには同意してもらえましたが、姉妹の絆ははぐらかされて残念です。
「いいえ。これは姉妹の絆が見せた偶然という名の奇跡です!」
私は力を入れて言うと百合に抱きつきます。
「わわ!?あ、姉上は勇者だった時も女子に気安く抱きついておったのか?」
抱きつかれた事に驚いた百合が、私を離そうと私の体を押してきますが体格差があるので無駄に終わっています。
「いいえ。女の子に生まれ変わってからですよ?それにここまで激しく抱きついたりするのは百合だけです」
男だった勇者の時に女の子に気安く抱きついていたら勇者の名折れです。それに、いくら女の子になったからと言って、女の子に気安く抱きついていたら警戒されてしまいます。女友達にはじゃれつき程度で抱きついてはいますが。
「あ、姉上はシスコンというやつか?」
シスコンですか。私は日頃の行いを思い出します。
心霊番組を観て泣きついてきた百合を抱き締めたり、プールにいってスクール水着を着た百合を見て鼻血が出そうになったりとどう考えてもシスコンですね。
「そうですね。シスコンです」
私は満面の笑みで答えます。
「満面の笑みで言うことでは無いと思うが」
百合が若干引いています。
「百合は私の事。嫌いですか?」
私が少し悲しそうな目で見つめて言うと百合が慌てます。
「だ、誰も姉上が嫌いだと言っておらぬ!むしろ好いておる!嫌っておるなら怖い話しを聞いて泣きついたりせぬ!ただ姉上の好意は度が過ぎると言うとか…」
最後は尻すぼみになりましたが、私の事を好いていてくれて嬉しいですね。さすがに普段の百合の私に対する行動を見れば嫌っていないのはわかりますが。
「好意に限度なんてありませんよ」
私は微笑んで言うと百合に頬ずりします。
「抱き締めて頬ずりしたり尻を弄るのは姉妹の好意の限度を逸脱しておるぞ!?」
私の百合に対する好意の表現はいつまでも降りてこずに騒がしくするのを気にしたお母さんぎ見に来るまで続きました。