ここはどこだ。ラブホテルでした。
初投稿になります。
面白かった、つまらなかった、どんな内容でも構いません。
ぜひ、感想をいただけたら嬉しいです。
「伊織さん、どこにいますか?」
少し舌足らずのような甘いトーンの声が扉の外からした。
恐らくラブホテルだろう場所のトイレの中で、伊織はすぐに返事をするか躊躇った。
どんな顔をして、なんの話をすればいいのか。
爽やかに「今日はいい天気ですね」とでも言えばいいのか。まだ、外が晴れかどうかも確認してないのに。
はたまた「昨日は楽しかったね」と照れくさそうに笑えばいいのか。昨日のことは、ほとんど覚えてないのに。
「伊織さん、大丈夫ですか? 気分が悪いのですか」
扉のすぐ外から奈倉が問いかけてくる。
慌ててメガネを直し、便器の水を流す。
「だ、大丈夫です! すぐ出ますよ」
酒焼けか、掠れた声でそう告げてから、ドアノブに手をかけると、力も入れてないのに自然と扉が開いた。
同時に、飛び込んでくるように奈倉が伊織の胸板にぶつかってきた。
「うわっ、……ふぅー、びっくりしました。おはようございます、伊織さん。気分はいかがですか?」
温かな体温、柔らかな感触。たまらず息を飲む。
奈倉の肩を掴み、ゆっくりと離れながら、辛うじて「おはようございます」とだけ言うことが出来たが、心臓は飛び出しそうなほどバクバクと脈打っていた。
ぎこちない作り笑いを浮かべながら、伊織は奈倉を促すようにトイレから離れていく。
部屋に戻るとテレビの前に置かれたソファーに腰を下ろし、静かに奈倉からの言葉を待った。
なにかを察したのか、奈倉はどこか視線を宙に漂わせながら、やりにくそうに伊織の横に座る。
「さて、今後の話をしましょうか。ね?」
頭一つ分は背の小さい奈倉が伊織の顔を覗き込む。
「こ、今後の話って、なんです」
「モチロン、吸血鬼退治の話です!」
朝一番、奈倉さんの大変いい笑顔頂きました!




