六冬和生著「みずは無間」 紹介文
「みずは無間」 著:六冬和生
星。
はるか昔から人類を魅了し、織姫と彦星やオリオン、さそりを夢想させた美しい光。
人類はその星をその目で見たいと願い、宇宙を目指した。しかし何万光年もの距離は物理的に埋められない。だからこそ、宇宙に自らの代理人を飛ばそうと考えた。
その代理人こそ探査衛星。彼らは僕らの目の代わりだ。深宇宙を探査する瞳。けれど、他人の見たものを見つめて僕らは満足するだろうか? そんなことは決してない。ではどうすればよいだろう?
未来の人類は考えた、探査衛星を人間にしてしまおうと。
この物語の主人公――雨野透はその第一号。脳を迸る電気信号のパターンや分泌される化学物質をシミュレートし、機械にその魂を移し替えた被験体。彼は無機質なレンズの瞳で遠ざかる太陽系に別れを告げ、無限の広がりに目を向ける。
しかし彼の喪われた脳裏にちらつく影は、これから出会う未知の生命体の想像図や、地球のどこかで目にした星雲の姿でもない。
「透、それひとくちちょうだい。」
響く声は恋人のみずは。浮かぶのは彼女との苦い思い出。たとえ地球から何光年離れても、太陽がそのレンズで捉えられなくなってもみずははどこまでもついてくる。
たとえ光の99.8%の速度でいて座に向かおうと、自らの体を改造して頭脳を量子コンピュータに移し替えても、彼女は離れない。
この物語を読んでいるうちに、あなたの耳にもみずはの囁きが聞こえてくるだろう。
「ねえ、それひとくちちょうだい。」
宇宙を舞台に展開される男と女の物語。いままで見たこともない世界が、この物語には描かれている。
存在の耐えられない重さの愛を、是非、ご一読いただきたい。
学校の図書館報に掲載された短い文章ですが、自分では上手くまとめられたつもりです。
みずは無間は面白い作品ので、是非読んでください!