第6話 真実の意味
やっとかけたぁ・・・。
待ってくれている人がいたらお待たせしました!
天の梯子高軌道ステーション内 六菱重工会議室
「今総理から連絡が入った。下にgoサインは出した。上はACERNと合同で建造に取り掛かる」
こじんまりとした会議室に50代ぐらいだろうか、男が三人座っていた。六菱代表取締役社長、五十嵐東。播磨代表取締役社長、中村武雄。川崎代表取締役社長、芦賀元伸。
六菱
数世紀の歴史を持つ超巨大企業。その影響力はすべてに及ぶ。財界、政界、世界。
約1世紀前に大企業を3社、他多数を合意の上合併。その市場はありとあらゆるところに存在する。世界の軍用兵器は元を辿ればすべて六菱に到達するとまで言われるほど軍需産業の割合を占めている。
播磨
軍縮傾向にあった大戦後、一時は経営を危ぶまれたものの軌道エレベーター建設でその技術が真価を発揮し立て直す。長年、航空宇宙産業に携わっていたこともあり、ここぞとばかりに総動員で計画に掛かる。結果。立て直したどころか日本三大企業にまで最長を遂げた。今は航空宇宙関連だけではなく、船舶や民間機械にその市場を広げている。三大企業の中で一番民間寄りである。
川崎
こちらも六菱と同じく長い歴史を持つ巨大企業。大戦後は事業内容を船舶から二輪車、四輪車に変更し経営を安定させた。振動波検知後は再び船舶建造を開始し成長を続けている。多くの中小企業を合意合併、様々な分野の開発に乗り出している。船舶、二輪車では他の追随を許さない。
以上3社を日本3大企業とし、その足取りを決めるトップがこの会議室に集合していた。
「よし。では私は下に降りるとしよう。I601はうちが一番扱いに捗るだろうしな。ACERNとの合同は六菱か?」
「そうだな。だが宇宙での作業だ。中村さん、お願いしますね」
「何事も連携が大事だ。特に今はな・・・」
その後数分の短い時間で会議は終了した。
日本 中国地方ジオフロント最下層
吐き息が白く、湿度が極限まで低く管理された真っ暗な空間にいつ振りだろうか・・・。明かりが灯る。
バン!バン!バン!という音と同時に奥から順に高い天井に埋め込まれた照明が光る。
そして白銀の龍が姿を見せる。
急遽、使用が決まった為急ピッチで作業に取り掛かる。変更はこうだ。
推進機構はこのままポンプジェットスクリュー4軸を使用。主機を試作FN反応炉から正規採用となったFN反応炉2機に換装。
小型無人機及び弾道弾射出機を廃止。2脚機動兵器の水密格納庫へ。
以上の二つだ。
同型艦の伊600がいたが、今の2脚機動兵器に搭載されているFN反応炉の試作型のテストベットとしての試験航海中に行方不明になっている。AIに操作系統を直結していた為人工知能の不具合が事故の原因とされている。必死の捜索もむなしく発見には至っていない。だが直前までデータ送信はあったため一応試験航海としては成功している。
この伊601は伊600の改良型のFN反応炉を搭載し試験航海後ここに保存されていた。
ユニジア首相の捜索作戦へ向け着々と準備を進める人類の元に吉報が届く。
天の梯子中軌道ステーション航空宇宙指揮中枢センター
「司令。たった今バベル中軌道センターより地上ステーションとの連絡がついたと」
「そうか!よかった一先ず安心だな」
「はい、それともう一つ。低軌道リングにて監視を行っていた偵察ユニットがウシュマル艦隊から発進する小型飛行物体を複数感知。方角的にユニジア首都へ向うと思われます」
「急がなければならんな。地上へ連絡、三大企業、総理の耳に入れておけ」
了解と若い通信担当が返すとモニターに向き直りヘッドセットを戻し作業にもどる。
伊601も改修の9割を終え作戦開始まで数日と迫った頃、地上の通信機器が全滅しそれぞれの国は大混乱に陥った。
なんだ!なにが起こっている!と叫び散らすものも居るがそんなことをしても原因は分かるはずも無く理由が分からないまま数分がたった。
機械群のウィィィィィィンという甲高い起動音をはじめ、照明、モニター類が息を吹き返した。大小様々なモニター群は真っ黒な画面に再起動の文字を浮かばせている。
と、突然真っ暗な中に光がぽつぽつ映った画面に変わる。こんなものはプロセスに無い。なんだなんだとざわざわしていると一人が言った。
「これって・・・星、宇宙ですかね・・・?」
皆がそう口にした男性の方を見る。う、え?としどろもどろする男性は何か言おうと自分の知識を話し出した。
「えー・・と、この画面の左上に映っているのが恐らくベガです。周りより数倍明るい。そして左右したに見えるのが恐らくアルタイルとデネブです。・・・多分ですが・・・・」
と自分の趣味で得た知識を披露していると天井にある大きなスピーカーから野太い声が降ってきた。
〈第3人類。これから恒例の儀を執り行う。こちらは代表を以下の三人と認識している〉
そういって声は大統領2人、総理1人の名前を挙げた。
〈こちら側には問答を交わす意思がある。私たちとて完全な悪ではないのだ〉
この声の主は大体、というか想像は容易だった。そして同時に世界中でこの映像が流れているのだと確信した。頭が理解しても体を動かせずにいると、聞きなれた日本語の声が喋りだす。熊谷だ。
『貴方方は何なんだ』
いかにもな質問だが、喉からようやく搾り出したような声だった。
〈またか。我々は観測者であり管理者だ〉
まえに通信に割り込んできた時と同じ調子で答える。
『ならばどこから来たんだ』
〈我々の感覚を持ってすれば近い。近過ぎる程に。貴様らの感覚からすると近くはなったもののまだ遠いところだ〉
『侵略の意図はあるのか』
次はAELで使われている言語の声が質問した。フリードリヒ = コレル大統領だろう。
〈侵略ではない。流転だ。他意はない〉
驚いたことに大統領と同じ言語で返したのだ。よほど高性能の翻訳機器があるのか、驚異的な知能のなせる業なのかは分からない。
『流転?・・・』
怪訝な声で返す。
〈そうだ。貴様ら第3人類に抵抗、拒否権はない〉
すると誰もが思っていたであろうことを熊谷が聞く
『その、第3人類とはなんだね』
〈そのまんまだ。第3周期にて誕生、進化、繁栄した貴様ら人類のことだ〉
世界中のテレビやタブレットなど画面という画面かスピーカーというスピーカーから発せられる言葉を理解出来ないでいた。
『第3番目の人類ということか?それだと以前に我々とは別の文明を持った人類がいたとでも言うのか。ばかばかしい。地球が出来て数十億年やっとの思いでここまで進化、適応を重ねてきたんだ。他に人類などいるわけが無い』
総理の言葉に誰もが首を縦に振るであろう。
”この周期に生きる人類であれば”
〈貴様らの科学水準、歴史ではそうかもしれないが事実は異なるのだ。現に我々は長い間見てきたのだ。故に観測者であり。周期を管理してきた。故に管理者〉
『ど、どういうことだ・・・』
恐る恐るといった声色で大統領が応える。
〈貴様らが地球と呼ぶこの惑星が出来たのは今より数百億年前だ。ビックバンなど無かったのだ。我々も同じようにこの宇宙と呼ばれる空間を調べた。この惑星についても調べた。だが明確な答えは見つからなかったのだ〉
振り返り懐かしむような哀れむような調子で語りだす。
〈我々知性を持つ生物がこの空間に生まれた時には、当然ながらこの空間は確かに存在していた。既に用意されていたのだ。誰も見たことのないナニかによって。調べ、推測を立てることは容易だ。定義という名の基準というものを我々が勝手に作ったからだ。故に何もかも分かった気でいる。自己満足でしかないのだ〉
誰もが唖然としていた。思考を停止しているものが大半だろう。この周期の人類すべてが積み立ててきたものが根っこからひっくり返されたのだ。
〈故に我々が生み出した言語と呼ばれるものでは形容できないのだ。だが貴様らより以前に我々が存在し管理してきた事実はこちらにある〉
声は沈黙し数分が経つが誰も声を発することが出来なかった。すると
〈・・・問答は以上とする。ではこれまでの予定通り周期流転プロセスを開始する。〉
その言葉を最後にモニターには通常の画面が映し出された。
ハッと我に帰ると逆探を指示し送信元の特定を急がせた。結果、場所はユニジア危機管理指揮中枢センターであることが分かった。
これは同時にユニジア大統領であるリーアン = モーガンの行方が完全に消失したことも意味していた。
久しぶりに書いたのでいろいろ忘れかけてました。
地球の起源や宇宙の起源のくだりのところですけど、ちなみに自分は変な考えとかは持ってません。言うなればロマンです。たらればです。
ご理解の程よろしくです。
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