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第5話 2カ国首脳協議





旧スイス ジュネーヴ AEL大統領官邸


「熊谷総理。お待ちしておりました」

「どうもコレル大統領。道中の援軍感謝します」

「いえいえ。にしても敵には謎が多すぎる」

やれやれ。というポーズをとっておどける。

「今回の協議はそのことも含めてです。早速ですが・・・・約40年前我々はサンプルを回収しました。その時の写真がこれです」

そう言って熊谷は机にB7サイズの写真を広げる。

コレルはそのうちの気になった一枚を取り上げ眉間にシワを寄せる。

「これが、例の演説の巨人・・・・・」

それは大きな空間をガラス越しに映した写真だった。ヒトに似たものが横たわっており、その周りを隊細菌対放射能防護服を身に纏った小人が囲み、そのヒトに似た何かを解剖している写真だった。

「ええ、あれ以来体組織の分析などを行っていますが、これといった成果は出ていないというのが現状です」

「で、今回の侵攻ですか・・・・」

「彼らは自分を管理者と呼びました。それは今まで、どのタイミングからは分かりませんが我々地球人類を”外”から見ていたことになるかと思います」

「やはり、地球外生命体、宇宙人というのが妥当かね・・・?」

「そう・・・だとは思いますが、あまりに人類に似ているんです。宇宙の観測を始めて数世紀、未だに酸素と窒素を主成分とする大気を持つ惑星の発見には至っておりません。研究者らの見解は人類と非常に似た進化を遂げた地球外生命体、というのが一番の可能性かと」

「そうなると、地球に似た惑星があると。これも数世紀前ですが旧アメリカ合衆国がボイジャー探査機2機にあるレコード盤を載せて外宇宙に向けて放っています」


ゴールデンレコード

地球の生命や文化の存在を伝える音や画像が収められており、地球外知的生命体や未来の人類が見つけて解読してくれることを期待している。

ボイジャーのゴールデンレコード、またはボイジャー探査機のレコード盤とは、1977年に打ち上げられた2機のボイジャー探査機に搭載されたレコードである。パイオニア探査機の金属板に続く、宇宙探査機によるMETI(能動的な地球外知的生命体探査)の例である。


「確か記録には約1世紀前に消息を絶った。と記されているそうです」

「それを拾った宇宙人がはるばる征服のために来たとは思えません。第一、それほどの距離に到達すらしていないはず・・・・まあそこらへんの事は専門に任せよう。今は事を急ぐ必要がある」

「はい。モーガン大統領の捜索ですが。低軌道リングからの捜索が精一杯の状況です。太平洋・アラスカはチチェン・イッツァ艦隊に、大西洋は南極海からグリーンランドまでバミューダ・ウシュマル艦隊に、アフリカ大陸はピラミッド艦隊に封鎖されていて軍を派遣できる状態ではありません。無人偵察機、無人艦艇を派遣してみましたが瞬殺で反撃の機会すらない有様です」

「タワーの警備はどうなっている。連絡はつくのか」

「電波妨害のようなもので直接通信は出来ませんがリングから安全は確保されていると映像つきで送られてきました。敵も気付かない訳が無いと思いますが・・・」

「海上、空共にダメ。宇宙からの監視しか無理か・・・・。いや、待てよ?」

「どうかされました?」

「少し本国に連絡をしてくる。・・失礼」

そういってソファから立ち、部屋の隅に向う。

取り出した衛星電話で短縮番号を打ち国防省に繋げる。

「私だ。機密アクセスレベル1の者を出してくれ」

少して電話口に声が戻る。

『総理、お待たせいたしました』

そう言って電話を代わったのは国防大臣だ。

「今から言うファイルにアクセスしてくれ。WW#I-600FNだ」

『少しお待ちを・・・出ました。これがどうかしましたか?』

「よし、あったかこっちの端末に転送してくれ」

『総理、機密レベル2以上は総理といえど外部転送をロックされています』

「何とかしろ、今は機密がどうだと言っていられる時ではない」

わ、わかりました。返事があると熊谷は電話を切り元のソファへ戻る。

「なんだったんです?」

「海上と空はダメだった。ならば海中はどうだ」

「海中・・・?しかし海中をどう進むんです?」

「昔にはありふれていたものだよ」

「昔・・・海中・・・潜水・・潜水艦!その手がありましたか!」

第3次大戦以降、収束していった世界で侵略性を持った兵器は廃れていった。その中に潜水艦があり振動波により再建された海軍でも採用されず、長らく人々の記憶から消えていたものだ。

「ですが、今から建造を開始したとしても、いろいろ障害があると思いますが」

「そうだ、今から作るのは技術的にも時間的にも不可能だ。技術の多くは失われた。だがそれが地下で眠っていたとしたら・・・・・。北欧圏の人なら、それに貴方は軍に居たときに聞いたことがあるでしょう?ドラウプニルの吐息」

「聞きましたね。艦艇団所属の時に上官に耳にたこが出来るほど」


      ードラウプニルの吐息ー


      大火粉塵に包まれながら

     我 ふと思い後方を目に映す

 はじめに数本の槍を放ち 空を舞う悪魔を吐く

         『ドラウプニル』

  それは恐怖を見たのち 姿を消し深淵へ帰る

    そこに白銀の龍を見た気がした


ヨーロッパを中心として語られる伝承である。


「あれ実在するんです」

「えぇ!?すっかり作り話かと・・・・・・」

丁度、手元の端末に資料が届く。

「伝承の正体を見せましょう。これです」

「これは・・・白銀の龍。あながち間違ってませんね」

「そうだな。そしてこれが大統領捜索の突破口だ。敵に対潜水艦能力があるかは分かっていない。が一か八かだ。搭乗員の育成は何とかする。最悪人工知能搭載だ。作戦内容は後に回そう」

「では、こちらからも研究の進捗状況を。ACERNからは非常に順調とのことです。あとは拡大建設検証を残すのみで、小型版は既に実験段階です。と言っても、もう耳に入っておられるかな?」

「あぁ、さすが世界最高峰の素粒子物理学研究所だ。我が国でもかなわんよ」

「そんな。日本3大企業には負けますよ」

「あれは分野が違う。あれは1つで国家運営が可能なレベルだ。正直怖くて溜まらん」

熊谷は頭をかきながら苦笑する。

「それと、検証は無しだ。いきなり本番で行ってもらう。今は時間が一秒でも惜しい。その分野で段階を踏むことの重要性は理解しているつもりだ。その上での頼みだ高軌道リングに連絡はついている。物資の運搬は天の梯子からだけになる分遅くなるが仕方ない」

「なんとか取り合ってみます。それともう一方の方ですが、難航しています。こちらは成功すれば即時配備、運用が可能なのですが・・・」

「あれは元々地球の技術ではない。頑張ってくれているよ」


「ではこの計画で」

コレルが立ち上がり書類をトントンとまとめる。

「はい。帰りは陸路で帰るとするよ。機体は申し訳ないが預かっていてくれ」

「くれぐれもお気をつけて」


こうして熊谷はAEL官邸を後にした。







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