第1話 ストーンヘンジ遭遇事件
この小説では
「」←を現場。その場面にいるものの発言。
『』←を現場の通信相手。又はその場面の現場にはいないものの発言に用います。
以上のかっこを現生地球人類側の発言に用います。
以下、敵側は
《》←現場、以下同上。
〈〉←通信相手、以下同上。
として使っていきます。
それを踏まえて読んで頂けるとありがたいです。
最後の世界大戦より約2世紀が経つ、青い惑星「地球」
この地球にあった国境と呼ぶべきものはその数を激減させていた。
先の大戦で世界人口の2割を失ったが、回復傾向にあり現在60億人となった。
そして国家と呼べるものは3つにまでまとまった。
・ユニジア
旧南北アメリカ、アフリカ大陸を中心に構成される国家。
大統領を元首とする共和制をとっており、官邸は旧ブラジル連邦共和国の首都、ブラジリアにある。最高議会の議事堂としても機能しており2世紀で驚異的な発達を見せた地域だ。数世紀前の姿は見る影もなく、治安も安定し整備された先進都市になっている。通貨は全世界共通のピース。全世界総合順位は世界最下位の3位だ。
大統領は、リーアン = モーガン(Liam = Morgan)
・AEL(アジア欧州連盟、Asia-Europe League)
ヨーロッパ大陸、アジア大陸(一部を除く)、オーストラリア大陸から構成される、現状、最も広大な土地を持つ国家だ。
こちらも大統領を元首とする共和制。官邸及び議事堂は旧スイスのジュネーブの国際連合欧州本部、もとい旧地球連合本部に構える。広大な土地を持つが故に隅々までの経済、政治、流通の伝達が難しい事を踏まえ、政策として各旧国家地方に大規模な都市を建設。結果人口の程よい分散も行われ不自由なく文明の恩恵を受けている。通貨はピース。全世界総合順位は2位。
大統領は、フリードリヒ = コレル(Friderich /td> = Korell)
・日本(文明特化国)
アジア大陸の端の火山帯が形成した島国。文明特化国としてすべての分野において常に世界の最先端を行く特殊な国家。
君主制を取り皇室、天皇を君主としている。君主制と言っても立憲君主制以上絶対君主制以下である。
他2国の人間が立ち入ることの出来る地域は厳重に決められており、最先端と世界最古が共存する不思議な国家である。その国土のほとんどが山岳地形である為、人口は1億に留まる。通貨はもちろんピース。全世界総合順位は1位。
世界はこの3国に収束し、平和を手にした。西暦2050年に日本が発表した全世界核兵器廃絶計画により核兵器は地球上から消滅。途中、反対の強かった国は一時的措置として武力を行使した。
その頃から世界はさらにまとまりを見せ、全世界核兵器廃絶計画より丁度半世紀後の西暦2100年。世界が3つの国家にまとまったところで、日本がかねてより計画し、実験を重ねていた「軌道エレベーター計画」を実行段階に移した。人類の宇宙への進出の先駆けとなる計画だが、その膨大な資金が故にユニジア、AELが協力し1本、日本が1本、建設に辿り着いた。場所はユニジア・AEL側はユニジア領内ガラパゴス諸島周辺海上に。日本は旧インドネシアボルネオ島に建設した。
その建設は困難を極めたが新素材E-カーボン(Earth_Carbon)の発見により耐久性の問題を一気にクリアし、西暦2175年、無事人類史上最大にして最高の建造物が完成した。全長は約3万7千kmにもなり安定性の向上及び強大さゆえの重量の補助として低軌道約1500km、中軌道約2万km、対地静止軌道約3万6千kmにそれぞれオービットリングを設置。軌道エレベーターと重なる部分にステーションを設け民間人向けの娯楽施設、宿泊施設などのリゾート施設を建て人気の観光スポットとなっている。エレベーター内部は完全な真空、そして空洞でその中をステーションと地上を行き来するリニアが通っている。そのほかには中軌道リングに設置された太陽光発電パネルで得た電力を地上に送電するケーブルが通っている。民間人の立ち入りが許可されるのは中軌道ステーションまでで、静止軌道ステーションは立ち入り禁止区域となっている。これまでの人口衛星の役割をリングが果たす為、リングの完成を持って文明の発展に大いに貢献してきたであろう人口衛星は「リベロ」を残し除去された。
因みに名称は、ユニジア、AEL側を「バベル」、日本の物は「天の梯子」となった。建造方法は2本とも同じだが、外見はそれぞれの文化などが反映された形となり個性的なものとなった。
そして現在より半世紀ほど前、現生地球人類を脅かす脅威が突然現れる。
2199年 ストーンヘンジ遭遇事件
『空間省』
数年前より世界各地で確認されている異空間振動波の増加、規模の拡大により新たに作られた省だ。AEL、ユニジアに1省づつ設置された。
AEL政府 空間省
「・・・・・振動波検知!・・場所はラークヒル郊外古代遺跡ストーンヘンジ、規模は増幅中・・・・さ、最大規模を更新!空間の歪みを確認」
「すぐに部隊を向わせろ。2個戦車団だ」
観測員からの報告を聞いた空間省長官は数少ない国軍の出動命令を出した。
これまで異空間振動波による被害者は出ていないが、収束時に中規模の爆発に似た現象が起きるため日本は空間省直属の武装組織を2190年に認証し、決められた地域に1つの基地を建設しそこに部隊を置いた。1基地の戦力は5個戦車団(1個戦車団=戦車3両、歩兵30人・予備人員50人)と2個航空団(1個航空団=各種ヘリ5機・予備10機、戦闘偵察機3機・予備12機)これに加え海洋周辺及び海上の基地は1個艦艇団(1個艦艇団=航空母艦1隻、護衛艦4隻、各種ヘリ9機、艦載攻撃偵察機10機)
異空間振動波対処以外の出動は認められていない。武力の管理は日本が厳重に取り締まっており、他の2国は日本に認められた工場でしか生産を許されていない。日本国内には兵器関連工場及び基地、武力の保持はしていないとしている。
「現在遺跡より1km地点。ここからでも光が歪んでいるのを確認できます。指示は」
最寄の基地より出動した2個戦車団が検知地点ポイント142を捉え空間省に指示を仰いだ。
『まだ規模が拡大しつつある。十分に警戒しつつ500mまで接近。先程、一瞬だがレーダーに反応があった。これも今まで無かったことだ。気を抜くな!』
「了解。前進、距離500」
今までとは比較にならない程の数値を出しているからなのだろう、歪みはストーンヘンジの直径に迫っていた。
500mに到達する寸前、いきなり・・
『数値が跳ね上がった!警戒しろ!各自の判断で火器の使用を許可します!』
「変化を確認した。・・・・・昔のコミックかなんかで見たことあるぞ・・・。」
戦車の砲塔から顔を出した戦車団長がつぶやいた。
その歪みは大きさを増し直径は10mに迫り、中央から黒く変色していった。
すると一人の兵士が声を漏らした。
「まるで昔のアニメの”ゲート”みたいですね・・・」
戦車団長は歪みから目を逸らし、その兵士の方を見た。
「今なんて言ったん『ポイント142でレーダーに反応を確認!』
空間省からのいきなりの通信に驚き耳を押さえつつ歪みに目線をやると。
そこには、つい数秒前には無かった機械的なものが”立って”いた。
「て、停止・・」
声が震えているのは自分でも分かった。戦車団に停止の命令を出すと、皆動くことはもちろん、言葉を発することすらままならない様子だった。
世界が3つにまとまって平和を享受、悪く言えば平和ボケしていた現生地球人類にとって、これまでのように異空間振動波のような現象ではなく、そこにはっきりと物質として存在する得体の知れないモノが一瞬で現れたのだ。
その容姿とは、簡単に言えば”金属で出来た大きな人間”、巨人のようだった。ユニジアがこんなものを開発できるわけもないし軍事転用可能な技術の保持・使用は日本政府の認証無しではありえない。その日本は武力は持っていないし、噂に聞いただけでこのようなものを所有している訳が無い。
それはしばらく空を見上げていた。が、ゆっくりと人間で言うと首を動かし戦車団のほうを向いた。
それを見て戦車団長は我に帰る。
「ほ、砲弾装填!構えぇ!!」
他の兵士も戦車団長の声に引き戻され歩兵は携帯火器を戦車は砲身を”金属で出来た巨人”に向け照準をロックした。
しばらくこのままの硬直状態が続いた。
じっと睨んでいると、団長の乗っている戦車の通信兵が怯えた顔で話しかけてきた。
「団長・・・あれからと思われる通信が・・・・」
手汗がグローブの中で滲み出るのを感じた。
「か、貸してくれ・・」
そう言って砲塔の中に入り通信兵がつけていたインカムを恐る恐るはめる。
「こ、こちらはアジア欧州連合政府空間省直属武装組織だ。そ、そちらの所属を明かせ」
こういった状況での対処法など知る由も無く、昔見たアクション映画の台詞をまねるので精一杯だった。
返答は遅れて帰ってきた。
《ーーーーーーーーーーー》
理解できなかった。と、言うよりは聞いたことも無い言語のようなものだった。確かに人間のように声帯を震わせることで音が発せられる音で機械音声ではなかった。
どうでしたか?と言わんばかりに見てくる通信兵に正確な答えを返せずにいると、さっきと同じ内容と思われる声が返ってきた。
何も出来ずに固まっていると、アレが向こう側の何かと通信又は会話している音が聞こえてきた。
会話・通信が終わったのか通信が静まり返る。
するとインカムをつけていても聞こえる程の爆発音が団長の聴覚をつんざいた。
「なんだっ!?」
慌てて外の状況を確認しようと砲塔から顔を出す。爆発の発生源は容易に分かった。横十数mにいた戦車が爆発したのだろうタダの鉄くずになっていた。
それよりもさっきまで日が当たっていたのに陰になっている。出動は1300だったしまわりは高い建造物も無ければ今日は晴天だった。
ふと違和感に気付く。爆発したであろう見方戦車を中央に捉えた視界の端に黒いモノが移っている。さっきまでの状況を考え、思い付く限りのパターンを脳内で再現する。そしてある一つの一番可能性が高いであろう事象が導き出され、前進から嫌な汗が噴出す。
恐る恐る顔を上げると思い描いた通りの出来事が起きていた。
その”金属で出来た巨人”が太陽光を遮って影を作っていた。そして”金属で出来た巨人”の手には赤い輝きを放つ剣のようなものが握られていた。
その一瞬ですべてを理解した戦車団は自己防衛を開始した。
「てぇぇぇ!!」
爆発音の後、静まり返っていた小高い丘は火器の発射音と着弾音が響き渡る戦場に様変わりした。
「空間省へ!未確認物体より攻撃を受け反撃中!被害甚大、増援求む・・・聞こえてるか!?」
「ダメです通信モジュールの破損か妨害電波で通信機器がダウンしています・・・」
カチカチと通信兵が機器を弄るも反応は無かった。全速力で攻撃を回避しつつの会話はなかなか難しい。
やり取りをしている間に、戦車団の戦車は半数を失っていた。敵の圧倒的な機動力を前に成す術なく撃破されていく。
「撤退だ・・・・撤退ぃ!!」
撤退命令を出すも残っている数は戦車3両と歩兵数名だけだ。
戦車の出来る限りの速度を出して遠ざかろうとするが、敵は飛行能力を有しており、いともたやすく追いつかれ撃破されていく。
とうとう団長の乗る戦車だけになり最後が迫る。
最後を覚悟し目を瞑る・・・・・・・・・・・。
ガキィィィィィィィン
金属と金属がぶつかる大きな音がして、恐る恐る目を空ける。
と、そこには歪みから現れたであろう”金属で出来た巨人”と同じぐらいの高さのもう1人の金属の巨人が取っ組みあっていた。辺りを見回すと同じものが2体いた。
逃げろ!!と見方?かは分からないが守ってくれた金属の巨人に言われ、また最高速度で戦闘地域を抜け出す。
かなり距離をとり、周囲の安全を確保すると金属の巨人同士の戦闘に目をやった。
「団長・・・・・あれは・・・・」
戦車内から兵士が顔を覗かせ不安げに言った。
「ヒトガタ部隊・・・ただの噂だと思っていたが」
「ヒトガタ・・・部隊?」
「過去の日本近海への振動波出動に出た部隊から聞いた話で、遠く、数キロ離れたところに何か見て光学カメラで確認したらしい。その時撮った写真を見せてもらったがアレにそっくりだ・・・・・」
「3体の方ですか?」
「あぁ・・そうだ。日本ならやりかねん・・・・・」
そうこうしているうちに決着がつき損傷を受けながらも3体側が勝利し、金属の巨人を回収し、夕方の赤く沈みかけた太陽の方向へ飛び去った。その方向を目を凝らして見ていると一瞬巨大な何かが見えた気がしたが、よくわからなかった。
戦車が基地に無事辿り着くと空間省長官が迎えた。
何があった、何を見た、レーダーの反応はなんだったんだ。と質問攻めだった。しかし反応は1つだったらしい。要するに後から来た3体は映っていない。そのことを長官の話から理解した生き残りはアイコンタクトをかわし、口にすることは無かった。
まだまだ分からない事だらけだと思いますが。
次回でそれなりに分かるかと思います。