第二話『お買物』‐①
第二話『お買物』
時が経つのは早いもので、あれからもう一ヶ月以上がすぎた。この間、ネイルさんには、いろいろなことを教えてもらった。
人間として暮らすために、これは知っておいた方が、といったこと。時折、自分の身体や心に感じるしげきは、一体どういうものなのか、どうして起きるのか、などといったこと。これらの根本的な事柄に加え、村のことやネイルさん自身のこと。周りの人間関係についても話してくれた。
水の妖精だったころに、湖の水面から人間たちの遊んでいる姿や会話を聴いていたのが幸いした。おかげで言葉の壁を意識せずにすんでいる。ネイルさんと出逢った時も、まごつくことなくおしゃべりができた。もちろん、人の言葉を全て理解していたわけじゃない。だけど、ありがたいことに水の妖精も霊覚交信を使っている。この交信に使われている言葉は、天空の村に棲む全ての種が……霊覚交信を使える者という限定つきではあるけれど……理解できる。人であろうと、動物であろうと、霊体であろうと。本能的に持ちあわせている。この交信を使うことで会話にも困らず、人の言葉に対する足りない知識を深めることもできた。湖での経験と霊覚交信、ネイルさんから教えてもらったことがすんなりとわたしの頭の中に入ったのは、この二つがあったからこそだと思う。
「家にいるばかりじゃなくて、わたしもなにかやりたい」
そういったのがきっかけとなり、家事とか、買物のやり方を教えてもらう。最初はかなりまごついたものの、最近ではうまくこなせるようになったと自負している。
ある日のこと。わたしは聞いてみた。
「ネイルさん。この間、買物に行ったらね。小さな女の子が大きな男の子に、『お兄ちゃん』って呼んでいたよ。あれって名前なの?」
そういったら、ネイルさんは笑って答えた。
「ふふっ。ちがいますよ。多分、それは兄妹同士だと思います。兄妹って、この間説明しましたよね」
「うん。確か、同じ両親から生まれたこどもたちのことだったと思うけど」
「そうです。先に生まれた子は、あとから生まれた子からすれば、男なら『兄』、女の子なら『姉』にあたります。逆に、あとから生まれた子は、先に生まれた子からすれば、男なら、『弟』、女の子なら、『妹』にあたるわけです」
「『兄』だから、『お兄ちゃん』なのね。うん、判った」
「とはいっても、年齢が低いこどもが、それより高いこどものことを『お兄ちゃん』とか『お姉ちゃん』って呼ぶ場合もありますから、いちがい(一概)にはいえませんけどね。
でも、なんでそんなことが気になったんですか?」
「実はね。わたしも『ネイルさん』っていうより、『お兄ちゃん』って呼びたいな、って思ったからなの」
「それはまたどうして?」
「うぅん、どうしてって聞かれても……、なんとなく、かな。実は自分でもよく判らないの」
「ふぅぅん。……まっ、君ならそう思うかもしれません」
「どうして?」
「フローラ。君はたくさんの仲間たちからはなれてたったひとりでこっちに来ました。そんな君がだれかと強いつながりを持ちたいと思うのは当然です。それに、いっしょに暮らしてみて判ったんですが、君はやんちゃで甘えん坊みたいなところもありますよね」
「ええっ。そうかなぁ」
思わず腕を組んで考えこんでしまった。顔にもちょっと照れたような表情をうかべていたかもしれない。
「ふふっ」
わたしを見つめるネイルさんの顔に笑みがうかぶ。
「だとすれば、君が、『お兄ちゃん』と呼ぶのを好ましく感じるのも判る気がします。この言葉は名前以上に親しみを感じさせる呼び名だと思うからです。
とはいっても……、実のところ、今まで話したのは全部僕の思いこみにすぎません。フローラはどう思いますか?」
「わたしは……」
ネイルさんの言葉を想いだしてみた。そしてふり返ってみた。わたしという存在を。どんな風に考え、どんな風に生きてきたかを。
「……そうかも。……うん。きっと、そうだ」
(ネイルさんったら、まだちょっとしかいっしょにいないのに、わたしをいいあてている。わたしの自覚していない性格や心まで読みとってくれている。……なんだかとってもうれしい)
「ネイルさん」
わたしは改めて自分の願いを口にする。
「これからは『お兄ちゃん』って呼んでもいい?」
ネイルさんはわたしの言葉に、にっこりとほほ笑む。
「別にかまいませんよ。フローラが気に入った呼び名であれば」
(決まったぁ! それじゃあ、たった今から、わたしの目の前にいるのは)
「うわぁい! お兄ちゃん!」
「うわぁっ!」
わたしはうれしくなって、ネイルさん、ううん、お兄ちゃんをだきしめると、そのまま押したおした。
(この人は、わたしのお兄ちゃんだ。お兄ちゃん、大好き!)
「ちょ、ちょっと苦し……」
ばたばたと、もがいているお兄ちゃんの上で、わたしは幸せな気分にひたっていた。
そして……さらに数日経ったある日のこと。
今日は、お兄ちゃんとお買物だ。お兄ちゃんは病院の勤務を終えたあと、直接、市場へ行くという。だから、向こうで待ちあわせすることにした。
「そろそろ時間だな」
わたしは部屋の戸じまりを確認すると、げんかんのドアを開く。
「行ってきまぁす」
だれにいっているわけでもない。だけど、なんとなくいいたくなるこの言葉。
ドアにかぎをかけて、うちから外へ飛びだした。
「お兄ちゃん。早く来ないかなぁ」
待ちあわせ場所は市場の入り口。地面につき刺さった大きな丸太二本が門の柱となっている。見れば、『中央市場』の四文字が両方の柱に刻まれていた。
門をとおりぬけると、左右両側に多くの店がのき(軒)を連ねる。手前には赤や青、もしくは緑など、色とりどりの厚い布地を屋根とする『休けい所』なる家屋が並んでいる。その向こうには木造の建物群、さらにその向こうには、石をみがいたような外壁の建物群がつづいている。
食料品、衣料品、食器、などさまざまなものが売られているほか、飲み食いできる店も多くある。全てを見てまわろうとすれば、かなりの時間がかかるのにちがいない。
わたしは二人で決めた時刻よりも早くついていた。だけど、それをすぎてもまだ来ない。心配していると、上空から、おぉい、とさけぶ声が聞こえてきた。
「お兄ちゃん!」
「ごめんなさい。あとかたづけに手間どって遅れてしまいました。ずいぶんと待ったでしょう」
「ううん。わたしも今来たばかりなの」
(ちがうけど。思わず社交辞令な言葉を使っちゃった。人間関係は大切にしないとね)
「悪いけど、もうちょっと待ってくれませんか? 近くの空き地にアリアをおろしますから」
「判った、お兄ちゃん。わたし、ここで待っている」
「すぐにそこへ行きます」
お兄ちゃんはアリアに乗ったまま飛んでいく。でも空き地はここから目と鼻の先。本人がいったように、それほど待たされることもなく、わたしのところへやってきた。
「フローラ。お待たせしてすみませんでした」
お兄ちゃんの後ろでは、アリアが低い高さで飛びながら鳴き声をあげている。
「くぉーっ(じゃあ、帰るから)」「ありがとう、アリア」
お兄ちゃんとわたしが手をふる中、アリアは大空を羽ばたいていった。
「お兄ちゃん。帰りはどうするの?」
「歩いて帰りましょう。話をしていれば家につくのは、あっという間です」
「そうよね」
この市場が開かれているのは、中央区にある住宅街のど真ん中。それに加えて夕食どきともなれば、行きかう人の数が、そりゃあもう、はんぱじゃない。けんそう(喧騒)うず巻くその中で、ややもすればお兄ちゃんとはぐれてしまいそう。
『お兄ちゃん、あれ、なぁにぃ?』、『これ、なんに使うの?』、『へぇぇ。こんなものがあるんだぁ』、『ねぇ、あれを見てぇ。とってもきれい』などとはしゃぎまくりながらも、お兄ちゃんの腕をしっかりとだきしめていた。
「お兄ちゃん。これから、どこへ行くの?」
「今日はフローラが必要なものを買うために来ています。まずは……、そうですね。服屋へ行きましょう。フローラのせたけにあった作務衣を仕立ててもらわないと」
「でもお兄ちゃん。わたし、今着ているこの服、結構気に入っているんだけど」
「フローラ。それって湖の近くにあるごみ箱から拾ったものじゃありませんか? もちろん、ていねいに洗ってはいるようですが」
どきっ!
「どうして! どうしてそんなことが判るの? お兄ちゃん。ひょっとして見ていたの?」
「ちがいます」
お兄ちゃんは笑ったあと、説明してくれた。
「水の妖精が急に人間の姿になったんですよね。だったら服を着ているわけがありません。じゃあ、どこで調達したか。フローラは、『自分は「佐那」の湖にいた』といっていました。確か、あのあたりにはごみ置き場があったはず。となれば当然のぞいてもふしぎはない。そう思ったんですよ。それに服をよぉく見てください。ここやここ。それにここも。あちらこちらでほころびや、うすい部分ができていますよね。汚れだって、ほら、まだいくらかついているじゃありませんか」
「なるほどね。だけど、どうしても新しい服を買わないといけないの?」
「男ならそのままでもいいんですが……。
あっ、フローラ。向こうから歩いてくる女の子たちがいますよね」
「えっ。……うん、いる。なにかしゃべりあっていて、とても仲がよさそう」
「女の子の場合はね。せめてあれぐらいはきれいにしないと。身だしなみは必要ですよ」
「へぇぇ。そういうもんなの?」
「そういうもんなんです」
「お兄ちゃん。買うのはいいけど、この服は? ごみ箱行きになっちゃうの?」
「捨てなくてもいいですよ。自宅であれば問題ありません。どんどん着てください。
その服をふだん着にして、これから買う服はよそいきにすればいいじゃありませんか」
「判った。じゃあ、そうする。それで色なんかも選べるの?」
「もちろん。せっかく仕立ててもらうわけですから。色にかぎらず自分の好みにあうよう、気のすむまで店員さんとよく相談してくださいね」
「うん。お兄ちゃん、わたし、なんだか楽しくなってきちゃった。でもどこで買うの?」
「あそこですよ。……いけない。話をしていたら、すっかり日が暮れてしまいました。さぁ、早く行きましょう」
「うん!」
わたしとお兄ちゃんは急いで服屋の中へ飛びこんだ。
「にゃうぉぉん! ぷんぷん! ぷんぷん! にゃうぉぉん!」
「ミアンさん……」「ミアン……」
「にゃうぉぉん! ぷんぷん! ぷんぷん! にゃうぉぉん!」
「怒っていますね」「怒っているわん」
「しかもねこの言葉で遠吠えしています」「しかもねこの言葉で遠吠えしているわん」
「我を忘れていますね」「我を忘れているわん」
ごっごっごっごっごっ! ごっごっごっごっごっ!
「せなかから怒りの炎が出てきましたね」「せなかから怒りの炎が出てきたわん」
「めらめらと立ちのぼっていますね」「めらめらと立ちのぼっているわん」
「ふにゃあああ!」
「怒り狂いだしましたね」「怒り狂いだしたわん」
「どうしたんでしょうね?」「どうしたのかな?」
「判りませんね。ねこじゃありませんから」「判らないわん。ねこじゃないもの」
べろぺろぺろべろべろっ! べろぺろぺろべろべろっ!
「あっ、毛づくろいを始めましたよ」「あっ、毛づくろいを始めたわん」
「ものすごい勢いですねっ」「ものすごい勢いだわんっ」
べろぺろぺろべろべろっ! べろぺろぺろべろべろっ!
べろぺろぺろべろべろっ! べろぺろぺろべろべろっ!
…………。
ぺろぺろぺろっ! ぺろぺろぺろっ!
「あっ、勢いが落ちてきましたよ」「あっ、勢いが落ちてきたわん」
ぺろぺろぺろ。ぺろぺろぺろ。ぺろぺ……。
くるっ。
「あっ、こっちを見ましたよ」「あっ、こっちを見たわん」
くるりん。
「あっ、せなかを向けましたね」「あっ。せなかを向けたわん」
「しゃい、なんですね」「しゃい、なんだわん」
ぺろぺろぺろ。ぺろぺろぺろ。…………ぺろっ。
くるりん。
「ふぅ。やっと終わったにゃあ。
どうにゃん? だいぶきれいになったにゃろう?」
「はい、きれいになりましたね」「うん。きれいになったわん」
「にゃろにゃろ? にゃあんか、とてもすがすがしい気分にゃあ」
「ミアンさん、よかったですね」「ミアン、よかったね」
「ところで……」
「なんにゃ? ネイルにゃん」
「先ほどまで、なにやら怒っていたようですが……」
「うんにゃ? そうにゃったっけ?」
「うん。アタシも怒っているみたいに思えたわん」
「ミーにゃんも?
ネイルにゃん、ミーにゃん。そういうことは早く聞いてくれにゃいと。忘れてからいわれても返す言葉がないのにゃん」
「すみません」「ごめん、だわん」
「ウチはねこなのにゃよ。そこんところはちゃんと気をつかってほしいものにゃん」
「まぁ、ねこですからね」「まぁ、ねこだものね」
「でもねぇ……。ミアンさん」「でもねぇ……。ミアン」
「どうしたのにゃん? ネイルにゃんもミーにゃんも急に怖い顔ににゃって」
「それじゃあ、待つだけむだだったんですね」「それじゃあ、待つだけむだだったわん」
「ネイルにゃん、ミーにゃん。それは自業自得というものにゃよ」
「時間を返してください。ぷんぷん!」「時間を返してほしいわん ぷんぷん!」
「ど、どうしたのにゃん? 急に怒りだしたのにゃけれども」
「そりゃあ怒りますよ」「そりゃあ怒るわん」
「さんざん人を待たせておいて」「さんざん妖精を待たせておいて」
「そうにゃったのにゃん。すまないことをしたにゃあ。
でもにゃ。ネイルにゃんが次の話を終えるころまでには想いだせると思うのにゃん。
にゃから、それまではじぃっと待っていてほしいのにゃけれども」
「こんな話を次回もつづけるつもりですか?」「こんな話を次回もつづけるつもり?」
「まっ、いいじゃにゃいか。どうせ、ぬるぅぅいお話にゃもん」
「まっ、そうですね」「まっ、そうだわん」
「ミーにゃん。そこを、のきにゃさい」
「だめだわん。ここを動くわけにはいかないわん」
『どうしましょう。わたしをせにして、可愛い妖精が可愛い化け猫の前に立ちふさがっているぅ』
「ミーにゃん。判っているのにゃろ。ミーにゃんの後ろにあるお皿に乗ったお菓子。たった一個しかにゃいあのお菓子が、大きさからしてもウチのものであることを」
「違うわん。大きさはミアンのものでも、これはアタシのものだわん」
『きゃあ! わたしを自分のものにしたくって可愛い霊体さんたちがいい争いを。
……おいしいって罪なのね』
「にゃんてわがままを。ネイルにゃんがミーにゃんとウチに造ってくれたお菓子は同じ数。しかもにゃ。ほら、ミーにゃんのお菓子が乗っていたお皿は空っぽ。つまり、自分の分を既に食べてしまったということにゃん。
どうにゃ? ミーにゃん。ウチの話した内容に間違いはあるのにゃん?」
「……そうね。それは間違いはないわん」
「にゃったら、ミーにゃんにはあのお菓子を自分のものだと主張する根拠はまったくないことににゃる。それにゃのに何故、自分のものにゃと?」
「確かにミアンのいうとおり、自分の分は食べちゃったわん。個数も同じだった。でもね。大きさが全然違うじゃない。これじゃあ、あまりにも不公平。平等というのであれば数じゃなくて、全体の量を基準とすべきよ。それにね。アタシは育ちざかりなの。ミアンのお皿から一個ぐらいもらっても、ばちはあたらないわん」
「にゃんていう身勝手なものいいにゃん。それにゃらウチだって育ちざかりにゃ」
「ふん。やれやれ、だわん。何百年も生きている化け猫に育ちざかりもくそもないわん。一体なにをいっているのやら」
「それをいうにゃら、ミーにゃんも同じじゃにゃいか」
「あのね、ミアン。同じ何百年でも、アタシの場合、ほとんどが幼年期じゃない。アタシの方が本当の育ちざかり。ミアンの育ちざかりはにせものよ。なのに同一視するなんて。ちゃんちゃらおかしいわん」
「にゃからって、ウチから食べものを取りあげるのを黙って見すごすことはできないのにゃん。何度もいっているようににゃ。ウチにとってお食事は聖なる領域。たとえ親友のミーにゃんといえども、立ちいることは断じて許されないのにゃん」
「ミアン。いつまでにらみあってもらちがあかないわん。ここは実力で決める。それしかないわん」
「ミーにゃん。いつものにらめっこではすまないのにゃよ。それでも」
「もちろん、望むところだわん。新規に開発した『超台風型妖力爆風波』を食らうがいいわん」
「ウチだって負けてはいけないのにゃよ。こちらもひそかに開発していた『ねこねこ超破壊型砕撃破』が完成したばかりなのにゃん」
「どうやら、あとにはひけないみたいね。だったら」
「うんにゃ。やるしかないのにゃん」
ぐぐっ。ぐぐっ。
『や、やめてぇ! いくらおいしいからってわたしのために争わないでぇ!』
「それにゃらいくにゃよぉ……」「アタシもぉ……」
「はぁぁい、お二人さん。お待たせしました。お菓子のおかわりです。焼きたてですが、それほど熱くはないのですぐに食べられますよ」
すっ。すっ。
「こっちのお皿がミアンさんのお菓子で、そっちのお皿がミーナさんのお菓子です。もちろん、お二体が食べやすい大きさに造ってあります。
さぁ、今が食べごろです。お早くお召しあがりください」
くるっ。
「にゃ、にゃんと、こんにゃにも!
ネイルにゃん、ありがとうにゃん。ネイルにゃんの愛を心の底から感じるのにゃん」
くるっ。
「ミーにゃん。ウチらは親友同士。あのお菓子はミーにゃんにつつしんで進呈するのにゃん。そんでもってウチは」
くるっ。
ぱくぱくっ。ぱくぱくっ。
『あれっ?』
「あっ。待ってよぉ、ミアン。アタシもそっちが食べたいわぁん」
ぱたぱたぱた。
「ええと……、アタシの分はこれねっ」
ぱくぱくっ。ぱくぱくっ。
「ミーにゃん。やっぱり、できたては美味しいにゃん」
「ミアン。やっぱり、できたては美味しいわん」
ぱくぱくっ。ぱくぱくっ。
『あれあれっ? わたしは? わたしはここにいるじゃない。それなのに……』
「いい食べっぷりですねぇ。……おや、一つ残ってしまいましたか。それじゃあ」
すっ。
『うわぁっ! つかまれちゃったぁ。しかも男なんかにぃ。
やめて、やめてよぉ。この身体はあの子たちのものなんだから。元のお皿に戻してぇ』
「いただきまぁす」
『早く、早くお皿に戻し……、あっ!』
ぱくっ。むしゃむしゃ。
「うぅん。自分が造ったものに、こんないい方をするのもなんなんですが……、
さめてもおいしいですねぇ」
むしゃむしゃ。
『……こ……ん……ち……く……し……ょ……う…………』
「ふぅ。ごちそうさま」