第十三話『友との再会』
第十三話『友との再会』
わたしは今、水の妖精たちが泳ぎまわる湖の中をただ一体さまよっている。すると、どこからか、わたしを呼ぶ声が聞こえてきた。
「フローラ!」
「えっ!」
わたしは思わず声のするほうへとふり向く。
「ナーニャ! それに、みんなも!
とても信じられない。よく、あんな流れ星にぶつかって生きのびられたね。一体どうして?」
そこにはナーニャをふくむ、なじみの顔が並んでいた。
「今ごろ、そんな風におどろかれてもねぇ……。まぁ、いいけど。
確かに流れ星の『ぎせい(犠牲)』になった者は多かったわ。あたしもあれが水面へ近づく際の圧力を食らって、ふっ飛ばされちゃったの。水の『たて(盾)』がなければ今ごろ、どうなっていたか。まぁ、幸い無事だったけどね。
あたしの落ちた先って水の妖精でいっぱいだったわ。過密状態でだれもが動くに動けないありさま。そんな中、流れ星が落ちてきて、湖一帯が『げきしん(激震)』に見まわれたの。もうだめかと思ったぐらい。ところが、よ。今度は水だけじゃなくて、周りにいた水の妖精たちもぐうぜん、『たて』となってくれてね。それで助かったってわけ。ここにいるみんなも同じようなものらしいわ」
「へぇ。意外と悪運が強いのねぇ。たいしたもんだぁ」
ぱちぱちぱち。
わたしはみんなの『けんとう(健闘)』を祝してはくしゅ(拍手)を送った。
「悪運って……。変わっていないわねぇ、口の悪さは」
あきれた口調のナーニャ。
(んもう! だれのことをいってんのよぉ)
「それはおたがいさまってやつよ」
「いえいえ。あたしなどとてもとても。あなたさまの足元にもおよびませんわ」
「その言葉、そっくりお返しするね」
「そんなぁ。ごけんそん(謙遜)もほどほどに」
「わたしのはね。だれかさんにきた(鍛)えられたからよ。そうよね? だれかさん」
「ほらぁ。そうやって……ふふっ……いたいけな乙女をいじめないでくださいましな」
「だからそれも……ははっ……見習っただけよ」
「ふふふっ」
「はははっ」
(ひさしぶりだなぁ、こういうの)
なんかうれしい。ナーニャの笑顔が、自分もそうだと語っている。
「打てばひびく、か。ふふっ。本当に楽しいわ、あなたとの会話って。
生きていてくれてありがとう」
「えっ」
不意に本心めいたものを告げられるとわたしは弱い。多分、水のほおに赤みがさしたはず。
「ふふっ。やっぱり変わっていないわねぇ。安心したわぁ。
さぁて。あたしたちの話はこれぐらいにして、と。
フローラ、あなたこそ、どこに行っていたのよ。長い間、姿を見かけなかったから、てっきり死んじゃったものとばかり思っていたわ」
(長い間? はて?)
「えっ。あれからどれくらい時間が経っているの?」
「もう一年ぐらいにはなるわ。フローラ。本当に一体なにがあったの?」
「そんなに!
ナーニャ。わたしは気を失っていたみたいなの。ついさっき、目がさめたばかりよ」
「今までずぅっと?」
「そう、ずぅっと、って……あれっ?」
(おかしいな。なんか記憶の一部にぽっかりと穴があいているような気がするんだけど)
なんのかんのといっても、いい友だちだ。わたしがめずらしく考えこむ仕草をしたせいだろう。ナーニャの顔に心配そうな表情がうかんだ。
「そうだったの。ずいぶんと長く意識がもどらなかったのね。でもまぁ、無事でなにより」
「うん。……あれっ?」
「どうしたの? フローラ」
「だれかが泣いている声が聞こえる。ちょっと行ってくるね」
「ま、待ってよ、フローラ。そんなのどこにも」
呼びとめる友を後ろに、わたしは泣き声がするほうへと向かう。じゅうおうむじん(縦横無尽)に泳ぎまわるたくさんの水の妖精たちを、おしのけ、おしのけ、しながら。
「ええと、確かこちらから……、いたっ!」
それは小さな水の妖精だった。女の子で生まれたばかりみたい。なにかを求めるように泣いていた。
「おじょう(壌)ちゃん。ひとりぽっち?」
「うん」
「そうか……。ねぇ、わたしたちのところに来ない?」
彼女はわたしを見つめた。出会って間もないにもかかわらず、顔の表情が不安から安心へと変わっている。
(わたしってこどもにしんらい(信頼)されやすいのかなぁ)
などと考えていたら、
「お姉ちゃん、連れていって」と手を差しだしてきた。
(本当にそうかも)
「じゃあ、行こう」
そういってわたしは彼女の手をにぎった。
「あっ!」
しゅんじ(瞬時)に、彼女の心にふれた。わたしに対する愛しい気持ちや、いっしょにいたいと思う気持ちが次々と伝わってくる。
わたしの頭にとつぜん、空白になっていた部分の記憶が、なだれ(雪崩)のようにおしよせてきた。
「そうだ。わたしは、ついさっきまで人間だったんだ。『お兄ちゃん』と呼んでいたネイルさんや、その仲間たちと暮らしていた」
わたしの中でそのころのことが次々と想いだされてくる。最後の記憶まできた時、わたしには彼女がだれなのか、判った気がした。
わたしは見ていた。さよならをいって、お兄ちゃんの顔が視界から消えようとする寸前、ひとつぶのなみだが水面に落ちたことを。
「そうか、あなたは」
(あのなみだが水の妖精になったんだ)
いいしれぬ感動が、わたしの心をかけぬける。気がついた時、わたしは彼女をしっかりとだきしめていた。
(お兄ちゃんが彼女をわたしに与えてくれたんだ)
「ねぇ、お姉ちゃん」
「なぁにぃ? おじょうちゃん」
「あたち、名前がないの。お姉ちゃん、名前をつけてよ」
「わたしが? いいよ、つけてあげる。あなたの名前はねぇ……」
(ここはしんちょう(慎重)に決めなきゃ)
いくつもの名前が頭にうかんだ。自分の思いと照らしてみて、『これじゃない』『あれもちがう』と消していく。とどのつまり、最後に残ったのは。
「フローネル。それがあなたの名前よ。いぃい?」
「判った。あたちの名前はフローネル。覚えた」
わたしとお兄ちゃんの名前の一部をあわせ持つ。そんな名前にしたかった。いろいろ迷ったあげくにたどりついたのが『フローネル』。気にいってくれるかどうか不安だったけど、彼女の笑顔を見てほっとした。
(喜んでもらえたみたい。よかったぁ)
わたしは再びフローネルをだきしめた。
「でも、なぜ?」
ふとあることに気がつき、わたしは首をかしげる。
「水の妖精にもどった今、人間だったころの『きおく(記憶)』は身体となっていた水とともに、はなれてしまったはず。それなのに、どうして想いだせたんだろう?」
とつぜん、わたしの周囲が光でおおわれた。
「い、一体なんなの! これは!」
おどろくわたしの心に霊覚をとおして声が伝わる。
「わたくしめの名は『佐那』。この湖の妖精です」
「『佐那』? じゃあ、あなたが、わたしたち『水の妖精』の集合体なの?」
「そのとおりです」
(わたしたちの造りだした意志がわたしに語りかけている……。なんかふしぎな気分)
「あなたが人間として生きたころの記憶は、あなたと一体化していた水の中にありました。その水はこの湖に落ち、わたくしめの記憶とひとつになったのです。あなたはわたくしめとつながっています。それゆえ、あなたは再びその記憶を手にすることができたのです」
「そうだったの」
(うれしい。わたしの想い出はちゃんと残っていた)
「あなたが体験した記憶は、あくまでもあなたご自身の宝物。ゆえに、あなたが望まないかぎり、その記憶が消えることはありません。また、わたくしめの記憶の中にあるからといって、勝手にいじられる、といった心配も無用です。ご安心ください」
「そう。よかったぁ。
ねぇ、『佐那』。これからもこうやって、あなたとおしゃべりができるの?」
「今、話したとおりです。わたくしめは、あなた方とともにあります。『佐那』と声をかけてくれさえすれば、いつでも」
「へぇ。なんか楽しくなってきちゃった。それで『佐那』は、相手が『水の妖精』であればだれでも、わたしと同じように話をしたり、記憶を共有したりすることができるの?」
「いいえ。あなた以外の『水の妖精』では無理です。わたくしめに気がついたり、声をかけたりするだけの霊力を持ちあわせては、いませんから」
「じゃあ、わたしは?」
「あなたには呪がかけられています。『保』と呼ばれる呪で、霊力をできるだけ温存するために使われるもの。水の妖精にもどった今でもほかの者より多くの霊力を保ったままでいられるのは、そのためです」
「呪が! でも一体だれが……。あっ、ひょっとして!」
「気がついたようですね。あなたが、『お兄ちゃん』と呼んでいた人間がかけた呪です。あなたが、『少しでも長く人間としていられますように』との思いから」
「お兄ちゃん……」
(お兄ちゃんだけじゃないよ。わたしだって、もっと人間の姿でそばにいたかったもの)
わたしにはお兄ちゃんのやさしい心がいまさらのように感じられる。
(会いたい。会ってだきしめてほしい。でも……、もうそれはかなわない)
「それじゃあ、お兄ちゃんのかけた呪は元の姿のほうに効いていたってこと?」
「ええ。そのとおりです」
「で、たくさんの霊力を持っているから、こうしておしゃべりができると」
「いいえ。ほかにも霊力自体が強くなければ無理です」
「それもわたしにかけられている呪のせいなの?」
「直接、ではありませんが、『保』の呪が関係しているのもまた事実です」
「というと?」
「今、この湖には二つの霊力が存在します。ひとつはもちろん、ガムラの霊力。もうひとつは、湖の底深くにしずんだ流れ星サタンからあふれ出ている霊力。ふつう、水の妖精は前者の力しか取りこめません。ところがあなたは両方を取りこめるし、使うこともまたできるのです」
「二つの力を? どうしてそんなことが?」
「本来であれば水の妖精にもどったしゅんかん、あなたの身体からサタンの霊力は消えるはずでした。ところが『保』の呪にかかったままのため、ガムラの霊力とともに残ってしまったのです。今、あなたの中では異なる二つの霊力がこうご(交互)に作用しあい、今までにない新たな霊力を生みだしつつあります。これがガムラの、そしてサタンの霊力を引きよせているのです」
「わたしの中で新たな力が……」
「すでにあなたは、ほかの水の妖精とは、質、量ともに、はるかにこえた霊力を手にしているのです。しかも今後、この力はさらに上昇していくと思われます。おそらく、そう遠くない未来にあなたはわたくしめから飛びだしていくことでしょう。未知の強い力を持った一体の霊体として、わたくしめと対等か、それ以上の存在になっているのにちがいありません」
(うっそぉ!)
わたしは思わず身体を目でなめまわした。でも見たかぎりではいつもの姿でしかない。
「そういわれても今ひとつ、実感がわかないのだけど……。
ねぇ、『佐那』。以前のような水の妖精にもどることってできるの?」
「はい。今すぐであれば。これ以上進めば、新たな霊力の形が整い、安定した状態へと移行することになるはずです。そうなってしまったら、呪のあるなしは、もはや、なんの意味もなしません。進化の道をたどるのみで、あともどりすることはできなくなります」
「そう……」
過ぎたるはおよばざるがごとし、ともいう。
(身に相応の力を持つべきかな? それとも……)
「どうしますか? フローラさん。お望みとあらば呪を解いて差しあげますが」
「ちょっと待って」
それほどよくない頭であれこれと考えてみた末に、わたしが口にした答えは。
「ううん。その必要はないよ。わたしも『佐那』とおしゃべりがしたいし。ひょっとしたらこの力が、みんなの役に立つことだってあるかもしれないから」
「そうですか。実はわたくしめも、この呪を解く気には、なれません」
「えっ。そうなの?」
意外な言葉だった。
(てっきり、『元におもどりなさい』っていわれると思ったのに)
「理由は二つあります。
一つは、誠に自分勝手な理由で、はなはだきょうしゅく(恐縮)なのではありますが……、
『保』の呪のおかげでわたくしめに、あなたという話し相手ができたからです。湖の精霊レイナスさま以外、ご相談できるお相手がいなかったわたくしめにとってあなたは、強い味方となりえる存在です。
もう一つは、呪に秘められた『思い』にあります。それは悪意などでは決してありません。あなたを守りたいとする、やさしさに満ちた善意なのです。あなたが、人間の世界で愛されていたことがよく判ります。そのことをいつまでも覚えていてほしい。そう思うからです」
「『佐那』……」
「フローラさん。あなたはいずれ、『精霊』と呼ぶにふさわしい霊力を持つことでしょう。その際はレイナスさまから『水の精霊』の称号をたまわることになろうかと思われますが、よろしいですね?」
「わたしが水の精霊……」
(といわれてもなぁ。今ひとつ、ぴん、とこないや)
「よろしいですね?」
再び返事をうながす声を心に感じた。
「えっ。あっ、はい!」
あわてて答えると、なにやらほっとしたような声が返ってきた。
「快い返事をいただき、ありがとうございました。これでわたくしめの話はひとまず終わりとさせていただきます。
フローラさん。これからもなにかありましたら、お声をおかけください。そしたら、また言葉を交わすこともできましょう」
「うん。『佐那』。いろいろと話をしてくれてありがとう」
「ではフローラさん。わたくしめは、これにて」
「じゃあ、また」
周りの光りが消え、いつものあお(碧)き色で満ちた湖へともどった。
『佐那』との会話のあと、わたしはひとつの希望を見いだしていた。
わたしは『全霊覚醒』の呪をとおして、お兄ちゃんの引きだせる最大の霊力がどれほどのものかをまのあたりにしている。あの力と、わたしの中で育ちつつある新たな力。この二つがそろえば、お兄ちゃんがわたしを認識するのも決して不可能じゃない。お兄ちゃんと会うことが夢じゃなくなる。ただそれには……、わたしがどれだけの力を持てるようになるのか。お兄ちゃんが自身の中にねむっている力をどれだけ引きだせるか、で決まる。これからのわたしたち次第で、できるかできないか、早いかおそいかが決まる。
残念ながら今はとても無理。でも、『希望』らしきものは生まれた。
(お兄ちゃん。会える日が来るのを楽しみにしているからね)
いのりにも似た気持ちでそう思った。
あとは……そう。『佐那』が口にした言葉のひとつも、心のどこかでひっかかっていた。
(水の精霊か……。どこかで聞いたような気がする。どこだったかなぁ)
もどってきた記憶をたよりに過去をあれこれとたどってみる。
(あっ、そうだ。あの時だ)
川でおぼれそうになったことがあった。その時に助けてくれた、わたしと同じ名前で同じ顔の精霊さんが、自分のことをそう呼んでいた。
(あれはわたしだったのかも……。でも、わたしがわたしを助けるなんて……)
がく然とする思い。だけど、もしそうなら、彼女は過去の自分と会ったことになる。すると、いつかは、わたしが過去のわたしと会うことになるのかも。一体、どんな気持ちになるのだろう。今思えば彼女は、『わたしと入れかわって。お願い!』っていいたいのを、ぐっとこらえていたんじゃないかな。あのころのわたしなら、まだ半年以上はお兄ちゃんとすごすことができるのだから。
もし、わたしだったら……口にするのだろうか。
(……いや。やっぱり、いわないな)
もし、いうとしたら、『今のお兄ちゃんとの暮らしを大切に、ね』、だと思う。だって過去のわたしだって、やっぱり、わたし。
(楽しい想い出を造らせてあげなきゃ)
悲しみを覚えながらも、そう思った。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
気がつけば、目の前にいる小さな水の妖精が、自分の指でわたしのほおをなぞっている。
(あれっ。わたしったら泣いている)
「ううん。なんでもないの」
(いやだぁ。はずかしいところを見せちゃったなぁ)
想い出はある。それが判っただけで十分。今、わたしがやらなければならないのは、過去をふり返ることじゃない。この子や仲間たちとともに未来へと向かうことなんだ。お兄ちゃんとの再会も、めざす未来のどこかにあると信じればいい。
(そうだよね、お兄ちゃん)
わたしは彼女の頭をなでながら、未来への思いをめぐらせていた。
「それだけ判れば……それでいい!」
ナーニャたちがやってきた。
「どうしたのよ。とつぜん、こっちにやってきたりして。……あれっ。その子は?」
「えっ。ああ、彼女はね」
(フローネルは、お兄ちゃんがわたしのことを思って流したなみだから生まれた。だから、わたしの子といってもいい。だけど、ちょっと照れくさいし、わけを話すのもめんどう。
……どうしようか)
そんな、なやみをいだいているわたしの手をとり、フローネルは声をかけてくる。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
(お姉ちゃん……か。よぉし、これでいこう!)
わたしの心は決まった。
「えへん。この子はね。わたしの大事な妹なの。だから、みんなも仲よくしてね」
わたしの言葉を聞くやいなや、ナーニャを中心に妖精たちが集まってなにやらひそひそ話を始めた。
「ええと……。ねぇ、ナーニャ。なにを話しているの?」
「ちょっと静かになさい、フローラ。今、とりこみ中なのよ」
おこられた。会って早々とおこられた。
(仕切り屋なところも短気なところも相変わらずだなぁ)
しばらくすると、さっきおこったナーニャが『自分が代表』とばかり、ずずずいっ、と前に出てたずねてきた。
「ねぇ、フローラ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「なぁに? ナーニャ」
「『妹』ってなに?」
「うっ!」
(しまったぁ! ここに『妹』なんて『がいねん(概念)』はなかったっけ。
どうしよう。『血』の話なんかしてもややっこしくなるだけだろうし……。
あっ、そうだ!)
「そ、それはね。『より親しいあいだがら(間柄)』って意味よ」
わたしは苦しまぎれにしゃべる。これがいけなかった。
「そう? なら、あたしも、よね」「わたくしも」「僕も、だ」「わしも」…………。
老若男女。さまざまな妹が一気にできてしまう。
(うわぁ! なんかすごいことになっている。こんなに『妹』なんていらない!)
「ち、ちがうのよ。『友だち』と『妹』って根本的にちがうの」
「へぇ。それで? どうちがうっていうの?」
わたしはナーニャをふくむ友だちにつめよられている。
「ねぇ、フローネル」
「なに? お姉ちゃん」
わたしたちは小声で話す。
「とりあえず……にげよう」
「そうだね」
わたしはフローネルをだきかかえ、一目散でにげ出した。
「こらぁ! 待ちなさい、フローラ。あたしも『妹』じゃない。なんでにげ出すのよぉ!」
後ろで、どどどどどぉっと、自称『妹』たちが追いかけてくる。
(お兄ちゃん、助けて!)
水の妖精たちがひしめきあう中、わずかなすきまをくぐってにげまわる。
(どうかつかまる前に、うまい説明を考えだせますように)
気がついてみたら、わたしはいつもの日常にもどっていた。




