第八話『半年おくれの歓迎会』‐②
「うっ……ここは」
やっと気がついたみたい。レミナさんは目だけをきょろきょろと動かして、あたりを見まわしている。ぽやっ、とした表情から察するに、本当に見えているのかどうかもあやしい。それでも、ある一点まで来ると、ぴたり、と、とまった。
「ネイル……がいる」
血の気を引いたような、といういい方がぴったりだった顔に赤みがさし、ほんのりと笑みまでうかんだ。
(お兄ちゃんを見て安心したんだ。たよりになるんだな、お兄ちゃんは)
「大丈夫ですか、レミナさん」
「ネイル、あちきは……。どうして、ここに……」
レミナさんは、よろよろと上半身を起こしたものの、すぐにたおれそうになる。お兄ちゃんは、『おおっ、と』って声を出しながら両手で支えた。
「レミナさん。フローラから聞いたんですが、あなたは自分の力で大岩を粉々にしたのだそうですよ」
「そういえば……」
どうやら、想いだしたようだ。うんうん、とうなずくレミナさん。
「でもさ。どうしてたおれちゃっているの?」
まるでひとごとのように話している。
「僕たちがここにかけつけたちょうどその時、岩の欠片があなたの頭にぶつかるのを見ました。そしたら、こう、ばたん、と」
手ぶりも交えて、お兄ちゃんは判りやすく説明している。
「頭に……」
レミナさんは自分のひたいに手を置く。
「包帯がまかれている……ってことは、あちきはけがを?」
「はい。かなり出血していましたね。あれでは、気を失っても無理はありません」
(お兄ちゃんのいうとおりだけど……、あれって本当にレミナさんがこわした大岩の欠片なのかなぁ。もし仮にそうだとすると、もどってくるのにかなりの時間がかかったことになる。一体どこまで飛んでいったんだろう。……『宇宙』? まさか、ね)
「けがなんかしたんだ……。ネイル、それで? けがはどんな具合なの?」
「見た目と、あと霊覚で調べたかぎりでは、たいしたことはなさそうです」
「ねぇ、傷ができたんだよね。これって残るの?」
そっちの方が重要とばかりにたずねてくる。
(うんうん。判る判る。女の子だもの)
「残りますが、近くで見てもそんなに目立たないと思います。気になるようなら相談に来てください。整形って手もありますからね。きれいに消せますよ」
「ふぅっ。よかったぁ」
彼女は安堵したような表情をうかべた。それに対し、お兄ちゃんは真顔で、『安心するのはまだ早いです』と注意をうながす。
「レミナさん。とりあえず、この場でできうるかぎりの処置はほどこしました。ですが、完全とはいいきれません。僕としては、セレン先生の精密検査を受けるよう、強くお願いしたいところですね」
「そうかぁ……。判った。ネイルがそういうなら数日中にでもセレンにみてもらうよ」
「その方がいいと思います。……ところで」
お兄ちゃんの顔が呪医から、年下の友だちに変わった。レミナさんとお兄ちゃんは学生時代、センパイ、コウハイ、の間がら。理由もないのに追いかけまくられて大変だったらしい。それを助けたのが、セレンさんであり、ラミアさんであり、マリアさん。いわゆる、お姉ちゃん組と呼ばれたセンパイたち。これがきっかけとなって、お兄ちゃんと彼女たちの間で友だちづきあいが始まったという。
(判る気がするなぁ。お兄ちゃんって小さいころから可愛かったもの)
「うん? なにかな?」
「大岩を放りなげたりこわしたりと、相もかわらずぼうじゃくぶじん(傍若無人)なふるまいをしておられるようですが」
「そんなぁ。ほめなくたっていいよぉ」
なぜか顔を赤らめるレミナさん。それに対し、『ほめてなんかいません』と、ため息をつくお兄ちゃん。はいた息に苦労のあとがしのばれる。はた目から見れば、どっちが年上か判らない、といったありさま。
「前から聞こうと思っていましたが、その行動になにか意味でもあるんですか?」
「あるよ、ネイル。大きな意味が」
「へぇっ。それって一体?」
すかさず返してきたレミナさんの言葉に、お兄ちゃんは興味をそそられたみたい。目をきらきらさせている。
「『打倒! ラミア!』だよ。この精神を忘れたくなくてやっているのさ」
「はぁ?」
お兄ちゃんの顔に困ったような表情がうかぶ。ややあって、
「……ねぇ、フローラ」と、いつになくやさしい笑みをうかべながらたずねてきた。
「なぁにぃ? お兄ちゃん」
もちろん、わたしも、とびっきりのやさしい笑顔を返した。
「レミナさんのいっていることって理解できます? もし、できるなら、僕にも判るように説明してくれませんか? 直接聞いても判りにくいことが多くて」
(そんなことを聞かれてもなぁ)
「お兄ちゃんが判らないものを、わたしが判るわけないでしょ?」
「でも、とりあえず女の子同士だし」
「といわれても。どうして話のとちゅうで『ラミアさん』が出てくるのか、わたしにもさっぱり判らないんだけど」
「ちょっとネイル!」
なぜか、レミナさんはうでを組んで、ふくれっつらをしている。
「話が終わるまでは、おしゃべりはつつしんでほしいね」
「あっ、すみません」
お兄ちゃんをわたしの顔を見て、ぺろっと小さく舌を出す。
「フローラ。さわらぬ神にたたりなし、とか。おとなしく聞いていましょう」
「それがいいかもね」
わたしたちはレミナさんの言葉に耳をすませた。
「ふふん。どうやら、二人とも、あちきのいったことがよく飲みこめていないみたいだね。今日はちりょうもしてもらったし、ふんぱつして、どんな質問にも答えちゃうよ」
「レミナさん。くれぐれもいっておきますが、ちりょう費は『ただ』でじゃありませんよ。あとでせいきゅうしますから、かくごしておいてください」
「ええっ!」
レミナさんがおどろいたような表情をうかべた。お兄ちゃんはさらにたたみかける。
「判っているとは思いますが、今日のは『きんきゅうちりょう』ですから。その分、お高くなっています。よろしいですね」
「ええっ! そんなぁ!」と、おおげさ、ともとれるくらいの大きな声を張りあげる。
「レミナさん。いちいちおどろくふりをするのはやめてもらえません? いわなくったって判っているでしょうに。年がら年中、病院の休けい室で、この手の話をセレン先生から聞きだしていることは、百も承知ですよ」
「……ちぇっ。ネイルって、ずいぶんと口やかましくなったな」
レミナさんが、ぼやき、ともとれる言葉を、小声でぶつぶつと、つぶやいている。
「それでも、場合によっては減額がないこともありません」
お兄ちゃんは、一転、期待をさせるような言葉を口にする。
「レミナさん。どうして今回のようなことが起きたのか教えてください」
「本当! 本当に減額してくれるの?」
レミナさんの目が、きらきらと、まるでお星さまのように輝いている。
「今いったように、『場合によっては』、です」
目の輝きがいっしゅんで失せる。それでも、最後のあがき、とばかり、
「そうかぁ……。でも、とりあえずいってみようかな」ってつぶやく。
「ぜひに!」
お兄ちゃんとわたしはハモった。
「ここだけの話だけどね。実は……あちきとラミアさんは学生時代からの親友なんだ」
レミナさんはまるで、隠しごとをうちあけてでもいるかのように話している。
「レミナさん」「なにぃ? ネイル」
「レミナさんの周りにいる人で、それを知らない人はいません」
「うっ。……そ、それでね」
レミナさんはお兄ちゃんの言葉を無視して話をつづける。
「あちきはね、いつまでもラミアさんのよき親友でありつづけたい。そう願っているんだよ。でもラミアさんは、あんなに人並みはずれた、がんきょうな身体を持っているじゃないか。どんな高いところから落ちようが、岩にたたきつけられようが、ほのおに包まれようが、だくりゅうに飲みこまれようが、あっという間に復元しちゃう」
(それって人間なの?)
「そうなの? お兄ちゃん」「……はい」
お兄ちゃんは言葉少なげに答えた。
「でも、どうしてそんなことが判るの?」
「レミナさんが……」
「レミナさんがどうしたの?」
「ラミアさんに、ですね。実際に、……そのぉっ、あのぉっ、なんというか……」
いつになく歯切れの悪いお兄ちゃん。
「うん?」
「そんな目にあわせたんです。だから……」
「ちょ、ちょっとお兄ちゃん。それって罪になるんじゃないの?」
「そうはならない……と思います。どれもことのほったんは、レミナさんが思いつきで始めた『遊び』だというのは、本人も否定していません。ただいずれの場合でも、ラミアさんが自分から進んで参加していますし、結果としてそんな目にあった、というだけで、故意でないことも確かです。これを罪と呼ぶには無理があると思いますよ」
「そう……」
なにか、しゃくぜんとしないものを感じる。そんなわたしの心を見すかしたように、『判りますよ、気持ちは』と、お兄ちゃんの目が語っていた。
「ネイル。もういいかね?」
どうやら、わたしたちがしゃべリ終わるのを待っていたみたい。お兄ちゃんは、『すみません、どうぞ』と平身低頭、先をうながす。レミナさんは満足そうにうなずくと話をもどす。
「今いったみたいにラミアさんの身体ってはんぱな代物とはわけがちがう。その点ほら、あちきって見てのとおり、きゃしゃな身体じゃない。これじゃあ、どうやったってラミアさんと張りあえるわけないよ。といって、みくびられるのもしゃくだしね。せめて黄色い霊波ぐらいは自由自在に操れる力を身につけようと思って、それでやっているんだ。
どう、ネイル? このか弱き身からほとばしる健気な乙女心。ひょっとしてほれちゃった?」
四つ足でせまってくるレミナさん。あおむけのまま上半身を支えている両手をかわりばんこに動かしながら、レミナさんの元をはなれるお兄ちゃん。
「いいえ、レミナさん。この世で黄色い霊波をまとうあなた以上に強い人を、僕は知りません。それとお願いですから、目をうるうる、身体もふりふり、なんて可愛い子ぶるのはやめてください。返って相手におそれをいだかせるだけです」
「またまたぁ。そんなに照れなくたってぇ。ほら、あちきとネイルとの仲じゃないよぉ」
「どんな仲でもありません」
きっぱりと断言するお兄ちゃん。口をつきだしたまま、そばへにじりよってだきつこうとするレミナさんのひたいを右手ひとつでおしとどめている。
「やめてください、レミナさん。……あっ、そうだ」
どがっ!
とつぜん、お兄ちゃんの右手がはなれたため、前のめりにたおれるレミナさん。
「んもう、ネイルったらぁ。本当、つれないんだからぁ」
鼻をおさえてなみだ目になっているのにもかかわらず、照れたような表情をこちらに向けている。一方、お兄ちゃんは、そんな彼女に目もくれず、ふところあたりを探っている。
「これ、これです」
一通の手紙らしきものを取りだすと、レミナさんに手渡す。
「なんなの、これ。……ネイル、ひょっとして、こい」
「いいから中身を開けてください」
レミナさんのおしゃべりを、お兄ちゃんの言葉がさえぎる。
(こいぶみ、っていおうとしたのかな?)
レミナさんの顔に現われた、きらきら、が、いっしゅんで消えた。
「ちぇっ。どうやら、ちがうみたい。なになに……」
読み始めた。つかの間の静けさが訪れる。
「ああ、なるほどぉ。そういえば、まだやっていなかったよねぇ。
判った、ネイル。準備はあちきに任せなさい!」
「そういってくださると思っていました。では、よろしくお願いします。
じゃあ、フローラ。ここでの用事もすんだから次へ行こう」
「うん」
「あれっ。ネイルったら、もう行っちゃうの?」
レミナさんは残念そう。
「すみません。何分、営業中なものですから」
「そうか……。そうだよね。判った。じゃあ、またあとで」
お兄ちゃんはあっさりと切りすて、レミナさんはあっさりと応じた。ともにほほ笑みあう。呼吸がぴったりとあっていて、見ているこちらとしては、なんかくやしい。
「ちりょう費の減額は考えておきますね。では、失礼します」
「レミナさん。じゃあ、また」
アリアに乗ったお兄ちゃんとわたしは、『期待しているよぉ!』と手をふるレミナさんに別れを告げ、大空へとまいあがる。
「おぉい。大変だぁ!」
「おや、あれはラミアさん」「お兄ちゃん、なんかあわてているみたいだね」
大きく手をふり、まっしぐらにこちらへ向かってくる。
「どれ、行きましょうか」
「うん。……ねぇ、アリア」
「くぉーっ(判っている)」
そう答えると、アリアはラミアさんが乗っているミレイへと飛んでいく。
(さぁすがぁ)
「くぉーっ?(ミレイ、なにごとだ、一体?)」
「くぉーっ(それが……とにかく大変なのでございますよ)」
上空で合流すると、ミレイの横にアリアを並ばせた。空にもガムラの霊力が満ちあふれている。この力を利用することで、ばさっ、ばさっ、とつばさを動かさなくても、ういた状態を保つことができる。
(れいよくりゅうの強み、ってやつかな)
近づいてみれば、いつもは笑顔のラミアさんが、今日はなぜか、けわしい表情をうかべている。
「ネイル、大変なんだ。すぐ病院にもどってくれ」
「ラミアさん、落ちついて。一体なにがあったんですか?」
「実は……」
ラミアさんの話が始まった。
「はっくしゅん!」
「おや、ラミア。かぜ(風邪)でも引いたのか? それなら」
「いや、セレン。これはそうじゃないな。だれかがあたいのうわさをしている気がする」
「ちゃんとちりょうを受けるんだ。そのあと、ぐっすりと休めば、すぐに身体もよくなる」
「な、なんだよ、ラミア。どうして注射器を持ちながら、こちらへにじりよろうとしているんだ? しかも注射針からぶきみな赤黒い液体がもれているじゃないか」
「にげるな、ラミア。すぐにすむ。これを注入すれば、たちまち身も心も軽くなって」
「く、来るな! セレン! ……あっ、こ、これは!」
がちゃがちゃ。がちゃがちゃ。
「ふふふふふ。先ほど、ドアにはかぎをかけておいた。もうにげられはしない」
「ま、待て。セレン。は、話そう。話せば判る」
「観念するがいい、ラミア。ふふふふふ。ははははは。あははははは」
ばん! ぶずっ! ばたっ!
「……ってなことがあったんだ」
「ラミアさん。先生に注射をうたれたんですか?」
「いや。その寸前に、さっ、とかわしたよ。そしたら、セレンのやつ、ドアに頭をぶつけてたおれてさ。その拍子に手にしていた注射を自分のうでにうっちまったんだ。で、そのあとは、ぐったりとしたまま。めざめさせてやろうとしたんだけどな。どんなにぶったたいても起きないんだ」
「たおれている人をぶったったかないでください。それにしても自業自得ですね。といって、このままにしておくわけにもいきません。病院へもどりましょう」
「でも、お兄ちゃん。治せるの?」
「多分、その注射は新薬を試す前準備のために造られたものでしょう。先生はきちょうめんな方ですから、そういったお薬の仕様には必ずといっていいくらい、解毒法も列記しています。注射器に用いられたお薬の成分さえ特定できれば、あとはなんとかなると思います」
わたしたちは病院にもどった。ベッドに横たわっているセレン先生は安らかな笑みをうかべてねむっている。
「お兄ちゃん、これからどうするの?」
「この注射器には、まだお薬が残っています。これを使って成分分析を始めましょう」
わたしやラミアさんにできることは、もうなにもない。ただひたすら待った。少し時間がかかったものの、お兄ちゃんは薬の成分を割りだすことができた。
「フローラ、ラミアさん。このお薬の名前が記してある書類を探してください」
「うん」「ああ、判ったよ」
三人で手分けして探し始めた。でも、いくらも時間はかからなかった。見つけだしたのは、わたし。セレン先生が書きもの専用に使っている机の一番上に、それらしき書類が無造作に置かれていた。
「よく見つけましたね、フローラ」「えへへへ」
お兄ちゃんはわたしにだきついたあと、ごほうびとして、おでこに口づけをしてくれた。
「ちっ」
見ていたのだろう。ラミアさんがふきげんそうに舌打ち。そっぽを向いた。
お兄ちゃんは書類をたよりに解毒剤を造ると、注射器を使って投与。セレン先生の目を開かせることに成功する。
「ここはどこ……。我はだれ?」
「ここは、じごく(地獄)。あなたはあくま(悪魔)です」
「……なんだ、ネイルか。君もじごくに落ちたのか」「師弟なもので」
「そうか。すまなかったな」「いいえ」
「だが、案ずるな。おたがい、人として生まれかわることがあれば、必ずまた師弟になれる」
「そんな予言めいた言葉を口にする必要はありません。機会は二度と来ないのですから」
「そうか。全てが終わってしまったのだな」「ええ。終わりました」
「いつまでやってんだ。お前ら」「そうよ、お兄ちゃん」
相変わらず仲のいい師弟だった。こっちが、ちょっといら立つくらい。
「ミーにゃん。ここでひとつ『なぞ』が生まれたのにゃん」
「そうそう。ネイルさんがどんな手紙をレミナさんにたくしたか? よね」
「ちなみにミーにゃんはにゃんだとう思う?」
「やっぱりあれかなぁ。宿敵『さらせにあん』との果たしあいかなぁ」
「ミーナさん……。だれです? それ」
「いいや。ウチはちがう気がするのにゃん」
「じゃあ、ミアンはどう思うの?」
「『よもぎだんご』の『ばいきんぐ』にゃ。これにつきるんじゃないかにゃ」
「なるほろ。それも一理あるわん」
「ミアンさん……。どこでやっているんです? それ」
「一番有力なのはこの二つだけど……。もし、ちがっていたら、あっちかなぁ」
「ミーにゃん。なんぞこころあたりでもあるのにゃん?」
「ほら、『まんだらごらん』の血清。あれがあればちりょうに役立つっていっていたから、レミナさんに取りにいってくれるよう、お願いしたんじゃないかなぁ」
「にゃるほど。ミーにゃんもにゃかにゃかしぶいところをついてくるのにゃあ」
「ミーナさん。なんです? それ。だれがちりょうの役に立つっていったんですか?」
「にゃら、ウチも。万が一ちがっていたとするにゃら、今度は本命中の本命。
ずばり、『えびふらい』の『ばいきんぐ』にゃあ!」
「や、やられたわん。とんだどんでん返しだわん」
「にゃははは。決まったにゃ!」
「ミアンさん……。何回もお聞きするようで申しわけないんですが……。
どこでやっているんです? それ」
「にゃ、にゃんと! これもちがうのにゃん?」
「もうだめだわん。お手あげだわん」
「しょうがにゃい。ミーにゃん。ウチらの負けにゃん」
「うん。ねぇ、ネイルさん。本当はなんなの? 教えて」
「ウチもお願いするのにゃん」
「あのぉ。とぼけているとかそんなんじゃなくて、本当に判らないんですか?」
「あったりまえだわん!」
「あったりまえにゃん!」
「わざわざ教えるまでもないと思うんですが……。
今回のお話のお題、正確にいえば、副題になるわけですが、なんていいましたっけ?」
「今回の? ええとにゃ…………ふにゃあああっ!」
「今回の? ええと………………あああっ! だわん!」
「今、判ったんですか? ……うそですよね?」
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「このままここにいたら危ないのにゃん。まずは気を失っているミーにゃん、と、それから」
くるっ。
「ジュリアン。あんたもにゃ。ウチに任せるのにゃん!」
「えっ。助けてくれるのぎゃん」
「ウチは正義と愛の戦士のにゃん! ついでにいうと、おとめにゃのに、にゃあまん!」
「わ、判ったぎゃん。……『ついでに』、以降が、さっぱり判らないのぎゃけれども」
「『のり』でしゃべっているだけにゃん。いちいち気にする必要はないのにゃよ」
ぎゅっ。ぎゅっ。
「片方ずつのうででわじらをかかえるなんて……。
うわぁっ、ぷよぷよしていて、つかみどころが全然ないぎゃあ」
「いくにゃよぉ!」
ずばばばぁん!
「と、飛んだぎゃ! 両足が放つすごいふんしゃ力ぎゃあ」
ぐぃぃん!
「横穴から飛びだしたぎゃ! しかも、見事な曲線を描いて……」
びゅうぅぅん!
「あがっていくぎゃん!」
ひゅううっ。……すとん。
「ふぅ。着地成功にゃん!」
からんからん。からんからん。
「しまったぁ! ミーにゃん女王さまのかんむりがはずれてしまったのぎゃあ」
「かんむり? それは一体なんのことにゃん?」
「これで女王を操っていたのぎゃ。でも……こわれたのぎゃん」
がくっ。
「これでミーにゃん帝国もおしまいぎゃあ」
すくっ。とぼとぼとぼ。
「ジュリアンとやら。ウチらをあとに、どこへ行くのにゃん?」
「またわじだけで、あてもない旅をつづけるとするぎゃ。はい、さいならぎゃん」
とぼとぼとぼ。とぼとぼとぼ。……。
「行ってしまったにゃ。これでジュリアンの野望も終わり。にゃんか後ろ姿がさみしいのにゃん。……とはいっても、いつまでも見送っているわけにもいかにゃい。どれ、元の姿にもどるとするのにゃん。
……ええと、後ろ足をふんばってぇ、右の前足を空にのばしてぇ、と」
みしみしっ。ぐん!
「ウチはもうあきたのにゃああん!」
ひゅるひゅるひゅるひゅるひゅる……。
「やっと終わったのにゃん。あとはミーにゃんが目をさますまで待っていようにゃん」
「……ミアン」
「おっ。気がついたのにゃん」
「あれっ?」
きょろきょろ。きょろきょろ。
「アタシったら、どうしてこんなところに……」
「悪い夢を見ていただけにゃよ。さぁ、帰ろう。ウチのせなかに乗りにゃさい」
「えっ。……うん」
ばたばたばたっ。すわっ。
「いいわん」
「イオラにゃんのところまで送っていくのにゃあ」
「うん。ありがとう、ミアン」
たったったったったっ。
》
「かくして天空の村は平和を取りもどしたのにゃった。にゃんにゃん。
ミーにゃん。どうにゃった?」
「女王さまのアタシって、ある意味、ヒロインだったのね。
まぁ、悪くないオチだったわん」
「あのぉ。ミアンさん。僕はどこに出ていたんですか?」
「はっ! ……ごめんにゃ。元々の話に、ネイルにゃんは出てこないのにゃよ」
「……そうでしたね。ぐすん」
「(ミアン。そろそろ、うちあわせどおりに話すわん)
それはそうと。ねぇ、ミアン」
「(いいにゃよ、ミーにゃん)
なんにゃ? ミーにゃん」
「今回、見せてくれたのは光線技だけだったけど、にゃあまんって大きくならないの?」
「ミ、ミーナさん。それをいったら、またまたミアンさんの思うつぼ……」
「えっ!」
「ふふふふふっ。ウチはその言葉をを心待ちにしていたのにゃん。にゃら、そろそろ始めるとするにゃよぉ!
副題『真実を求めて・ばーじょんB』の物語を!」
「……ってことは、今まで聞いていた話は、げんみつにいうと、副題『真実を求めて・ばーじょんA』ってことになるわけ?」
「さすがはミーにゃん。そういうことにゃん」
「し、しまったわん! そこまで考えているとは予想もしていなかったわん!」
「ミーナさん……。本当に本当ですか、それ? なんだかわざとらしい気が」
じぃっ。
「ちっちっちっ。ネイルさん。何度もいうようだけど、うたがうのはよくないわん
(ミアン、うまくいったわん!)」




