第七話『岩石研究所』‐②
「全然だめじゃないか」
「このせちがらい世の中に、一時間も秘密を守りつづけるって確約しておりますのよ。本当ならば、なみだを流して、『ありがとう』って感謝されてもよろしいところですのに」
「お前なぁ」
「ラミアさん。いいよ、わたしから話すから」
「本当にいいのか? こんなやつにしゃべって」
「ラミアちゃん。こんなやつって……」
リンダさんはあきれ顔。
「だまっていても、いずれ判っちゃうかもしれないし。だったら誤解がないように、わたしの口からいっておきたいの」
「あら。なんていさぎよい態度。あたくし、あなたのことを気にいったわ。絶対、悪いようにしないから教えて」
「じゃあ、おれもうかがうとするか。あいつに、にているっていうのが、気になっていたんだ」
「あなたより、いい男だから?」
リンダさんがフィルさんにつっこむ。
「男は顔じゃない」「へぇぇ。じゃあ、なに?」
「なにって……、心とか……」
「あら、いやだ。なにこどもみたいに顔を赤くなんかしちゃって。ふぅん、可愛い」
「リ、リンダ。へ、変な目つきでせまってくるな!」
(まずいな。このままだと、フィルさんもリンダさんも、自分たちだけの世界に入りこんじゃう。……よぉし、こうなったら大声を出して、こっちの話に耳をかたむけてもらおう!」
「フィルさん、リンダさん。話を聞いてください。わたしの名前はフローラ。
実は……わたしは水の妖精なの!」
「今、なんて?」「なんだと?」
わたしのひとことで、フィルさんに飛びかかろうとしたリンダさんは動きをとめた。フィルさんといっしょに、目を丸くしてわたしを見つめている。
「ある日、湖に流れ星が……」
わたしは自分に起きたできごと、今は、『お兄ちゃん』と呼んでいるネイルさんと暮らしていること、病院のお手伝いを始めたことなどを話した。
「君って……数奇な運命をたどっているな」
「だけど、ネイルさんに出会えたんですもの。よかったじゃない」
「……はい」
わたしはこの時、ちょっと顔を赤らめていたかもしれない。
「いつまでもこの村にいるがいいさ。ネイルはいいやつだし」
「そうね。困ったことがあったら、彼に相談すればいいわ。めんどうみはいい方だから」
「そうします」
(やっぱり話してよかった。お兄ちゃんのことを理解してくれる人に、悪い人はいない)
わたしはそんな風に思った。
「じゃあ、おれも自己しょうかいをしよう。名前はフィル。『岩石研究所』の所長だ。ここにいるリンダといっしょになって研究活動をしている。ラミアとは皮肉にも、学生時代、同級生だったっていうあいだがらだ。年令も同じ。いい争うことも多いが、親友と思っている」
「あたくしはリンダ。ここにいるフィルやラミアちゃんより一つ年上ですの。学生時代は、もちろん、上級生。それでも、よくいっしょになって遊んでいましたわ。
学校を卒業後は、勤めに出るでもなく、家で家事手伝いの毎日。そんな引きこもり生活をつづけていたある日のこと、この人があたくしに声をかけてきましたの。
『新規事業をやるから、手伝わないか』って。
それがきっかけですわね。ここへ勤務するようになったのは」
「あのぉ。それじゃあ、この研究所はお二人しかいないんですか?」
「ええ、そうよ」
「でも、一日の仕事が終わったら家に帰るんですよね」
「ちがうわ。とまりこみ。ここに来てから帰ったことは一度もありませんわね。
……それがなにか?」
「二人っきり……」
わたしはあらためてリンダさんたちを見つめた。二人はおそろいの服を着ている。灰色の作務衣だ。工業区のお務めをしているから、なのが、その理由であることは知っている。でもリンダさんの話を聞くにつれ、別な意味にも思えてきた。
(やっぱりここへ来る前、ラミアさんがいっていたみたいに……、
よぉし、思いきって聞いてみよう!)
「リンダさん。フィルさんは、こ、こいびとさん、なんですか?」
(うわぁ。なんだろう。『こいびと』って言葉を口にしただけで、こんなにもどきどきしちゃうなんて)
「あらぁ、フローラちゃん。だれからそんないれぢえを」
リンダさんは意味ありげな笑みをうかべながら、視線をわたしからラミアさんへと移した。
「ぐぅおほん! 別にいいだろう。そんなの」
「ラミアちゃんね。どうせ、そんなことだろうと思いました。
……でも、本当のところ、どうなのかしら。あたくし自身、今一つちがう気がしてならないの。客観的にいえば、友だち以上、恋人未満、っていうところかも知れなくてよ」
「リンダ。それは『友だち』だ」
「ふふふ。ラミアちゃんのおっしゃるとおりかもね」
「ところで、フィルさん」「なんだね、フローラ」
「岩石の研究って、具体的には、なにをやっているんですか?」
「ここは見てのとおり、元は鉄鋼石などの採くつ現場だったんだ。ある日、今までとはちがう岩がほりおこされてね。いろいろ調べてみたところ、きわめて高いエネルギーをふくんでいることが判ったのさ。それからだ。あれやこれやと試してみた末、ようやく、その岩から取りだしたエネルギーをおれたちが扱いやすいような力へと変えることに成功した。それが『恵力』。今、この村の地下には、その『恵力』を流すための伝線が引かれつつある、といったところだ」
「一体なんに使うの?」
「使い道はまだかぎられている。だが、その利用は考え方次第でどんどん拡がるはずだ。やがてこの村にとって、なくてはならないものになるだろう。おれはそう確信している。だから、研究をつづけているのさ」
「すごいです、フィルさん。この村の未来をちゃんと見すえているんですね」
「ああ、そうだよ。そしていつかはこの努力が報われ、村人たちも、おれたちやこの研究所を見直す日が必ず来る。おれはそう信じている」
「そうよ。そうでないと、いつまで経っても、『水洗トイレ』にはならないと思うわ」
「リンダ……。お前、結局、そこに行きつくのか」
あきれ顔のラミアさん。
「あら。死活問題といってもいいわよ、ラミアちゃん。少なくとも、あたくしにとってはね」
「フローラ。……すまん。できれば、もっといい話の終わり方をしたかったんだが」
リンダさんをちらっ、と見て、ため息をつくフィルさん。
「フィルさん、元気を出してください」
わたしはなぐさめるしか、すべをもたなかった。
「た、大変です!」
わたしたちがくつろいでいる応接室に、マリアさんが飛びこんできた。
「おっ。やっと起きたか。わざわざ資料をここまで運ばせて悪かったな」
フィルさんはそういって手さげ袋を手に持ち、マリアさんへ見せる。
「えっ。……いいえ、これも村役場の仕事ですから……って、そんなことをいっている場合じゃありません!
フィルさん。見えたんです! 一番奥にある窓から大きな岩が、こう赤々と燃えているのが」
身ぶり手ぶりで教えるマリアさん。かなりこうふんしているみたい。
「な、なにぃ!」「なんですって!」
フィルさんとリンダさんは勢いよく応接室から飛びだす。もちろん、わたしたちもそのあとにつづいた。
ぼぉぉっ! ぼぉぉっ! ぼぉぉっ! ぼぉぉっ!
「こりゃすごいなぁ!」
「ラミア。感心している場合か。あの岩は村中に流れている恵力の源なんだぞ」
「なにぃ! じゃあ、フィル。このままだと」
「もちろん、全てがとまる。もしも、そんなことが起きたら」
「起きたら?」
「……特にひがいは発生しないな。照明ならランプで代用すればいいし、料理なら火を起こして造ればいい。どこの家でも昔からやっていることだ。どうにでもなる」
「じゃあ、別にいいじゃないか。とまったって」
しごくもっともなことをいうラミアさん。
「いや、村人の生活をより向上させるという点で、恵力は今後、なくてはならないものになるはず。ここで文明の灯を絶やすわけにはいかない!」
フィルさんは使命感に燃えているかのごとく、こぶしをふるわせている。そんなフィルさんの後ろで、窓から外をながめつづけていたリンダさんからさけび声が。
「ちょっと、二人とも! なにをさっきからむだ口ばかりたたいているの。ほら、見なさい。大岩から火の粉がこの研究所に!」
「なんだと! ま、まずい! このままじゃ、炎がこちらに燃えうつってしまう!」
フィルさんはそういうやいなや、研究所の入り口へと走っていく。
「なんだ、フィルのやつ。おくしてにげたのか?」
「ラミアちゃん。この岩石研究所はね。あのフィルが自分の人生をかけて造ったもの。そんな簡単に見すてたりはしないわ」
「だがな、リンダ。この炎じゃとても消すのは」
見れば、赤々と燃えあがる大岩から、まるでおどりでもおどっているかのごとく、炎がゆれ動いている。
(これからどうなるんだろう)
不安ながらも見つづけるわたしの耳に、足音が聞こえてきた。
たったったったっ。
「はぁはぁはぁ」
フィルさんがもどってきた。
「ほら、ごらんなさい。ばけつを運んできたわ。きっと、井戸から水をくんできたのよ」
「はぁはぁはぁ。こ、これでどうだ!」
フィルさんは開いた窓から大岩へばけつの水をぶっかけた。
ばしゃぁ!
しゅう、しゅう、しゅう、しゅう……。
ぼわっ! ぼわっ!
「あれっ、見てみろよ。けむりが立ちのぼったと思ったらまたさらに激しく燃えあがったぞ!」
「なるほど。あれがぞくにいう、『焼け石に水』っていうやつなんですね」
「マリア。わざわざものしり顔でいうなよ。そんなことより、リンダ。そろそろにげださないと危ないんじゃないか」
「そのようね。じゃあ、みなさん。早くここから出ましょう」
わらわらわら。
わたしとラミアさん、リンダさんとマリアさんが研究所から外へとひなんした。
「やれやれ。これで一安心です」
マリアさんがそういってほっとしているところへ、フィルさんがからになったばけつを三個持って現われる。
「さぁ、君たちも手伝ってくれ。早くしないと」
「フィル。目をさましなさい。そんなばけつでいくら水をくんだって、もう、あの火を消すことなんか、とうていできやしないわ。それは、この中であなたが一番よく判っているはずよ」
リンダさんは言葉をつくすと同時に、フィルさんがかけだそうとするのを押しとどめている。
「ふっ。そんな簡単にあきらめきれると思うのか、リンダ。この研究所はおれの命、夢なんだ。この村をさらなる高度な文明へと発展させる希望の灯台だ。絶対に消しとめてみせる!」
「なぁ、フィル。気持ちは判るが、リンダのいうとおりだ。ほら、ここからも外かべの一部に火が移ったのが見えるじゃないか。とても無理だよ。あきらめろ」
ラミアさんもリンダさんに加勢した。
「いやだ。君たちがやらないなら、おれひとりでもやる」
フィルさんは二人をふりはらい、井戸があると思われる方へと走っていく。多分、近くにあるのだろう。いくらも経たないうちにもどってきた。見れば、手持ちのばけつ四個全てにあふれんばかりの水が注がれている。彼はそれらを両手ににぎったまま、研究所の中へ引きかえそうとする。すると、『もはや説得は無理』とでも思ったのだろう。わたしをのぞく女の子三人が彼のせなかにおぶさり、ばたん、と前にたおした。
「や、やめろ、放せ、お前たち!」
「もう手おくれだ。フィル、行くな!」とラミアさんがいえば、つづいてリンダさんも、
「そうよ。またやり直せばいいじゃない」とうなずいている。もちろん、マリアさんも、
「危険すぎます。行かせるわけにはいきません!」と彼女にしては激しい口調で言葉をそえた。
「火事ににゃってしまったのにゃん。大変そうにゃ」
「どんなにお金や時間をかけて造った建物でも、運が悪ければ、あっという間に燃えつきてしまうわん。『火』ってこわいわん」
「その一方で、暖かさをもたらし、灯りにもにゃってくれる。敵にも味方にもにゃる代物にゃん」
「注意をおこたれば、しっぺ返しがくる。かといって、必要以上にこわがることもない。ようは、それを使うものの心がけひとつ、ってことね」
「まるでミーにゃんみたいにゃ」
「そうね。まるでアタシ……、なんでそうなるのよ!」
「自分のむねに手をあてて、これまでの生きざまを考えてみにゃさい」
「そんなことをしなくたって……」
ぴたっ。
「…………」
「どうにゃった?」
「思いあたることが多すぎて、さっぱり判らないわん」
「あのにゃあ……」
「そういうミアンはどうなの? ずいぶんとえらそうにいっているけど」
「ウチ? ウチは大丈夫にゃよ」
「どこからそんな自信が生まれてくるの? って聞きたいわん」
「ミーにゃんがこうしてそばにいてくれるじゃにゃいか。それがなによりの証明にゃん」
「うっ]
ぽっ。
「……ミアン。とつぜん、そんなことをいわないでほしいわん。
……なにもいえなくなってしまうわん」
「ミーにゃん。いつもありがとうにゃん」
「ミアン……」
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「さぁてとぉ。『ミーにゃん帝国の野望・ぱあと2 副題「真実を求めて」』。物語もいよいよ、かきょうにゃん。では、さっそく話を」
「ちょ、ちょっとお待ちなさいってばぁ、だわん」
「うん? なんにゃ? ミーにゃん。ウチはこれから気分よく話を再開しようとしていたのにゃけれども」
「その前に。聞きたいことがあるわん」
「おや。ウチの話で、にゃにかなぞめいたことでも?」
「うん。今のうち、知っておきたいわん」
「はて? そんなものがあったのにゃろうか……。まぁ、いいにゃん。それじゃあ、予定を変更にゃ。いくにゃよぉ。せぇのぉっ!」
『なぜなに、ミーにゃん!』
「うおぉぉっ、だわん!」
「にゃんにゃんにゃん!」
ぱちぱちぱち。ぱちぱちぱち。
「さぁ、ミーにゃん。たずねたいことがあるのにゃら、えんりょなくしゃべるがいいにゃん。答えられるはんいでどんどん答えていくのにゃあ」
「(前回につづいて、すごい『のり』だわん。こっちまで引きこまれちゃったわん)
なら聞くわん。まず聞きたいのはね。最初にしゃべった『ミーにゃん帝国の野望』。つまり、変更後の話、についてだわん」
(第六話『空を追いかけて』‐③の後書き)」
「うんにゃ。いいにゃよ」
「まずはひとつめ。ミアンが登場するちょっと前の話ね。
ジュリアン:
『わじらの帝国は天空の村で一番高い山「ねぐろ」の頂上にあるのぎゃ』
ミーにゃん女王:
『一番高いのは霊山「亜矢華」でしょ?』
ジュリアン:
『そんな山は知らんぎゃ』
とまぁ、こんな感じの会話があったわん。
実際に天空の村で一番高い山は、ミーにゃん女王がしゃべった霊山『亜矢華』。それなのに何故、『ねぐろ』、なのか? そこを聞きたいわん」
「ミーにゃん。このお話はにゃ。ウチが造った空想の物語。実際とはちがっててもいいのにゃよ。いや、ちがっているからこそ、よけい考えるのがおもしろくなってくるのにゃん」
「なるほどね。あともうひとつは……と。そうそう、これだわん。
ジュリアン:
『ふふふっ。わじがただの白黒ぶちねこだと思っていたのなら、大まちがいぎゃ』
ミアン:
『するとあんたは』
ジュリアン:
『生きものを操る装置を生みだせるまほう使い、いや、まほうねこぎゃ』
ミアン:
『にゃんと! 「まねこ」、にゃったとは……』
とまぁ、こんな感じの会話があったわん。
ねぇ、ミアン。このジュリアンって本当に実在するの?」
「いいや。これも空想のねこにゃん。でもにゃ。お題が『ミーにゃん帝国の野望』って決まった段階でウチとミーにゃん以外にもだれか一体、いにゃければならなかったのにゃん」
「そもそも、なんでこんなお題になったの? さっぱり判らないわん」
「お題に『ミーにゃん』という文字がふくまれていること。どうせなら、一回聞いただけで心に残るようにゃお題にしたかったこと。この二つを思いめぐらしたところ」
「『ミーにゃん帝国の野望』が頭にうかんだってわけね。……ふぅ。やれやれ、だわん。
あと話をもどすけど、アタシとミアン以外に、どうしてだれかが必要だったの?」
「正義の味方役であるウチと女王役のミーにゃんとの間に、本当の黒幕として入ってもらうためにゃん。そうすれば、ミーにゃん自身を悪者にしにゃくてもすむ、と思ってのことにゃよ」
「なるほどね。それでその黒幕さんが空想のねこ、ジュリアンってわけね」
「空想とはいってもにゃ。ジュリアンの元ねこは実在するのにゃん」
「へぇぇ。どんなねこなの?」
「つい先日のことにゃ。『今日もいい天気にゃん』と半分ねぼけまなこで歩いていたのにゃよ」
「ふむふむ。いつものことだわん。それで?」
「ふと、かたわらに建っているへいの上を見たらにゃ。あおむけにねそべっていたねこが四肢を拡げて、『ふわあぁぁあっ』と、大きなあくびをしたのにゃん」
「めずらしくないわん。ねこだもの」
「で、にゃ。それをウチに見られたと知ったとたん、あわてふためくように一目散でにげさったのにゃん。あの大きな口の開けっぷりといい、にげっぷりの見事さといい、どうしても頭からはなれなくてにゃ。それでにゃよ。空想ねことして登場させたのは」
「じゃあ、まほうとは全然関係なかったのね。ちょっとかっがりだわん」
「実際にいたらおもしろいのかもしれにゃいけど、逆に、いたらいたで問題のたねになってしまうのじゃにゃかろうか?」
「空想のままの方が無難……か。うん。納得したわん」
「じゃあ、今の質問も終了にゃん。ほかにもにゃにかあるのにゃん?」
「そうね。じゃあ、これなんかは?
どうやってお話のミアンは『にゃあまん』になれるようになったの?」
ばたっ。すぅすぅすぅ。
「こらぁっ! このごにおよんで、ねむってごまかそうとするんじゃないわん!」
すぅすぅすぅ。
「……ううっ……だれにゃん……はっ!
にゃんだ、ミーにゃんじゃにゃいか。……ふわあぁぁあっ。
ミーにゃん。前にもいったにゃろ? ねこ(ねているこ)を起こしてはいけないのにゃよ」
「本当にねむっていたの?」
「うんにゃ。にゃにか考えていたらねむくにゃって……。
あっ、そうにゃん。にゃあまんのことを考えていたのにゃん」
「考えていたって……、つまり、にゃあまんの設定って、まだできていなかったの?」
「できたのにゃん、たった今。にゃからウチは無実にゃん」
「無実って……。なにをいいたいのかさっぱり判らないわん。
まぁ、できたっていうのなら教えてほしいわん」
「いいにゃん。焼きたてのほやほや、にゃん」
「焼きたてのほやほや、といえば……。
この間、ネイルさんに『たい焼き』をおごってもらったよね」
「うんにゃ。あれはおいしかったにゃよ。とはいっても……」
「そう、最初は熱かったのよねぇ。思わず、はぁふぅはぁふぅ、の状態だったわん」
「ウチら、にゃんとかして熱いものをこくふくできないのにゃろうか?」
「どうかなぁ? 少なくとも、今世代のアタシたちじゃ無理のような気がするわん」
「次世代までおあずけ……。悲しいことにゃん」
「『たい焼き』はともかくぅ。ミアン。それで? にゃあまんについて教えて」
「まだ知りたいのにゃん?」
「まだって……本当はなにも考えていないんじゃないの?」
「そ、そんなことはないにゃよ。にゃら……ご期待に答えて話すとするのにゃん」
「うん。お願い」
「ええと………………うん。あれでいこうにゃん!」
「考えていたの?」
「ちがうにゃよ。ただどういう順番で話せばいいか迷っていただけにゃん。
それじゃあ、話し始めるにゃよぉ」
「いつでもどうぞ、だわん」
「くしだんごの『くし』にゃんがにゃ。広い世間でも見てこようかと、天外魔境をとおって、ぐうぜん、ここ天空の村のおりてきたのにゃん」
「くしだんごの『くし』が? まさかぁ」
「そのまさかが起きたのにゃん。それでにゃ。土につきささるつもりだったのが、たまたまそこをとおりがかったミアンにゃんの頭に、ぶずっ、といってしまったのにゃん」
「そ、それじゃあ……」
わなわなわな。
「ミーにゃんの思ったとおりにゃ。顔に血がどろどろの『うらめしミアンにゃん』ににゃってしまった」
「きゃあああ! だわん!」
「くしにゃんもさすがに、あわれ、と思ったのにゃろう。半死半生だったミアンにゃんをくしにゃん自身の力でなんとか回復させてにゃ。『大変もうしわけないことをしたくし。おわびに当分の間、『天空の村』の役に立つことをしたいくし』とまでいったのにゃ」
「ふぅぅん。それで変化ができるようになったってわけね」
「そういうことにゃん。くしにゃんがマントを出してにゃ。ミアンにゃんの身に着けさせたのにゃん。自分をそのポケットの中に入れるように、といってにゃ」
「ふむふむ」
「変化の手順は以下のとおりにゃ。
1.マントのポケットからくしにゃんを取りだす。
2.自動的に、くしにゃんにはだんごのまるまるが三個くっつくのにゃん。
3.ミアンがまるまるを全て平らげる。これにより、変化できる力を身につけるのにゃ。
4.ミアンがくしにゃんを高くかかげて、『にゃあまん!』とさけぶのにゃん。
5.くしにゃんとミアンにゃんがゆうごう。にゃあまん、とにゃるのにゃん。
6.『おとめにゃのに、にゃあまん!』といいきるのにゃん。
とまぁ、こんな感じで変化が完結するのにゃん。
ここで重要なのが『3.』にゃ。変化できる力は一回分だけにゃから、変化するたびに、まるまる三個を食べる必要があるのにゃん」
「それでそれで? 変化を解除するにはどうするの?」
「『もうあきたにゃん』って思えばいいのにゃよ。それだけにゃん」
「なんか変化する時にくらべて、なげやり、みたいなな感じがするわん」
「しょせん、ねこのすることにゃ。ここらへんで納得してもらわにゃにゃいと」
「判ったわん。アタシとミアンは親友同士。納得したわん」
「ミーにゃん……」「ミアン……」
ひしっ。
「さてと。ミーにゃん。ほかに質問は?」
「これでとりあえずはいいわん」
「にゃら、せぇのぉっ!」
『なぜなに、ミーにゃん!』
「終了にゃん!」
「終了だわん!」
ぱちぱちぱち。ぱちぱちぱち。
「さてと。次回はいよいよ、『ミーにゃん帝国の野望・ぱあと2 副題「真実を求めて」』の最終回にゃん」
「えっ。こんなに長々としゃべってもう最終回なの?」
「おや。ちょっとがっかりなのにゃん?」
「まぁね」
「もっとも、ミーにゃんの努力次第で変わってくるのにゃけれども」
「アタシの? どんな風に?」
「こんな風に、にゃ」
ひそひそ。ひそひそ。
「ふむふむ」
「そんでもってにゃ」
ひそひそ。ひそひそ。
「……なのにゃけれども、どうにゃろうか?」
「……うん。判ったわん。万事、このアタシに任せなさい」
にやり。にやり。
「さぁてと。これでお皿も全部洗い終わり」
びくぅっ!
「ましたけど……。
なにかせなかに悪寒が……。ふおんな空気がただよっているみたいですね。
まるでだれかとだれかが悪だくみをしているような……」




