5/6
5.悪夢
……う!……う!
助けて!
し……ちゃんに…………われる!
きゃあ!………やめて!やめて……
し………いた……よ!
あ……やめ……きゃ……あっ!
また夢の中、夢を見てるってわかってるもう一人の自分が、自分を見てる。
誰かに襲われている。
そして、誰かに助けを求めている。
両方とも知っている人なの?
わからない。
あっ……やめ…て
わ…たし…が…好きなのは………から!
自分は誰かに襲われてしまっている。
相手は行為に及ぼうとしていた。
いやっ!!!!
「いやっ!!!」
夢の中と同じように自分も声を発していた。
汗で体がベトベトになっていた。それほど長くうなされていたのだろう。
夕方の17時半を時計がさしていた。
「だいぶ眠ってたな。それにしてもリアルだったな。まあただの夢だろうけど。」
記憶喪失になってから、深く物事を考えるのをやめた。
わからないものはわからない。思い出せたらいいなっていうくらい。
やっぱりもともとの性格なのだろう。
咲希は、ベトベトな体が不快だったので、看護師を呼ぶためにナースコールを押した。