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3.家族


 ガヤガヤと病室の外で声がする。きっと彼が戻ってきたのだろう。


 コンコン


「はーい!」


 ガチャ


「咲希ちゃん!!!」


 急に抱きつかれた。小さな小学校低学年くらいの女の子だった。


「おはよう!咲希ちゃん目が覚めたのね…良かった。麻央まおったら咲希ちゃんが無事で嬉しいみたい。」


 声をかけてきた女性は、彼と少し目元が似ている40歳くらいの女性だった。

先ほどの彼もいる。どうやら3人家族のようだ。


「母さん!ゆっくりしてる場合じゃないって!咲希は記憶喪失なんだ!何も覚えてないんだって!」

「あら?そうなの?」

「えええーー!?!?咲希ちゃん麻央のことも覚えてないの?」

「ごめんなさい。皆さんのことは記憶にないです。自分が誰かもわかっていなくて……困ってたんです…。」

「そう。それじゃ仕方ないね。これまで咲希ちゃんがどんな状況だったか、母さんが話してあげる。咲希ちゃん!受け入れる覚悟はできてる?」

「正直、怖いです。知らない自分を知るのが…。」

「大丈夫。咲希ちゃんは強い子よ。それにこれまでだって、辛い状況を乗り越えてきたのよ。」

「そうそう。大丈夫!早く思い出してほしいしな、麻央。」

「うん!」

「あ、あの…。」

「どうしたの?」

「まずは皆さんのことから知りたいです。覚えてないので、思い出すきっかけになればと思って。」

「そうね。自己紹介から改めてしましょうか。まず、私は高田 さくら。2人の母よ!」

「俺は高田 よう。咲希とは中学校が一緒で同い年。」


(えっ同い年だったんだ……全然見えない!大学生かと思ってたよ……。)


「私は高田 麻央。洋兄の妹で小3だよ!」

「私たちは咲希ちゃんを預かってる家族なの。私の夫も一緒に暮らしてたから6人暮らしね。」


(ん?6人??)


「皆さんとお父さんと私だったら5人じゃないんですか?」

「あ!俺には双子の兄がいたんだ。」


 洋が答えると家族みんな俯きがちになった。


「双子の兄の名前は高田 しゅう。咲希の彼氏だったけど、君たちは2人で出かけてたときに交通事故にあったんだ。ねぼけて運転していたトラックが信号無視をして、そのとき2人は横断歩道を渡っていた。修は咲希をかばって自分が犠牲になり即死だったらしい。咲希は違う車にぶつかり、ガードレールに思い切り肋骨をぶつけて、倒れたときに頭をうって意識を失ったんだって。その事故は1週間前のこと。咲希は6日間くらい眠って目を覚まさなかったんだ。」


 咲希には衝撃的な話だった。怪我をしていた原因が頷ける。


「修の葬儀は既に終わったよ。覚えてないかもしれないけど、退院したら線香上げてやってくれよ。」

「はい。修って人はどんな人だったんですか?」

「咲希のことが好きで好きでたまらないって感じなやつだったよ!笑」

「えっ……そっそうなんですか!?」

「うん。まあ、咲希の意識が戻って良かったよ。」

「そうね。いろいろと言ったから咲希ちゃんこんがらがってるかもしれないし、また様子を見にくるわね。」

「俺はまた明日くるよ。」

「麻央も行くーーー!」

「ありがとうございます。」


 そう言って、高田家族は出て行った。

 高田家族のこと、家のこと、修って彼氏のこと、いろいろ考えても記憶になかった。でも、もしかしたら、さっきの夢で咲希のことを抱きしめた人物は彼なのかもしれない。


 そういえば、なんで私は高田家族に預けられているんだろう……?聞くの忘れちゃったな。


 その後は、看護師さんに無理を言ってテレビを借りてきてもらって、テレビを見ながらゆっくりと過ごした。

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