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1.目覚め

(あれ?)



(ここは一体…)



(何でこんなところにいるんだろう…)



 目が覚めるとそこは、真っ白な空間だった。清潔感溢れる空間。そう、ここは病室。



(何で病院なんかに?)



 自分がなぜここにいるか思考を巡らせる。しかし、よく考えても理由を思い出すことは全くできなかった。



 全身があちこち痛む。特に起き上がると肋が痛む。きっと骨折しているのだろう。意識がしっかりしてくるほど、頭も痛くなってきた。



 コンコン

「失礼しまーす!」


 元気良く看護師が入ってきた。


「あらーもう目が覚めてたのね。結構痛むでしょ。肋と腕を骨折してるみたいよー。採血と検温したら、先生呼んでくるからねー!」

「はい…。あの!」

「ん?どうしたの?」

「私何でこんな酷いことになってるんですか?」

「え!?」

「ま、全く覚えてなくて…。」

「そう。あなた、自分の名前覚えてる?」

「えっ…自分の名前…。」

「思い出せないのね?」

「あっ…は…い……。」

「わかった。終わったから、先生呼んでくるわね。」

「はい。」


 そうして看護師は出ていった。彼女は看護師に自分の名前を聞かれてすぐに答えられなかった。今、頑張って思い出そうとしてもなかなか上手くいかない。頭がズキズキ痛む。



(誰なんだろう、私……。)



 10分ほどたつと先ほどの看護師が医師を連れて戻ってきた。


「失礼しまーす!」

「やあ、こんにちは。気分はどうかな?」

「はい、いろいろと痛いです。」

「ははっ、そうだろうね。酷い事故だったもの。さっき聞いたんだけど、君自分の名前を覚えていないんだって?」

「はい、そうなんです。思い出そうとすると頭が痛くて。私、これからどうしたらいいですか?」

「事故のショックで一時的に記憶を失っているだけだと思うよ。大丈夫、ゆっくり思い出していけばいい。とりあえず、事故当時持っていたものを見させてもらったよ。君の名前は、松宮咲希。市立南高校1年。聞いたことあるかい?」

「うーん…あんまりピンときません。でも、それが私の名前なんですね。」

「仕方ないさ。無理に思い出そうとしなくてもいい。まず、今の環境に慣れることから始めなさい。記憶は戻るかもしれないし、戻らないかもしれない。それよりも先に、怪我を治すこと!1ヶ月は入院してもらうよ。」

「はい。そうですよね。ゆっくり慣れます。先生ありがとうございます!」

満面の笑みでこたえた。医師は赤を赤らめていた。

「もう!先生ったら咲希ちゃんが可愛いからって何柄にもないこと言ってるんですか!?次の患者さんが待ってるから行きますよ!」

「なっ何を言ってるんだ!!そんなことないさ!じゃあ松宮さん、また明日。」

「慌てちゃって怪しいなー 。ではこれで失礼するわねー。」

「はい、ありがとうございました。」


 そう言って、2人は出ていった。病室に静けさが残る。個室の空間は落ち着くけど、テレビもケータイもないので何もできず、またいろいろと考えてしまう。



「やめよ!考えたって仕方ない。もう夕方みたいだし早いけど寝る!」



 一人言を言いながら布団をかぶる。目を瞑るとゆっくりと暗闇の中に誘われた。明日からの大変な毎日を、このときは全く予想できなかった。

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