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呼ばれて飛び出て何とやら。


 鋭く尖った両耳、ウェーブがかった透明感ある水色の長い髪、金色に輝く豪華な飾りのピアス。

 そして頭には何故か小さなシルクハット。


 急須から出てきたそんな美人ねーちゃんは、今はちょこんと座布団に座って茶をすすっている。


 なんとも奇妙な光景だ。


 由依は先程からずいぶん時間が経ったというのに、今だ信じられないという目でねーちゃんを見つめていた。

 いや、俺も一応驚いてるよ? だって、まるでアニメみたいなことが目の前で起こっているんだから。

 でも、俺ってわりと何でも受け入れられるんだよなぁ。


 それに、いつかはこういうことが起きてほしいなーっていう願望はあったわけだし。

 望みがかなってラッキーという素直な気分ではないけど、やっぱり少しワクワクする。


 いつの間にか、ねーちゃんがじーっとこちらを見ていた。というか、睨んでいた。

 俺が小さく手を振ると、ふいに彼女の柔らかそうな唇が動いた。


 「…おぬし、これは何という飲み物だ?」


 …外国人じゃなかったのか!!

 いやいや、そうではなくて。


 「…日本語、お上手なんですね」


 由依、違う! それじゃない!


 「お茶を…知らない?」


 俺が言うなり、ねーちゃんは感心したように湯呑の中を覗いた。

 綺麗な髪がはらりと、肩から流れるように落ちた。


 「お茶、というのか。これは。…てっきり薬草を溶かしたものかと思った。いきなり客人に何を飲ませるのかと殺意が芽生えたぞ。すまなかったな、人間」


 …何かもうこの時点で、ファンタジーだ。

 薬草って…ゲーム世界の住人なのだろうか?


 「…ところで、おぬしら。インディアという所を知らないか?」


 ほら、やっぱりゲームだ。


 由依が「いんでぃあ?」と聞き返す。

 そうだ、とねーちゃんは頷いた。


 「私たちはそこを目指して、海を旅してきたのだ。ほら、知っておるだろう? 海賊、という組織だ」


 ああ、海賊ものね。宝島を目指して敵と戦ったり波に攫われないように回避したりするやつ。

 とすると、だ。


 「船長がねーちゃん、あんたなのか?」


 するとムスッというように、ねーちゃんが俺を上目づかいで睨み上げてきた。

 可愛いんだけど、少し怖いです。


 「貴様、私の名を知らぬのか!」


 「おぬし」だったのが「貴様」に変わった。相当怒っていらっしゃる。

 というか、会ったばかりで名前なんか知るはずも無いだろう。お互い名乗ってないのに。


 「分かりません」

 「なら教えてやろう、人間」


 そして胸を張ってねーちゃんが言った。


 「…私の名は、妖精海賊コロンブスだ!!」


 ―――ゲームのファンタジーキャラクターなのか、ただの厨二病なのか。


 俺はどうか前者であってほしいと願う。











 

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