明日とかけまして 〜放課後謎掛けバトル〜
初投稿です。
「なぞかけ勝負をしよう」
こころからそう提案された僕は参ってしまった。いくらなんでも突拍子なさすぎる。
「じゃあ、私から行くね。給食とかけまして――」
「待って待って、なんですんなり始めてんの。全然飲み込めてないんだけど」
「これくらい臨機応変に対応できないと、これからの時代の変化についていけないよ」
「そんなわけあるかい。就職の面接でも聞かれないよ」
やれやれ……。まさかこんなことになるなんて。
僕の名前は、整翔。どこにでもいる小学5年生だ。で、さっきから勝手に話を進めているのが、幼なじみの園田こころ。家が近くて帰り道が一緒なので、こうしてふたりで帰ることが多い。
これだけ聞くと、仲が良くて羨ましがられるかもしれないが、決して甘甘な関係ではない。僕たちは帰り道で、いつも不毛な『戦い』を繰り広げているのだ。
この前は「石ころを蹴飛ばして家まで落ちずに運べるか勝負」。その前は「会話しながら先に笑った方が負け勝負」。これまでの戦績は、見事なまでに五分五分の引き分けだ。
そして今回の勝負で、いよいよ決着がつく。負けた方は「誰にも言っていない秘密」をバラさなければならないのだ。それだけは絶対に困る。あの秘密だけは、絶対に知られるわけにはいかないのだから。
「おーい、ぼーっとしてどうしたの? 降参でいい?」
「ああ、つい……ってダメだよ! そもそもなぞかけ勝負って何さ?」
「そんなの、上手いなぞかけを考えた方の勝ちに決まってるじゃん。常識だよ」
「知らない世界の常識を出されても困るなぁ。上手いなぞかけってなんなのさ」
「そりゃあ、整うスピードと言葉遊びの面白さよ。なぞかけ公式ルールブックにも書いてあるわ。起源はエジプトの壁画らしいわよ」
「妙に信憑性がありそうなウソつかないで」
「細かいことはいいの! とにかく今のブームはなぞかけなんだから。じゃあ行くよ。給食とかけまして、おやつと解く!」
「……」
「ほら」
「ほら?」
「もう、そこは『その心は?』でしょ!」
「ああ、はいはい。……その心は?」
「どちらも美味しいでしょう! ここっちです!」
「なにその『ここっち』って」
「決め台詞よ、様式美みたいなもの。……で、どう? 100点満点中、何点?」
「うーん……5点かな」
「ちょっと低すぎない!? あんまりだよ!」
「だって、思わせぶりにためた割には当たり前のことしか言ってないし、言葉もまったく掛かってないじゃん」
「ためたのは、あんたがすんなり受け入れてくれなかったからでしょ! はい、スピードは早かったから追加で50点ね」
「暴論すぎる!」
「じゃあ次はあなたの番ね。ほら、お題は同じ『給食』で掛けなさい」
「お題固定なの!? ずるくない!?」
「細かいこと言わないの。そんなこと言ってる間に時間がどんどん減っていってるわよー」
「まじか……」
やるしかない。僕は必死に頭を回転させた。
給食。きゅうしょく。九色? いや、単語を深掘りしてもダメだ。給食から連想できるものを考えなきゃ。学校の昼飯。白衣。当番。カレー。温かい。うーん、まとまらない!
「うーん……」
「運!? 『運』と掛けるのね! じゃあ、その心は!?」
「えっ!?」
なんてこった、勝手に決められた! なんにも思いつかない! えーっと、えーっと……そうだ!
「ど、どちらも『ふく』が気になるでしょう!」
「……ふく?」
「そう! 給食でカレーが出ると、汚れないかなって『服』が気になるだろ? で、運が良い人は幸『福』が気になるってわけ!」
「……めっちゃ補足説明入れてくるじゃん。パッと伝わらないとダメだなー」
「(分かりやすすぎて何も捻ってない人に言われたくない……!)」
「ん? 何か言った?」
「いや、何も。それより得点は!?」
「そうね。まあ、服と言葉遊びの面白さってことで20点かしら。スピードも早かったから40点はあげてもいいかも」
「なんで上から目線なんだよ。……ってことは、ふふふ」
「なによ、気持ち悪い笑いかたして」
「ふふっ。こころはスピード50点+言葉遊び5点で【合計55点】。僕はスピード40点+言葉遊び20点で【合計60点】! ってことは僕の勝ちだ! さあ、秘密を喋ってもらうぞ!」
「いいえ、あなたの負けよ」
「ふふふ……えっ、なんで!?」
「だってあなた、重大なミスを犯したわ」
「なんだよ、苦し紛れの言い訳か? 僕がミスなんて……あ」
「気づいたようね。そう、あなたは最後に『かけっちです!』と言っていないの」
「そんな! それはただ忘れてただけで……大体、勝負の質には関係ないだろ!」
「最初に伝えたはずよ、様式美だって。最後に名乗らなければならないルールなの。それともあなたは、UNOをしていて最後の1枚になった時、宣言せずに上がっても許されると思っているのかしら?」
「う、うぐ……確かにそれはダメだけどさ。だからって失格は酷くない!?」
「まあ、今回は初回だから特別にマイナス5点で許してあげるわ。あら、私ったらなんてお優しいのかしら」
「自分で言うやつがあるか! ……ってなると、勝負は結局?」
「55点と55点で引き分けね。決着は持ち越しだわ」
「くそー! 勝ったと思ったのにー! よーし、明日は絶対に負けないぞー!」
「……明日も一緒に勝負するつもりなの?」
「もちろん。なに、なんか予定でもあった?」
「ううん、別にないけど」
こころは少しだけ呆れたように、でも口元を緩めて小さく笑った。
「じゃあ明日ね、翔。もっとマシななぞかけ、考えておきなよ」
「ふん、見てろよ! 次こそお前の秘密、暴いてやるからな!」
夕日に照らされる影をふたつ並べて、僕たちはいつもの分かれ道に向かって歩き出した。
10話完結です。




