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明日とかけまして 〜放課後謎掛けバトル〜

作者: わに
掲載日:2026/08/18

初投稿です。

「なぞかけ勝負をしよう」


こころからそう提案された僕は参ってしまった。いくらなんでも突拍子なさすぎる。


「じゃあ、私から行くね。給食とかけまして――」


「待って待って、なんですんなり始めてんの。全然飲み込めてないんだけど」

「これくらい臨機応変に対応できないと、これからの時代の変化についていけないよ」

「そんなわけあるかい。就職の面接でも聞かれないよ」


やれやれ……。まさかこんなことになるなんて。

僕の名前は、整翔ととのい かける。どこにでもいる小学5年生だ。で、さっきから勝手に話を進めているのが、幼なじみの園田そのだこころ。家が近くて帰り道が一緒なので、こうしてふたりで帰ることが多い。

これだけ聞くと、仲が良くて羨ましがられるかもしれないが、決して甘甘な関係ではない。僕たちは帰り道で、いつも不毛な『戦い』を繰り広げているのだ。

この前は「石ころを蹴飛ばして家まで落ちずに運べるか勝負」。その前は「会話しながら先に笑った方が負け勝負」。これまでの戦績は、見事なまでに五分五分の引き分けだ。

そして今回の勝負で、いよいよ決着がつく。負けた方は「誰にも言っていない秘密」をバラさなければならないのだ。それだけは絶対に困る。あの秘密だけは、絶対に知られるわけにはいかないのだから。


「おーい、ぼーっとしてどうしたの? 降参でいい?」

「ああ、つい……ってダメだよ! そもそもなぞかけ勝負って何さ?」

「そんなの、上手いなぞかけを考えた方の勝ちに決まってるじゃん。常識だよ」

「知らない世界の常識を出されても困るなぁ。上手いなぞかけってなんなのさ」

「そりゃあ、整うスピードと言葉遊びの面白さよ。なぞかけ公式ルールブックにも書いてあるわ。起源はエジプトの壁画らしいわよ」

「妙に信憑性がありそうなウソつかないで」


「細かいことはいいの! とにかく今のブームはなぞかけなんだから。じゃあ行くよ。給食とかけまして、おやつと解く!」

「……」

「ほら」

「ほら?」

「もう、そこは『その心は?』でしょ!」

「ああ、はいはい。……その心は?」

「どちらも美味しいでしょう! ここっちです!」

「なにその『ここっち』って」

「決め台詞よ、様式美みたいなもの。……で、どう? 100点満点中、何点?」

「うーん……5点かな」

「ちょっと低すぎない!? あんまりだよ!」

「だって、思わせぶりにためた割には当たり前のことしか言ってないし、言葉もまったく掛かってないじゃん」

「ためたのは、あんたがすんなり受け入れてくれなかったからでしょ! はい、スピードは早かったから追加で50点ね」

「暴論すぎる!」


「じゃあ次はあなたの番ね。ほら、お題は同じ『給食』で掛けなさい」

「お題固定なの!? ずるくない!?」

「細かいこと言わないの。そんなこと言ってる間に時間がどんどん減っていってるわよー」

「まじか……」


やるしかない。僕は必死に頭を回転させた。

給食。きゅうしょく。九色? いや、単語を深掘りしてもダメだ。給食から連想できるものを考えなきゃ。学校の昼飯。白衣。当番。カレー。温かい。うーん、まとまらない!


「うーん……」

「運!? 『運』と掛けるのね! じゃあ、その心は!?」

「えっ!?」


なんてこった、勝手に決められた! なんにも思いつかない! えーっと、えーっと……そうだ!


「ど、どちらも『ふく』が気になるでしょう!」

「……ふく?」

「そう! 給食でカレーが出ると、汚れないかなって『服』が気になるだろ? で、運が良い人は幸『福』が気になるってわけ!」

「……めっちゃ補足説明入れてくるじゃん。パッと伝わらないとダメだなー」

「(分かりやすすぎて何も捻ってない人に言われたくない……!)」


「ん? 何か言った?」

「いや、何も。それより得点は!?」

「そうね。まあ、服と言葉遊びの面白さってことで20点かしら。スピードも早かったから40点はあげてもいいかも」

「なんで上から目線なんだよ。……ってことは、ふふふ」


「なによ、気持ち悪い笑いかたして」

「ふふっ。こころはスピード50点+言葉遊び5点で【合計55点】。僕はスピード40点+言葉遊び20点で【合計60点】! ってことは僕の勝ちだ! さあ、秘密を喋ってもらうぞ!」

「いいえ、あなたの負けよ」


「ふふふ……えっ、なんで!?」

「だってあなた、重大なミスを犯したわ」

「なんだよ、苦し紛れの言い訳か? 僕がミスなんて……あ」


「気づいたようね。そう、あなたは最後に『かけっちです!』と言っていないの」

「そんな! それはただ忘れてただけで……大体、勝負の質には関係ないだろ!」

「最初に伝えたはずよ、様式美だって。最後に名乗らなければならないルールなの。それともあなたは、UNOをしていて最後の1枚になった時、宣言せずに上がっても許されると思っているのかしら?」


「う、うぐ……確かにそれはダメだけどさ。だからって失格は酷くない!?」

「まあ、今回は初回だから特別にマイナス5点で許してあげるわ。あら、私ったらなんてお優しいのかしら」

「自分で言うやつがあるか! ……ってなると、勝負は結局?」

「55点と55点で引き分けね。決着は持ち越しだわ」


「くそー! 勝ったと思ったのにー! よーし、明日は絶対に負けないぞー!」

「……明日も一緒に勝負するつもりなの?」

「もちろん。なに、なんか予定でもあった?」

「ううん、別にないけど」


こころは少しだけ呆れたように、でも口元を緩めて小さく笑った。


「じゃあ明日ね、翔。もっとマシななぞかけ、考えておきなよ」

「ふん、見てろよ! 次こそお前の秘密、暴いてやるからな!」


夕日に照らされる影をふたつ並べて、僕たちはいつもの分かれ道に向かって歩き出した。

10話完結です。

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