第8話 朝
翌朝。
久しぶりにぐっすりと眠って目が覚めた。
内容は覚えていないが、穏やかな夢の余韻が残っている。
分厚いカーテンを開けると、眩い光が目を刺して、思わず目を閉じた。
ゆっくりと目を開けると、窓の外に、白銀の雪を纏った美しい森が静かに佇んでいた。
背の高い針葉樹は全ての枝に雪を纏い、気まぐれな風に煽られて、粉雪がふわっと舞い上がる。
舞い上がった雪の粒は、朝の日差しにキラキラとダイヤモンドのように輝いていた。
地面には真っ白な雪が深く積もり、少し離れたところに、小動物の足跡が転々と森へと続いている。
見上げると軒先にも雪が積もっている。柔らかそうな雪まんじゅうの向こうに、澄んだ青空が見える。
朝食を済ませ、私は長靴を借りて、外に出た。
昨日の夜、山荘に到着した時とはまったくの別世界のようだった。
外気はきりっと冷たく、吸い込むと胸の奥まで透き通るようだ。
息を吐くと、白い吐息がふわりとほどける。
真っさらな雪面に、一歩踏み出してみる。
長靴の下で雪が締まる音が、静かな森に小さく響いた。
ザグッ、ザグッ、ザグッ……
その音と感触が楽しくて、しばらく雪を踏んで遊んだ。
ただ遊ぶ――こんなことをしたのは、いつぶりだろう、とふと思った。
見上げると、空は抜けるように青い。
山荘の煙突から、柔らかそうな煙が立ち上っていた。
林道の散歩は素晴らしかった。
時が止まった世界に迷い込んだような錯覚に陥る。
樹木はしんと立ち尽くしているが、時々ひゅうと鳴る風の音、どこかで鳥が飛び立つ音が、静寂を破る。
白い森の眠りを覚まさぬように、私は静かに、ゆっくりと、耳を澄ませて歩き続けた。
何か透き通った粒子が呼吸とともに身体に入ってくるような、そんな優しい想像をしながら。
汚れた思念を追い出したいかのように。
雪道は歩きにくく、運動不足の身体には少し負担が大きかったが、私は夢中で歩き続けた。




