第5話 あさひ山荘
曲がりくねった林道を20分ほど登ったところに、あさひ山荘はあった。
黒々とした森のシルエットを背にして、太い丸太を組み上げたログハウスが静かに佇んでいる。大きな格子窓から、温かみのあるオレンジ色の光が漏れて、地面に積もった雪をほの明るく照らし出していた。
道中は真っ暗闇で、ヘッドライトの明かりだけでは頼りないほどだったので、山荘の灯火の範囲内に入った私は、思わずほっとして息を吐いた。
広い駐車場は、半分ほどが厚く雪が積もっている。
建物の床は高くなっていて、駐車場から木の階段を登った正面に、大きな木の扉の玄関があった。
山上さんについて玄関から中に入ると、暖かな光と染み込むような温かさに包み込まれた。
「お帰りなさい」
黒のセーターにデニムパンツ、シンプルな生成のエプロンをかけた女性が、優しい笑顔で出迎えた。
私は、ここまでの長い道のりの緊張が緩んでいくのを感じた。
「お疲れさまでした。道、真っ暗で、怖かったでしょう」
「いえ……でも、灯りが見えた時、ほっとしました」
そう言ってから、自分の声が思っていたより柔らかくなっていることに気づく。
玄関の広いたたきには、きれいに並べられた長靴。玄関の右手に分厚い木の板のカウンターの受付。
正面には、素朴な木綿のテーブルクロスの掛けられた木製のテーブルと椅子の並ぶ食堂。
奥の厨房からは、煮込み料理のような美味しそうな匂いがする。
左手は、ぱちぱちと音をたてて薪の燃えるストーブを囲むように椅子とベンチが置かれた談話室。
談話室には大きな窓があり、一角の壁面には写真や地図が所狭しと貼られている。
年月を経た木材や、燃える広葉樹の薪や、丁寧に仕込んだ煮込み料理――
そういった、たくさんの温もりがいつでもそこにある。
あさひ山荘は、そんな場所だった。




