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憧れのラブコメ主人公のハーレム計画に加担していたけど、クズ野郎と分かったので、次こそは阻止して美少女たちを幸せにしようと思います  作者: 砂糖流
ショートストーリー

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立花梨々花

「やっと私の番ですか……ほんと待ちくたびれましたよ。先輩」


 隣で繁華街を並んで歩いている梨々花が肩を落とす仕草をする。


 と、次の瞬間、


「ってことで早速あそこ行きましょっか! 先輩!」


 指さしながら言う梨々花の前には、妙にド派手な外装のいかにもなホテルがあった。


 行ったことのない俺でも分かる。あれは……誰がどう見てもラブホテルだな。


 梨々花はお構いなしに腕を引っ張ってくる。


「ちょっ! 待て待て待てっ!」


 俺の必死な抵抗に梨々花は足を止める。


「なんですか? 早くヤりましょうよ」


「『ヤ』をカタカナにするな。っていうか、そもそも俺たちじゃ入れないから」


「文句が多いですねー。そんなのサバ読めばいいだけの話です。ってことで――」


「『ってことで』じゃなくて。おい、さりげなく腕を引っ張るな」


 二度目の抵抗に梨々花は頬を膨らませて対応する。


「そもそもあそこがどこか分かってるのか?」


「どう見てもラブホでしょ。ツッコミばっかしてないで早く足を動かしてください」


 分かっていて言ってるのか……いや、『ヤる』とか言ってるんだからそれ以外有り得ないか。


 梨々花のことは前々から下ネタ好きだとは思っていたけど……軽々と想像を上回ってきやがった。


 俺の辟易した様子に梨々花はようやく観念する。


「じゃあ別にカラオケでいいですよ」


「そうそう。そういうのでいいんだよ」


「カラオケなら室内だし……」


 梨々花が俯きがちに呟く。


「なんか今、聞き捨てならん言葉が聞こえた気がするんだけど」


「聞き間違いじゃないですか?」


「なわけあるかっ! 絶対ダメだからな?」


「もー、ほんと文句が多いですねー」


「文句もクソもあるか!」


 本当にこの子の頭には『H』しかないのか。


「っていうか、もし室内を覗かれないように隠したとしても、緊急用のカメラがあると思うんだが」


「結局先輩もやる気満々じゃないですかー。店員さんに私たちのエッチを見せつけてやりましょう!!」


「嫌だわっ! やる気なんてない! 断言する!」


「ほんとに先輩は恥ずかしがり屋なんだから」


「恥ずかしいも何も、他人から見られててできるわけないだろ……」


「つまり見られてなかったらやるんですか?」


 ああ言えばこう言う……。


「とにかくしないから。早く行こ」


 ぷくーっと頬を膨らませる梨々花の手を握ると、怒りが吹き飛んだように強く握り返してきた。


 もうこのまま一生離してくれないんじゃないか、と思うほどにガッチリ手を握られたまま、俺たちはカラオケへ向かった。


 ◇◇◇


 カラオケに入店して四時間。


 俺たちはフリータイムで喉が枯れるまで歌いまくった。


 既に体中の空気を全て出し切って、完全に歌い疲れていた。


 隣の梨々花はまだ歌う気なのかタッチパネルをポチポチしている。


「ごめん。ちょっとトイレ」


 俺はその場から立ち上がり、梨々花に言う。


「あ。はい」


 来た時よりも明らかに元気がない梨々花を不思議に思いながら、俺は部屋を出た。


 さすがに四時間もぶっ通しで歌っていたから疲れたのだろう。


 あの梨々花でも疲労が来ることに驚きながら用を足して、部屋へと戻る。


 扉に手をかけて開けた瞬間、いきなり視界が何かによって覆われる。それと共に歌い疲れていた口も覆われる。


 あぁ、そうか。キスされたんだ。


 理解が追いついた時には既に唇は離されていた。


 梨々花にしては妙に短いキスだった。


 だけど未だに顔との距離が近い梨々花の頬は微かに赤みを帯びていた。


「ごめんなさい。我慢できませんでした……」


 梨々花は顔を離して、俯きがちに続ける。


「だって先輩……本当に何もしてこないですもん……そんなの自分から行くしかないでしょ……」


 聞こえるか聞こえないかの声量で不満を吐き出す梨々花。


 はぁ、と深呼吸ともため息とも取れる息を吐いた後、梨々花は鞄を持って言った。


「疲れました。そろそろ帰りましょっか」


 そうして俺たちはカラオケを出た。



 来た時と打って変わって人通りの少ない帰路につく。


「…………」


 これまた打って変わって無言な梨々花。


「梨々花」


 俺が名前を呼ぶと、梨々花は「なんですか」とこちらを向く。


 その瞬間に俺は自分から彼女の唇を奪った。


 梨々花はビクッと身体を反応させながらも目をつぶってすぐに受け入れてくれた。


 先程よりも少しだけ長いキス。


 目を開けると、顔が真っ赤に染まった可愛らしい顔が視界に映る。


 だが今回も数秒程度でキスは中断された。


 どうやら梨々花の方が限界だったようだ。


 その証拠に梨々花は耳まで真っ赤に染めて、俺から顔を見られないように俯いていた。


「梨々花?」


「ズルい、です。先輩は――」


 そっぽ向きながら梨々花は小さな声で続ける。


「どうしてさっきはしてくれなかったんですか……」


「さっき言ったろ……カラオケにはカメラがあるって……」


「…………」


 梨々花からの返事はなかった。


 未だに顔を見せないことに徹底していた。


 顔を見せてくれない梨々花に俺はずっと言いたかったセリフを口にする。


「前世の話……みんなから聞いたよ」


 俺が死んでから自分も屋上から飛び降りた、と。


「梨々花には本当に辛い思いをさせた。本当にごめん……でも、今世では絶対に一人にさせないから」


 ――ほんと先輩私のこと好きすぎじゃないですか!


 そんな風に言われると思っていたのに、返ってきたのはまさかの、


「もう一回してもいいですか?」


 照れながら訊いてくる梨々花に俺は「もちろん」と答える。


 瞬間、今日三度目の感覚が唇に走る。


 今回のキスも、病院の時のようなディープではなく正真正銘の普通の口付け…………と、思った矢先、三度目の正直と言わんばかりに梨々花の舌が口の中に侵入してきて唾液の交換が始まった。


 何度も唇が離れては目を見つめ合ってまた接吻。


 それがかなり長いこと続いた。


 幸い周りに人はいなかったから良かったものの、いつ誰に見られるか分かったもんじゃなかった。


 さすがにそろそろ……っ!


 顔を離そうと試みたが、頭に手を回されて完全にホールドされていた。


 おい。ちょっと待っ。


 病院の時のように頭がとろけていく。


 もうダメだ、というところでようやく唇が離された。


「はぁはぁ……」


 息ができなくなるかと思った。


 そんな俺の思いも知らずに梨々花は舌なめずりをして俺に言い放つのだった。


「ご馳走様でした」






最後までお読み頂きありがとうございます!


少しでも「面白い!」と感じましたら、ブックマークと★★★★★、よろしくお願いします!


これにてショートストーリーも終了となります!ありがとうございました!

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