表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憧れのラブコメ主人公のハーレム計画に加担していたけど、クズ野郎と分かったので、次こそは阻止して美少女たちを幸せにしようと思います  作者: 砂糖流
ショートストーリー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/55

高坂結月

 ポップコーンの匂いと布のような映画館独特の匂いが鼻腔をくすぐる。


 この匂いはいつ嗅いでも、心を落ち着かせてくれる。


「雄也くん。ポップコーン、キャラメルで良かったよね?」


「うん。大丈夫。むしろ大好物」


 俺は結月と一緒に映画を観に来ていた。


 陽菜の時とは違い、今回俺たちは普通の席に腰を下ろす。


 理由は単純にカップルシートが全て埋まっていたからだ。


「それより雄也くん」


 結月が隣の席で、ポップコーンのトレイのセットをしながら口を開く。


「カップルシートで一緒に映画を観たって陽菜ちゃんから訊いたんだけど、それ本当?」


 結月は目を合わせずに、語気を強める。


 俺は思わず合っていない目を逸らす。


 結月の言い分も分かる。


 陽菜の彼氏のフリをしていた時はカップルシートで映画を観たのに、今回は違う。


 でも……全て席が埋まっているのも事実。


「御託を並べるのもいいけど――」


「俺まだ何も言ってないよ!?」


 結月の言葉に遮るようにツッコミを入れる。


 ポップコーンのセットをし終わった結月に俺は続けて言う。


「言いたいことは分かるけどさ……」


「席が全て埋まってるって?」


「……うん」


 カップルシートが全て埋まっている以上どうしようもない。


「ねぇ、雄也くん。これ終わったらもう一回映画観よ。別のやつ」


「いいけど――」


 いいけど、どうして? 訊こうとした瞬間、館内の照明が消灯して、結月の横顔が見えなくなる。


 暗転後のスクリーンが再度結月の顔を照らす。


 薄暗い中、結月はこちらを見つめながら小さく呟いた。


「映画始まるよ」


 それから俺は前を向いて、映画に集中した。



 映画が始まって数分――ふと、隣に目をやる。


 結月は映画に集中していて、スクリーンの光に照らされる結月の顔は、肌が白くて唇には薄紅色が施されていた。


 それだけでいつもより気合いが入っているのが見受けられる。


 そんな結月の綺麗な横顔が、こちらを見つめて更に攻撃力が増す。


 結月は妖艶な笑みを浮かべながら、流し目でまたスクリーンに目をやる。


 俺はそんな時にふと思った。


 自分から手を繋いでみたらどうなるだろう?


 そういえば自分から手を繋いだことはなかった。


 俺はまだ手を繋ぐには早すぎる時間帯で、結月の手を優しく握った。


 結月は一瞬ビクッと反応しながらも、手を握り返してくれる。


 暗闇から薄ら見える結月の横顔はほのかに紅潮していた。


 俺は行動した後に今した行為を後悔する。


 何せ……自分から手を繋ぐというのは、想像以上に恥ずかしい。


 結月の頬が赤みを帯びているのを視認した瞬間に、俺はすかさず前を向く。これ以上結月の顔を見続けられる気がしなかった。


 その後、結局手は繋いだまま映画を観た。



 映画を観ている最中、俺はまたしても手を繋いだことを後悔することになった。


 何せ、序盤で手を繋いでしまった故、ポップコーンを逆の手で食べなくてはいけなくなった。


 俺は今右手で結月と手を繋いでおり、その右側にドリンクホルダーがある。


 つまりいちいち左手を右方向へ持っていき、ポップコーンを取る必要があった。


 何度か手を離そうかと悩んだが、自分から手を繋いだ以上、映画が終わるまで手を繋ぐ義務が俺にはあった。


 それにもし離そうとしても多分……。


 案の定、手はガッチリと結月から握られていた。


 結月の横顔は先程よりもどこか嬉々としている。



 そうして俺たちは結局映画が終わるまで手を繋いでいた。


 その結果、当然と言ったところか、ポップコーンは半分以上残る羽目になった。


「これ、どうするか……」


 いきなりのフードロス問題に直面する。


 俺がどうしようか悩んでいると、結月は何事もなかったかのように歩き出す。


「雄也くん。早く次のやつ観に行くよ」


 結月の言葉で俺は上映前の結月との会話を思い出す。


『これ終わったらもう一回映画観よ。別のやつ』


 結月の目論見は別のことだろうけど、これでポップコーンが無駄になることは免れた。


 俺たちは残ったポップコーンを手に別の映画のカップルシートの席を取った。


 ◇◇◇


「今日は楽しかったー」


 二作品の映画を観終わった俺たちは、帰り道で二人並んで歩いていた。


 まだ暗くなるには早い時間帯で、空には橙色が彩られている。


 夕日に照らされる結月の隣で俺は答える。


「本当に今日は楽しかった」


 素直な感想だった。


 ただ……映画の内容はあまり覚えていないけど……。


 結月はそんな俺の考えを読み取ったのか、意表を突くように言う。


「雄也くん。映画全然見てなかったでしょ」


 ――ギクッ。


 そこから更に、


「私に見惚れてたもんね」


 追い打ちをかけてくる。


 彼女はどこまで俺の考えを見透かしているのか……不思議で仕方がない。


 俺が何も答えないことにより結月は『図星なんだ』と解釈したのか、「良かった……」と独り言を呟く。


「メイクしてきた甲斐があった。実は陽菜ちゃんにメイク教えてもらったんだよね」


 言いながら流し目でこちらを見てくる結月の横顔はやっぱりいつもと雰囲気が違っていて、学校で見る何倍も色っぽさが出ていた。


 こんな姿、学校の男子が見たらきっと彼女は一瞬で一躍有名人になるだろう。


「ねぇ、雄也くん。もっと私の顔近くで見たいと思わない?」


 突然結月は顔をグイッと近づけてきて、こう囁いた。


「キスしよ」


 徐々に結月の端正な顔が近づいてくる。もう既に唇が触れ合いそうな距離感だった。


 そしてそのまま俺たちは――唇を重ねた。


 甘かった。とにかく甘かった。


 近くで見た結月の顔は、やっぱり綺麗だった。






本編には関係ないですが、後日談という形で一人一人のショートストーリーを書いていこうと思います。


ただひたすらに主人公とヒロインがいちゃラブするだけですがw


どうか短い間ですが、五人分、読んでいただけると光栄です……っ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ