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憧れのラブコメ主人公のハーレム計画に加担していたけど、クズ野郎と分かったので、次こそは阻止して美少女たちを幸せにしようと思います  作者: 砂糖流
主人公

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48話 目覚めのキス

 目が覚めると、俺はベッドの上で横たわっていた。


 視界には病院特有の真っ白な天井と真っ白なカーテンが映っている。


 今のこの状況から考えるに、俺は病院のベッドで寝ていることになる。それに口にマスクのような覆いが被せられているからほぼ確実。


 俺は、死ななかったのか……。


 その事実を確認するべく部屋を見渡そうと、身を起こした瞬間、横腹に激痛が走る。


 思わず「いっ」と口にしてしまう。


「えっ……?」


 激痛に悶えていると、何やら前方から聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「お兄……?」


 その声とは、妹の楓から発せられたものだった。


「お兄が、目を覚ました……?」


「…………」


 驚いた表情でこちらを見つめる楓の瞳から、一滴の涙が頬を伝う。


「楓?」


 あまり状況が理解できない中、試しに名前を呼んでみる。


「良かった……本当に良かった……」


 でも、俺の声は楓の耳には届いていないようだった。


「あっ。そうだ。先生呼ばないとっ」


 楓は突然我に返って、室内にあったナースコールを急いで鳴らす。


 そうして楓は一息つくと、隣の椅子に腰を下ろしてからさりげなく手を繋いでくる。


「温かい。お兄の手」


 俺は楓の手を握り返しつつ、再度部屋を見渡す。


 だが、目を引くものはなく、普通の病室だった――と、そこで床頭台に置いてある果物が目に入る。


「あー。それね。先輩方が持ってきてくれたんだよ。確か、高坂先輩と、如月先輩と――」


「瑞希と望月さんと……そして、立花さん」


 そんな俺の言葉に楓は少し困惑しつつ、「よく分かったね」と言ってくる。


「うん。よく知ってる。全員よく知ってるよ」


 生き残った嬉しさと、彼女たちと向き合わなければいけないという決意が俺の中で葛藤していた。


 俺は、一体五人にどう顔向けすればいいのだろうか……。


 そんな不安がこみ上げるのもつかの間、病室に先生が入ってきて、急いで俺の病態を確かめた。



 その後、俺は無事に『命に別状はない』と言われて、同時に『退院には数ヶ月を要する』とも説明された。


 先生の反応からするに、俺が生き延びたのは天文学的確率だったらしい。


「きっと応急処置のおかげだね。あの止血処置がなかったらかなり危なかった。あの子たちには感謝だね」


「はい……そうですね」


 名前を言われなくても誰だかは容易に想像がついた。


「じゃあ、私は戻るから。何かあったらすぐにナースコールを鳴らすんだよ」


「はい。ありがとうございます」


 言うと、先生は病室を出ていく。


 同時に楓も「母さんと父さんに伝えてくる。あと、あの五人にも」とスマホを手に取って、病室から出ていった。


 最後の『あの五人』というのは言うまでもなく……。


 俺は、心を落ち着かせるためにまたベッドに横たわる。と、そこで床頭台に置いてあるスマホが震えた。


 震えた自分のスマホを手に取り、通知の正体を確かめる。


『雄也!』

『目覚めたってほんと?』


 陽菜からだった。


 それから続いて、結月、瑞希、望月さんからも同様にLINEが飛んでくる。


 だけど、あと一人からの連絡はなかった。


 彼女は俺に失望したのか、はたまた未だに謝らない俺を見限ったのか……どちらにせよLINEでもいいから早く謝らないと、と思った。


 全員に返信した後、立花さんとのトーク画面を開いて、丁寧に『すみませんでした』と謝罪の言葉を入力する。


「よし」


 送信ボタンを押した。ところで、突然病室の扉が勢いよく開かれる。


 急なことで戸惑っていると、その強引に扉を開けた張本人が、またしても勢いよくカーテンを開けた。


 そんな迷惑極まりない行動をした人物とは――今まさにLINEを送った彼女だった。


「先輩……本当に目が覚めてる……」


「た、立花さん……?」


「先輩が……生きてる……」


 楓と同じように目に涙を浮かべる彼女は、俺に涙を見せないためか一度顔を下に向ける。


「先輩…………」


「は、はい」


 俯きながら問いかけてくる彼女に困惑しながら答える。と、次の瞬間、彼女は更に混乱を引き起こすようなことを言ってきた。

 

「キスしてもいいですか?」


「えっ? きっ、キス?」


「ごめんなさい。もう無理です」


「えっ?」


 俺の思考が追いつく前に、彼女は俺の方に顔を近づけてきて……




 ――チュッ。




 頬ではなく、唇を塞いだ。


 混乱して一体何が起こっているのか理解できず、感覚だけが俺の体を刺激する。

 

 ほんのり甘い香りが鼻腔をくすぐり、立花さんの整った童顔が近くで感じられた。


 だが、それだけで終わりではなかった。


 あろうことか彼女は、舌まで入れてきたのだ。いわゆる、ディープキスというやつだ。


 それにより、またしても更に混乱を引き起こされる。


 頭がぐるぐるしてめまいを起こし、とろけるような感覚に陥る。


 一刻も早く彼女を引き剥がさないと……こんなとこ誰かに見られでもしたら――手遅れだった。


 立花さんの後ろに陽菜が立っていて、こちらに軽蔑の眼差しを向けていた。


「この…………浮気者」


 そんな陽菜の声とともに俺は気を失った。

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