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憧れのラブコメ主人公のハーレム計画に加担していたけど、クズ野郎と分かったので、次こそは阻止して美少女たちを幸せにしようと思います  作者: 砂糖流
後輩

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39話 ダブルデート 2

 先程のベンチで、陽菜・俺・立花さん・神宮寺、の並びでしばらく休憩していた。


 だが、ダブルデートの礼節と言わんばかりに、俺と立花さんの間には一人分席が離れている。


 俺が陽菜から貰った水をごくごく飲んでいると、立花さんが前触れもなく立ち上がり、人差し指を前に突き出す。


「あれ行きましょうよ!」


 俺たちは一斉に立花さんが指す方向へ視線を向ける。


 立花さんが指した所には、先程のナンパ男が言っていたお化け屋敷があった。


 【お化け屋敷】と書かれた看板の下にある入口の奥は暗闇が続いていて、中がどうなっているのか見えないようになっている。


「「キャー!!」」


 中から甲高い女性の声が二つ重なって聞こえてくる。


 確かにお化け屋敷はデートには最適解。ダブルデートとなると、自然と二人っきりになれるので尚更だ。


 そう思ったのだが、まさかの予想が外れる。


「でも、普通に二人ずつ入るのも面白くないんで、一人ずつ入るってのはどうですか?」


 立花さんが、ダブルデートではありえない提案をする。


「デートとしては最悪だけど……確かに面白そうかも……」


 その提案に陽菜がもっともな意見を主張するが、最後は結局『面白さ』で判断する。


「ですよね! これで誰がビビりか分かりますしね」


 言いながら立花さんが神宮寺の方を見やる。


「なんだよ。俺は別にビビりじゃねーぞ」


「そうですか? それならお先どうぞ」


「あぁ! 行ってやるよ! 行けばいいんだろ!」


 そのまま神宮寺は言われるがまま、一人で真っ暗なお化け屋敷の中に入っていく。


「じゃあ、次は誰が行きますか?」


「最後は雄也で決まりとして……」


 陽菜が聞き捨てならないことを言う。


「それ、どういうことだよ?」


「ん? いや、やっぱ最後は一番反応しそうな人ってのがお決まりじゃない?」


 そんな陽菜の謎理論になぜか立花さんが「やっぱそうですよね!」と大袈裟に共感する。


 朝から思っていたけど、この子、あまりにも失礼すぎない? 一応仮にも先輩なんだけど……と、思うが、確かにこっちの方がフラットな関係で絡みやすい、とも思った。


「言っておくけど俺はビビりじゃない」


 二人はまるで信じていないと言った様子で、陽菜に「はいはい」と受け流される。


「じゃあ次は私行くから――出口で待ってるからね。雄也」


「おい、なんで俺を見る」


「さーねー?」


 微笑みながら二人目、陽菜が入っていった。


 そして最後に――


「じゃあ先輩。次、私行きますから数十秒経ったら来てくださいね」


「分かったけど……それだとちょっと――」


「じゃあ、()()()()


 『それだとちょっと早すぎやしないか』と結局最後まで言い切ることはできず、立花さんは中に入っていった。


 言われた通り、数十秒して俺も中に入る。


 瞬間、周囲が真っ暗になり、一気に寒気が俺の体を震わせる。



 しばらく進んで人魂のようなランタンで照らされている薄気味悪いエリアに辿り着く。


 先程まで、ジェットコースターの叫び声や、親子の仲睦まじい話し声が聞こえていたのに、今となっては物音ひとつ聞こえなかった。


「…………」


 自分の足音だけが耳に入ってきて、そんな静かな空間が更に俺の心を不安にさせる。


 もういい。こんなエリア早く抜けよう。


 そう思った刹那――真横から気配を感じて、蚊が鳴くような声で、


「うぁ~」


 瞬間、俺は走り出した。


 もういっそのことこのまま出口まで走り切ってやろう、と思った俺の足は徐々にスピードを失っていった。


 理由は、前方に誰かがへたれこむように座っていたからだ。


 その人物とは無論、俺の前に入っていった立花さんだった。


 立花さんは足を痛めたのか、右足辺りをさすっていた。


「大丈夫か?」


 真っ暗闇の中、俯く彼女に訊ねるとしばらく沈黙が続いた。


 俺は彼女が幽霊にでもなってしまったんじゃないのか、と思ったが、それは杞憂に終わる。


「先輩……おぶってください」


 その代わり、別の意味で俺の身体が震え上がる。


 辟易しながらも応える。


「そういうのは彼氏の役目だ」


「私……まだ、付き合ってません」


 すると、またしても衝撃の事実を告げられる。


 付き合っていない。つまり彼女は神宮寺と恋人関係ではないのに、俺たちにダブルデートの提案をしてきたということだ。


 とんでもないな……何せ、今日のデートに本物のカップルは存在しない。


「先輩……本当に覚えてないんですか?」


 一体なんのことを言われているのかさっぱりだった。


 見る限り、明かりが薄暗いランタンしかなかったせいで、立花さんが今どんな表情をしているのかイマイチ分からなかった。


 立花さんはおもむろに立ち上がり、何事もなかったかのように歩き出す。


 それを見て俺はすぐさま理解する――彼女は怪我なんてしていない。


 でも、どうしてそんな待ち伏せでもするかのようなことをしたのか……それだけが分からなかった。


 立花さんは暗闇の中に消えていき、彼女を認識する方法が足音だけになる。


 コツコツと足音も離れていく――瞬間、足音が聞こえなくなり、次に「シュッ」と新たな音が色をつける。


 きっと立花さんが振り返ったのだと思う。


「…………」


 静かすぎる静寂が流れた後、立花さんを認識する方法がもう一つ増える。


「早くしないと、私取られちゃいますよ」


 最後にそう言い残した立花さんはまた歩き出し、しばらくしてその足音さえも暗闇の中に消えていった。


 俺は何一つ状況が理解できていなかった。


 だが、誰かが答え合わせをしてくれるはずもなく、俺は真っ暗闇の中でただ一人残された。

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