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憧れのラブコメ主人公のハーレム計画に加担していたけど、クズ野郎と分かったので、次こそは阻止して美少女たちを幸せにしようと思います  作者: 砂糖流
生徒会長

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29話 冷淡な優等生

 神宮寺の名前を呼んだ彼女――長く伸ばされた紫髪に、表情の変化が見受けられない端正な目鼻立ち。


 悪い言い方をすれば、目に生気が宿っていない。まるで生きたい、という感情が感じられない彼女の名は、


 望月花音(もちづきかのん)


 彼女から名前を呼ばれた神宮寺はおもむろに席から立ち上がり、彼女の方へ歩み寄る。


 どういうことだ? どうして神宮寺がもう彼女と接点を持っているんだ?


 確かに、俺の行動により時系列が前世とは大幅に変わっていることは理解している。


 分かっている。分かっているからこそ、俺はこの数ヶ月間、神宮寺が妙な動きをしないか、常に細心の注意を払いながら学校生活を過ごしていた。


 だというのに、なぜ、奴は彼女ともう知り合っているんだ?


 予想外の展開に狼狽えつつ、隣にいる望月さんに近づく神宮寺に目を奪われる。


 クラスの皆は未だに瑞希に夢中で、神宮寺たちに注目しているのは、俺と隣にいた陽菜だけだった。


「ごめん、ごめん。来てくれてありがとう」


 望月さんの目の前まで来た神宮寺は笑顔で、彼女の顔を見つめる。


「それで話ってなに」


 口以外の顔をピクリとも動かさずに、ただ声を発するためだけに顔を動かした望月さんに、神宮寺が驚くことを口にする。


「そうそう。花音ちゃんさ。俺と付き合ってくれない?」


 そんな唐突な告白に、さっきまで瑞希に夢中だった生徒たちが一斉に同じ方向へ視線を向ける。


「もちろん恋人として」


 今のそんな状況に追い打ちをかけるかのように神宮寺は発する。


「いいよ」


 一切思考した様子を見せずに望月さんが受け入れて――カップルが成立した。


 ◇◇◇


 望月花音――彼女は学校内でちょっとした有名だったりする。


 というのも、彼女は今現在学校で生徒会長を担っている優等生なのだ。


 常日頃から無表情で寡黙な望月さんを見た人は、真面目でしっかりしている人なんだな、と誰もが思うだろう。


 だが、実際はそうではない。彼女はただこのつまらない人生に飽き飽きしているだけなのだ。


 というのも――もし、今世が前世と同じだとすれば望月さん……彼女は学校でいじめを受けている。


 いじめの内容としては、つまらないもので、物を隠されたり、机に落書きをされたり、学校の裏掲示板で悪口を書き込まれたり、というものだ。


 それに加えて、彼女の家庭環境はあまりよろしいものではなかった。


 前世彼女を助けたのは神宮寺だから詳しくは分からないけど、抽象的な内容だけは知っていた。


 いくら抽象的と言えど、有益な情報ということに変わりない。


 だと言うのにどうして俺は何もできないのか。それは彼女の無気力が関係していた。


 もう人生に何の期待もしていない彼女だからこそ、話しかけた程度じゃ、どうにもならない。


 それこそ家庭環境を変えるか、もしくはいじめを辞めさせない限りは彼女の心を動かすことは不可能だろう。


 だが、今の俺にはどっちもできない。


 他人の家庭事情に首を突っ込むのは言うまでもなく、いじめに関しても俺にできることは一切なかった。


 結月の時みたいにあからさまないじめだったらまだ良かったものの、今回はいじめの犯人が誰だか全くもって検討がつかない。


 普通なら今までの教訓を糧に、犯人は神宮寺、となるはずなのだが……今回はそう一筋縄じゃいかない気がした。


 というのも、今回のいじめの内容は前世と全く異なっていたのだ。


 否。内容は前世と同じなのだが熱量が圧倒的に違うのだ。完全に悪意に満ちたいじめ。


 今だからこそ分かる。前世のいじめはきっと、神宮寺が独断で物を隠したりしたのだろう。それを自分で解決して、望月さんをヒロインに迎え入れるといった、いかにも神宮寺がやりそうな策略だ。


 神宮寺のいじめはただ惚れさせるために過ぎない。だから、前世のいじめには悪意をあまり感じられなかった。言ってしまえば、いじめる気のないいじめ。


 だが、今回に限っては完全に、怨念がこもったいじめだった。


 もちろん神宮寺がまた何か仕組んでいる可能性はあるが、そんなバカな行動をするとも考えずらい。


 当たり前だ。そんな何度も同じような策に俺が引っかかるはずがない、と想像つくのは極めて容易なことだからだ。


 それに神宮寺視点、もし望月さんにいじめているのがバレてしまえば、またしても神宮寺の作戦は失敗に終わる。


 だからこそ、俺は何もできなかった。何も分からなかったからだ。



 神宮寺と望月さんが恋人として付き合ってから数日。


 あれから、ほぼ毎日のように彼女がうちの教室に訪ねてくる。まるで神宮寺が俺に見せびらかすようだった。


「今日はなに」


「今日は一緒にお昼食べない?」


「いいよ」


 あまりカップルのようには見えなかったけど、神宮寺の作戦が着々と進んでいるのは、一目瞭然だった。

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