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憧れのラブコメ主人公のハーレム計画に加担していたけど、クズ野郎と分かったので、次こそは阻止して美少女たちを幸せにしようと思います  作者: 砂糖流
転校生

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25話 復帰配信

 ようやく自分の想いを打ち明けた七瀬さんが、不安そうに目を伏せる。


 覚悟を決めたからと言っても、不安が消えたわけではない。


 まずは何をすればいいのかと、迷っている七瀬さんに俺は問いかける。


「七瀬さん。謝罪動画はもう出した?」


「文面だけの謝罪なら……」


 未だに目を伏せる七瀬さんを前に、俺はあまり見ないようにしていた部屋を物色するように見渡す。


「ちょっとあんまり見ないで……その、汚いから」


 一週間もベッドの上で過ごしていたのだから、部屋が汚くなるのは当たり前だ。


 とは言っても、


「もう今更じゃない?」


「……確かに。なら見てもいいよ」


 少しの恥じらいを見せながら、目を逸らす七瀬さん。


「それじゃあ遠慮なく」


 と言ったところで、訊いた方が早いことに今更ながら気がつく。


「七瀬さん。スマホ用の三脚ってある?」


「三脚ならあるけど。確か」


 言って、クローゼットから本格的な一切安っぽさを感じさせない三脚を取り出す。


「何に使うの?」


「そんなの決まってる――撮ろう。謝罪動画を」


 ◇◇◇


 無論今回の炎上で七瀬さんが悪くないのは紛れもない事実。晒したストーカーと、一瞬で見限る視聴者によって火をつけられたからだ。


 それでも燃えてしまった以上、配信者はその現実を受け入れなければいけない。


 ネットというのは、理不尽な多数の意見を受け入れないやつを大勢で虐げて、貶めて、最終的には迫害する。


 七瀬さんことみずりんををそうさせないためには、まず炎上を受け入れて、視聴者に謝罪の意志を伝える必要があった。


 納得できないことも多いけど、七瀬さんがやる気な以上、俺はそれを最後まで見届ける義務がある。



 俺は親に帰りが遅くなる旨を伝えてから、まずは部屋を片付けて、撮影できる環境を作る。


 謝罪動画の台本も、俺の拙い文章で何とか書き上げて、三脚にスマホをセットする。


 グリーンバックを背景に、スーツ姿の七瀬さんが前に立つ。


 スマホ越しに映る七瀬さんの表情は強ばっていて、体も微かに震えていた。


 俺はそんな七瀬さんに緊張を解かすため、話しかける。


「七瀬さん。自分から訊くのはおかしなことだって分かってるけど、まだ俺のことは信頼してる?」


 自分から『誰も信じなくていい』と言っておきながら、そんなことを訊く。


「正直まだ疑心暗鬼だけど…………」


 長い沈黙の末、


「今は君を信じるしかない」


 真っ当な答えだった。


 少なくても俺は彼女の緊張を解すために話しかけたのだから、答えが何だって構わなかった。


 だけどこれだけは伝えないと、と思った。


「俺は君を信じてる」


「……そう」


 強ばっていた七瀬さんの顔が少しだけ緩む。


「じゃあ……開始するよ」


「ちょっと待って」


 そんな声と共に、録画ボタンに伸びていた俺の指が動きを止める。


「録画じゃなくて、生配信でいい」


 それは七瀬さんの覚悟の表明なんだと一瞬で理解した。


 リスクはあったものの、本気だった七瀬さんの表情が俺の指を動かした。



 ――【みずりん】が配信を開始しました。



 配信が開始された瞬間にコメント欄が文字で埋め尽くされる。


『みずりん!?』『なんだ?』『もしかして謝罪?』


「…………」


 部屋に少しの静寂が流れて、どんどん増えていく同接の前でみずりんが口を開く。


「この度の件につきまして、一切の間違いはございません」


 みずりんは俺が書いた台本には一切目を向けずに、話し続ける。


「今回どうして配信を付けたのか。それはこれからの方針を話すためです」


 俺の書いた台本とは内容がかけ離れていて、それは謝罪配信と呼ぶには程遠いものだった。


『どゆこと?』『解説求む』『謝罪配信なのか?』


「私はこれからもコスプレゲーム配信というコンテンツを続けて、より多くの人に知ってもらい、この業界を更に盛り上げたいと考えています」


 丁寧に一つずつ説明はしていたものの、炎上させた視聴者からすれば怒りを逆撫でされてるようにしか聞こえないだろう。


 だけどそれが逆にみずりんらしくて、俺は台本なんて彼女には不要だと思った。


 もう彼女は一人で立ち直ったようなものだ。俺が言ったように自分だけを信じて、その結果、一人前の人間として成長を遂げた。


「まだまだ未熟なところはありますが、どうかこれからもよろしくお願いします」


 そこでみずりんは初めてスマホに向かって頭を下げる。


 数秒して頭を上げて、もう終わりかと思ったが、まだ続きはあった。


「それとネットに投稿されていた『恋人』という件ですが…………私にお付き合いしている男性は存在しません」


『ほんとかよ』『また俺らを騙すの?』


「ですが――私には好きな人がいます」


 ハッキリそう言った瞬間、時が止まったかのようにコメント欄の動きも止まる。


 そして次の瞬間に、


『は?』『開き直ってて草』『もう無茶苦茶だろ』


 だけど、悪いコメントだけ、というわけでもなかった。チラホラとみずりんを応援するコメントも目についた。


『俺は応援してるぞ!みずりん!』『ここで叩いてる奴らは何を求めてるの?』『ファンなら推しの幸せを願ってやれよ!』


 賛否両論ではあるものの、確実に配信する前よりかはマシになっていた。


「私は今回その人から勇気を貰い、このような配信をする結論に至りました。彼からの後押しがなければ、今ここに私はいなかったと思います。これから配信が続けられるのも彼のおかげです。そんな彼の期待を裏切ぬよう、これからも私は配信を続けます――私から言いたいことは以上です。最後まで配信を見ていただきありがとうございました」


 もう一度深々と頭を下げて、



 ――【みずりん】が配信を終了しました。



 ◇◇◇


『なぁ、神宮寺。これってお前のことじゃね?』


 自分のスマホからみずりんの配信を見ている友達の声が聞こえてくる。


「うん。毎日LINE送ってたし、多分俺だと思う」


『すげぇな。ベタ惚れじゃん』


「まぁな」


 明日にはもう決着がつく。

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