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憧れのラブコメ主人公のハーレム計画に加担していたけど、クズ野郎と分かったので、次こそは阻止して美少女たちを幸せにしようと思います  作者: 砂糖流
転校生

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21話 自責

 結月のおかげで、かなり落ち着きを取り戻せた。


 これなら行ける。


「七瀬」


 俺は七瀬が一人になる瞬間を見計らって七瀬に話しかける。


「えっと、杉田、さん?」


 七瀬から名前を呼ばれて今になって思い出す。


 俺はずっと前世からの名残で七瀬のことを呼び捨てにしていた。


 前世では神宮寺の友達だったから呼び捨てできたのであって、今世での俺たちの関係性はほぼ赤の他人も同然。ただクラスが同じなだけの無干渉の関係性。


 いきなり赤の他人から呼び捨てで名前を呼ばれる七瀬の気持ちを考えると……あまりにも不可解だ。


「ご、ごめん。七瀬さん」


「ん?」


 だが、七瀬さんはそんなこと気にしていないようだった。


 やっぱり彼女は優しい。優しいが故に、悪い人間に騙されてしまう。


「いや、なんでもない。それよりも――」


「瑞希っ!」


 俺が七瀬さんにストーカーの件について話そうとしたその瞬間に、神宮寺が七瀬さんを奪い取るかのように腕を握る。


 神宮寺は俺のことをキッと睨みつけて、小さな声で「あいつとは関わるな」と七瀬さんに耳打ちしながら、俺から離れていった。


 やはりと言ったところか。学校内で七瀬さんと会話するのは不可能に近かった。


 七瀬さんにストーカーのことさえ伝えることができれば、状況は一変するだろうが、神宮寺がそうはさせてくれなかった。


 ストーカーを排除する方法は主に二つある。


 一つ目は俺が直接、警察に電話する。これは正直あまり現実的ではない。


 まず既に七瀬さん自身が警察に伝えているというのもあるし、そもそも部外者の俺が説明したところで、警察は簡単に動いてはくれない。


 仮にもし、警察が対応してくれたとしても、調べるのには最低でも数日はかかる。


 その間に神宮寺に先を越されてしまえば……。


 やっぱり二つ目の方法――俺が自力でストーカーを止めるしかなかった。


 やるしかない。


 昨日同様、変な冷や汗が出てきて、せっかく収まっていた震えも再発し始める。


 それでも俺は、危険を承知の上で、覚悟を決めて、今日の放課後早速、計画を実行することにした。


 ◇◇◇


 放課後。


 神宮寺と共に教室を出ていく七瀬さんの後を追いかける。


 二人はいつもの帰路について、俺は身を隠す。


 果たして今日、ストーカーが現れるのかが問題だった。


 今のところあの男の姿は見当たらない。


 そもそもの話、ストーカーが常に七瀬さんのことを監視している可能性の方が低い。


 当然だが、欲を出してストーカーしてしまうと、怪しまれて、本人にストーカーがバレ、その瞬間に人生が終わる。


 だから、そう毎日毎日、ストーカーしている方がおかしいのだ。


 そんな状況に俺はふいにもホッとしてしまった。


 覚悟を決めたはずなのに、左手で前世刺されたお腹を抑える自分に嫌気がさした。


 こんなんじゃダメだ。誰も守れない。もう一度刺される覚悟で行け。もう一度死ぬ覚悟で彼女を守れ。


 自分に言い聞かせる俺の瞳には――神宮寺たちに近づく、あの男の姿が映っていた。


「あっ」


 思わず情けない声が漏れ出す。


 もう既に手遅れだった。俺の覚悟は一瞬にして無意味となる。


 俺がいた方向とは全くの反対方向。ストーカーはまさかの七瀬さんたちが行く道より先に隠れて待っていた。


 今世での神宮寺たちの関係が発展するのは異常なくらいに早かった。


 そのせいで、ストーカーの牙も前世より倍以上早く剥いてしまったというわけだ。


 前世と全く同じ光景が目の前で繰り広げられる。


 帽子を深く被り、まともに顔が視認できない素性のしれない男が、七瀬さんの前に立ちはだかる。


 その七瀬さんを守るように間に立っていたのは、俺ではなく、紛れもない主人公様だった。


「そこの男。瑞希に近づくな」


 神宮寺の後ろで怯えている七瀬さんは何も知らない。知る由もない。


 ストーカーをも利用して、惚れさせようとしている神宮寺を俺は狂気に満ちていると思った。


「ねぇ、みずりん。その男とはどういう関係なの?」


 足を震わせる七瀬さんは何も言わない。


 当然だ。彼女視点、引っ越してもなお、ついてきたストーカーに畏怖しているはずだ。


「ねぇ、答えてよ。みずりん。どうして答えないの? やっぱりその男とは、答えられないほどの関係性なの?」


 どんどんヒートアップしていくストーカー。


「ねぇ、ねぇ、ねぇ!」


 今にも手が出そうな勢いだった。


「やめろっ! 彼女が怖がってるだろ!」


 そんな時、主人公がようやく動き出す。


「これ以上しつこくするようなら警察を呼ぶ。それでも来ると言うなら、俺が相手してやる」


 拳を構える神宮寺にストーカーは少し辟易する。


「き、君には聞いてないんだ! 黙っててくれ。俺はみずりんに聞いてるんだ――ねぇ、答えてよ。みずりん」


「…………」


 それでもやっぱり何も答えない七瀬さん。


 そんな七瀬さんにストーカーは畳みかけるようにスマホの画像フォルダを開いて、画像を見せる。


「ほら、ここ最近のみずりん、ずっとその男と一緒にいるよね? もう家も知ってるんだよ?」


 七瀬さんの家の画像を見て、とうとう七瀬さんは膝から崩れ落ちて、恐怖のあまり涙を流す。


 それを見た神宮寺は痺れを切らす。まるで、演技とは程遠い怒り。


「貴様っ!」


 神宮寺の拳が空気を貫通して、そのままストーカーの顔面に炸裂する。


 ストーカー男は一瞬で地面に這いつくばり、涙と血で顔を汚しながら、目を閉じて完全に気を失った。


 その後、神宮寺が警察を呼び、ストーカーは呆気なく捕まった。


 神宮寺と七瀬さんが二人して胸を撫で下ろす中、俺だけは、武者震いとは程遠い緊張感が身体を震わせていた。


 何せ、これから彼女は――


 俺のせいだ。俺のせいで七瀬さん――人気配信者【みずりん】は、これからネットで大炎上することとなる。


 ごめんなさい。本当にごめんなさい。


 そんな俺の謝罪も虚しく、次の日――超人気配信者『みずりん』はネットで大炎上した。

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