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憧れのラブコメ主人公のハーレム計画に加担していたけど、クズ野郎と分かったので、次こそは阻止して美少女たちを幸せにしようと思います  作者: 砂糖流
幼馴染

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16話 本当の気持ち

 次の日、学校に行くと高坂さんから話しかけられる。


「おはよ。杉田くん」


「うん。おはよう、高坂さん」


 何だか最近よく高坂さんと話している気がする。


 校外学習の件に関しては完全に許してくれたのだろうか……それともまだ謝罪が足りないのか。


「ねぇ、杉田くん。今日のお昼、一緒に食べない?」


 そんなことを考えていると、高坂さんからのまさかの誘いに驚きを隠せない。


 特に断る理由もないので、快く了承したものの、やはりと言ったところか、案の定と言ったところか、周りからの視線をチクチク感じた。


 当たり前だ。校外学習のお金を盗んだ泥棒と、その罪を着せられそうになった被害者が、昼食の約束をしているのだから。


 神宮寺は気にしないフリをしているのか、一瞥もくれなかった。


 神宮寺除く生徒たちからの痛々しい視線に耐え兼ねた俺は高坂さんに「じゃあ」と言って自分の席へ向かう。


 机に荷物を置いたところで、


「どうしてついてくるんだ?」


 別れを告げたはずの高坂さんがなぜか俺の席までついてきていたことを指摘する。


「もう遠慮はしないって決めたから」


 何のことを言ってるのか全くもって見当がつかなかった。


「杉田くん。ホームルーム始まるまで話そ」


 特に話す話題もなかったけど、それ以上に断る理由もなかったので、退屈だった時間を彼女と過ごすことに決めた。


 ◇◇◇


 昼休み。暇を潰すため、裕也に会いに行こうと思い、裕也のクラスに顔を出したのだけど、裕也は高坂結月と仲睦まじそうに昼食をとっていた。


 昨日、高坂さんが言っていたことは本当らしい。


 高坂さんは裕也に好意を抱いている。私のように、友情ではなく、本物の恋心。


 裕也が彼女に何をしたのか知らないけど、相当のことをしたのだろう。私を助けた時みたいに。


 私は本当に裕也のことを友達と思っているのだろうか。


 二人が話しているところを見ると、胸が爪で引っ掻かれるように痛む。


 こんなの友達に抱く感情じゃない。


 本当は分かってる。分かってるけど……。


「陽菜。ちょっと顔貸してよ」


 考えていると、教室前で友達の紗菜(さな)から声をかけられる。


 最近はずっと裕也と一緒にいて、あまり喋っていなかったから少し気まずい。


 私は二つ返事で了承した。


 紗菜についていき、連れてこられた場所は人気の少ない校舎隅にある踊り場だった。


 紗菜の他に、いつも仲良くしていた香織(かおり)もその場で待っていた。


「話すの久しぶりだね。陽菜」


「そうだね。香織」


 少しだけ空気が重い。


 そんな雰囲気の中、私から「それで話って?」と切り出す。


 二人は一度目を見つめ合ってから、


「陽菜最近、なんであの泥棒とつるんでんの?」


 泥棒という言葉に耳が反応する。


 裕也と話してる時に絶対聞こえてくる言葉だった。


 もしかして――


「裕也のこと?」


「裕也って、あんた……」


「ねぇ、陽菜。あんな泥棒とつるむのやめときなよ。何か弱みでも握られてるの?」


 諭すように香織から言われる。


 この二人からすれば裕也は校外学習のお金を盗んだ、ただの泥棒に過ぎない。


 学校の皆、裕也のことは『泥棒』という認識だろう。


 当たり前。だって裕也は自分から『盗んだ』と自白したんだから。


 でも私は裕也が到底そんなことをする人間には思えなかった。否、もし仮に盗んでいたとしても、何か事情があったとしか思えない。


 考えていると、泥棒(ゆうや)のことをよく知らない紗菜が話し出す。


「陽菜、前までずっと『光輝ー、光輝ー』って言ってたじゃん。もしかして……あいつのこと好きなの?」


 私は裕也のことが……。


 確かに裕也は優しくて、私の恋人のフリにも積極的に付き合ってくれた。光輝に酷いことを言われて、絶望の淵にいた私に寄り添ってくれた。


 正直、好きになる要素しかない。


 それでも私は認められなかった。認めたくなかった。


 私は迷っている。人を好きになることに怖がっている。


 好きになって、またあんな酷いことを言われたら……また絶望の淵に立たされたら……。


 そんな時、裕也の顔が思い浮かんだ。


 絶望の淵から助け出してくれたのは裕也だ。酷いことを言われて、怒ってくれたのは裕也だ。



 杉田裕也くんだ。



 裕也のことを考えているうちに顔に熱が集まっていく。


 私は……裕也のことが、


「好き。あり得ないくらい」


 私がそう言った瞬間、沙菜たちの表情に笑みが彩られる。


「え? なんで……」


 否定されるとばかり思っていたから、そんな二人の反応に驚きを隠せない。


「なんでって、友達の好きな人を否定なんてできないよ」


 紗菜の言葉に香織が「うんうん」と相槌を打つ。


「確かにあの人は泥棒って噂されてるけど、陽菜のそんな顔見せられたら、何にも言えなくなっちゃう」


 微笑んでくれる優しい二人に、私はもう一度「なんで」と呟く。


 だって、二人からすれば裕也はただの泥棒。


 誰だって話したことのない人間には簡単に悪い印象を抱きやすくなる。


 なのにどうして二人はこんなにも私を信じてくれるんだろう。


「陽菜。自分では気づいてないだろうけど、数日前ぐらいからずっと酷い顔してたよ」


「酷い顔?」


「うん。バレてないつもりなんだろうけど、私たちにはバレバレ」


 続いて香織も寄り添いの言葉をかけてくれる。


「多分、色々あったんだよね? 陽菜が彼に対して本気なら私たちは幾らでも協力するから」


 それを聞いて気がつく。


 二人はずっと私のことを心配していたから、さっきあんな厳しく言ったのだと。二人なりの優しさだったんだ。


 私が二人に感謝を伝えようとすると、紗菜が「でもその前に――」と言って、二人して私をまたしてもどこかへ連行した。


 そうして、連れてこられた場所は、裕也がいる教室。


 私はさっきいた場所にまた戻ってきた。

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