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後編:打倒セルパンテス!始まる永き戦い

 カナリアとファルコニウスの特訓は続き、ついに合同稽古が明日に迫った。


「どうだ。アイツの様子は?」


 鍛錬(たんれん)を続けるカナリアを見守るファルコニウス。

 そこに軍団長プレマテスが話しかける。

 2人は最古参(さいこさん)のエインヘリアルであり、ともに数々の任務をこなしてきた旧知(きゅうち)の仲だ。

 

「まだまだ未熟もよいところだ。素質は感じるがな」


 あれからカナリアは己の武器を理解し、それなりに戦えるようになった。

 だが、まだエインヘリアルとして実戦に出せる強さには至っていない。

 その理由は明白だ。


「そうか……」

何故(なぜ)、女神を(あざむ)いてまでアイツの記憶を残した?」

「……」


 カナリアに人としての記憶が残ったのは、装置の不備(ふび)などではない。

 プレマテスがそうなるよう細工をしたのだ。

 ファルコニウスにはそれがわかった。

 彼が誰なのか知っているからだ。

 

 しかし、それゆえに分からなかった。

 エインヘリアルはその強さこそが肝要(かんよう)

 強くあればこそ、神の戦士として畏怖(いふ)を示せる。

 人間としての記憶を受け継がなければ、カナリアは己の身体に戸惑(とまど)うことなく既に実戦に出ていただろう。

 なぜ、弱くしてまで人間の記憶を残した。

 

()()とは、それほどのものか……?」

「……」

 

 ファルコニウスの問いに、プレマテスは何も答えない。

 

「余計な苦しみを背負わせることになるかもしれんぞ?」


 人間とエインヘリアルの価値観はまるで違う。

 エインヘリアルが重んじるのは天界の神々の意志だ。

 人間の世界で生きてきた者には(あい)いれぬものもあるかもしれない。

 いずれカナリアと他のエインヘリアルの間に軋轢(あつれき)が生じてくるだろう。

 その時、弱い立場のカナリアがどうなるか……。

 ファルコニウスはカナリアの身を案じた。

 

「もしアイツがエインヘリアルに相応(ふさわ)しくないなら、手を(くだ)して構わん……」


 プレマテスはそう言い、去っていった。

 

明日(あす)の結果次第だな……」


 もし明日の合同稽古(けいこ)でカナリアが誰にも勝てなければ、師として責任を果たさなければならないだろう。

 夕焼けの中、ファルコニウスはカナリアを見つめた。



 ――――

 


「ソラ、どこにいるの……」


 夕暮れの中、ふらふらとした足取りでミーナが歩く。

 あの戦いでソラは現れた女神によって天に(のぼ)っていき、遺体も残っていない。

 それ故にミーナはまだ、ソラの死を受け止められずにいた。

 

「帰ってきてよ……」


 ソラの墓標(ぼひょう)の前で、ミーナは涙が枯れるまで泣き続けた。



 ――――

 

 

 そして、合同稽古の日がやってきた。

 任務中の者を除いたエインヘリアルが一同に介し、己の武をぶつけ合う特別な日だ。


「ジャララァッ!さぁ、俺様の相手はどいつだ!?」


 セルパンテスが意気揚々(いきようよう)と両腕の牙を打ち鳴らし、対戦相手を待ち構える。

 

「俺だ!」


 そこへ力強い名乗りを挙げ、カナリアが降り立つ。

 

「お前かぁ、少しは強くなったんだろうなぁ~?またつまらねえ戦いをしたら……」


 セルパンテスは脅すように長い舌を震わせた。


「今度は負けない!」


 カナリアが剣を抜き、構える。

 先日戦った時とは違う、力強い眼差(まなざ)しがセルパンテスの闘志(とうし)を刺激する。


「おもしれぇ……かかってこい!」


 (かね)が打ち鳴らされ、戦いが始まる。

 カナリアとセルパンテス双方が同時に飛び出し、激しく斬り合い始める。


「ジャラアアッ!」

「ふっ!はっ!」

 

 以前戦った時は読めなかったセルパンテスの攻撃に、カナリアは見事に対応していく。

 時には剣を、時には盾を使い、毒牙を(さば)く。


「ジャッッッ!」

「うっ!?」


 搦手(からめて)、セルパンテスの尻尾がカナリアの脚を払った。

 体勢を崩され、床に倒れ込んだカナリアに追撃(ついげき)の牙が迫る。

  

「ジャラァッ!」

 

 《持っているものは全て使え!》


 思い出す師匠の言葉。

 その言葉通りに……。


「ジャッ!?」


 振り下ろされるセルパンテスの腕へ脚を突き出し、掴む。


「おおおっ!」

 

 そのまま翔び上がり、回転、振り回したセルパンテスを床に叩きつける。


「ジャバハァッッ!」


 頭から床に叩きつけられた毒蛇が悶絶する。

 

「てめぇ……舐めんジャねえ!」


 起き上がったセルパンテスは攻撃の激しさを増し、カナリアに襲いかかる。

 先程までは新人の成長具合を見るための小手調べ。

 パワー、スピードともに増した本気の毒牙が烈風(れっぷう)のごとくカナリアに斬りつけていく。


「ジャララララァッ!」

「ぐっ……」


 (さば)ききれない。

 意を決したカナリアは盾を突き出す。


「ジャラッ!?」


 突き出された盾から強烈な光が放たれ、セルパンテスの目が(くら)む。

 

「……ジャ!?」


 目を開けるとカナリアの姿がない。

 盾だけを残し、消えている。


「どこへ……ジャギャッ!?」


 カナリアを探すセルパンテス。

 その両足の甲に金色のクナイが突き刺さり、床まで貫通した(やいば)が毒蛇の動きを封じる。


「おおおおぉっ!」

「ジャラッ!?」


 直上から響く雄叫び。

 見上げたセルパンテスの眼に、白銀(しろがね)(やいば)が映る。


「ギャジャアアァッ!」


 一閃(いっせん)――。

 カナリアの袈裟斬(けさぎ)りにセルパンテスはその身を深々と斬り裂かれ、(たお)れた。

 

「か、勝てた……」


 剣を持つ手が震える。

 どっと解ける緊張と、湧き上がる達成感。

 特訓中に見つけた盾のエネルギー障壁(しょうへき)を使った目眩(めくら)ましに、尾羽根(おばね)のクナイでの拘束。

 どれも即興(そっきょう)でやってみたが、なんとか上手くいった。


「ジャラ……てめぇ……」


 蘇生したセルパンテスがむくりと起き上がり、カナリアを(にら)みつける。

 その威圧(いあつ)感に思わず構えを取るカナリアだったが……。


随分(ずいぶん)と強くなったじゃねえか〜♪」


 セルパンテスは笑顔でカナリアの肩を叩いた。


「マスター・ファルコニウスのおかげかぁ?」

「あ……あぁ、師匠が俺を強くしてくれた」

「良い新人が入ったぜぇ~!」


 セルパンテスは周りに言い聞かせるようにカナリアを誉める。

 エインヘリアルにとっては強さこそ至上命題(しじょうめいだい)

 (おのれ)(くだ)したカナリアを、セルパンテスは仲間と認めたのだ。

 その様子を見て、ファルコニウスはふっと笑みをこぼした。


「いよっし、次は俺様が勝つ」

「……来い!」


 2人は構え、再び打ち合い始める。

 その後、カナリアは数多(あまた)のエインヘリアルを相手に勝った負けたを繰り返し、最後まで戦い抜いた。


 

 ――――


 

「ゴズマとケルベクの()み対決だあっ!」


 合同稽古の後、カナリアは(みな)豪勢(ごうせい)な食事を楽しんでいた。

 すっかり仲間として認められ、何人ものエインヘリアルが話しかけてくる。

 談笑(だんしょう)しながらもカナリアは考えていた。

 家族やミーナは今頃どうしているんだろう――と。


「ややっ!?これは!」

 

 その時、何かをキャッチしたツノゼミのエインヘリアル・ブラシダの角がアンテナのように変形し、先端が激しく明滅(めいめつ)し始める。


「どうしたブラシダ?」

「団長!巨人の船が1隻、不可侵領域に侵入しておりますぞ!」


 席を立ち、上座(かみざ)のプレマテスの元へ駆け寄るブラシダ。

 彼の角は天界の地上監視網(かんしもう)と遠隔接続しており、巨人族の侵攻があればそれをキャッチし軍団に伝える役目を持っている。

 

「どこに向かっている!?」

「お待ち下さい。……あっ、進路上に人間の村がありますぞ!」


 ブラシダの両腕が外れ、変形した両腕が空中に船の進路を示した地図を映し出す。


「あっ……!」


 カナリアは目を見開いた。

 あれは故郷の村だ。


「この前の村じゃねえか」

「巨人の奴ら、性懲りもなく来やがったか」

「あそこはここ数年で、巨人の支配地域と隣接(りんせつ)したからな」

「何故もっと早く気付かなかった!?」

「申し訳ありません!合同稽古なので接続を切っておりました!」


 腕が無いまま、ブラシダが平謝りする。

 

「んで、誰が行くんだ?」

「俺は行かねえぞ。(うたげ)の最中なんだからよ」


 誰が事態に当たるか喧々囂々(けんけんごうごう)とする中――。

 

「俺が行きます!」

 

 カナリアは声を上げた。

 

「行かせてください……!」

「うむ、この任務はカナリアに任せる」


 強い眼差しを向けるナリアの意気を、プレマテスは認めた。


「ビフレストを開け!」


 城から橋で(つな)がった浮島(うきしま)虹色(にじいろ)(とも)る。

 (にじ)(はし)ビフレスト――天界の者が地上に降りる際に使用する瞬間転移装置だ。

  

「初陣だな。しっかり決めてこい」

「はい!」


 ファルコニウスに肩を叩かれ、カナリアは気合十分に応えた。

 今度は自分の手で村を、家族を、友達を(まも)ってみせる。


「ゆけ、エインヘリアル・カナリアよ!」

「おぉ!」

 

 プレマテスの号令とともカナリアは走り出し、渦巻(うずま)く虹の光に飛び込んだ。



 ――――



「はぁ……はぁ……」


 息を(あら)げ、ミーナが逃げる。

 その背後からズンズンと地を鳴らし、巨人が追ってくる。

 再び現れた巨人たちによって、村は火に包まれる。

 先日の戦いで戦士団の多くが負傷(ふしょう)し、抵抗できる力は残っていない。

 

「ガアアアアアァッ!」


 巨人の咆哮(ほうこう)

 その風圧によってミーナの身体は浮き、地面に転がった。

 立ち上がる力のない少女に、巨人が迫ってくる。

 

「助けて、ソラ……!」


 ミーナは願った。

 幼い頃から一緒だった少年が助けに来ることを。

 女神に選ばれ、天に昇っていった友達が戻ってくることを。

 巨人が少女に狙いを定め、棍棒(こんぼう)を振り上げた時。


 願いは届いた――。


「ゴァッ!?」


 突然、降り注いだ虹の光。

 柱のようなその光から振られた刃が、巨人の首を斬り落とす。

 巨人たちがざわつく中、光の中から翼が広がり、舞い散る羽根とともに白銀(しろがね)の騎士が姿を現した。

 

「……ソラ?」


 巨人から自身を(まも)るように立ちはだかる騎士の背中を見て、ミーナが呟く。


「俺はエインヘリアルのカナリア!」


 カナリアは巨人たちへ剣を向ける。


「人々を護るため、この世界の調和(ちょうわ)のため……お前たちを討つ!」


 羽ばたき、巨人へ突撃する。

 エインヘリアルとして、ソラの(なが)い戦いが始まった。


 

 < 第1章:転生編 完 >


これにて一旦区切りです。

最後までお読みいただきありがとうございます。

世界はここから本編のプロローグ、ラグナロクへ向かっていきます。

そちらも合わせてお読みいただけると嬉しいです。


少しでも面白いと思っていただけたら

↓の★★★★★を押して応援してくれると励みになります。

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