izAnAi
とある人の依頼により、この小説を公開します。作者は私ではありません。
彼らの願いが結実することを、切実に願います。
───この文章は、とある小説への切実な批判のために書かれました。
①僕たちの馴れ初めについて
言歌さんと僕の馴れ初めは七月の二十三日。終業式を終えたあとの教室で起こった。
彼女は僕の前の席に挨拶もなくどっかりと座り込んで、背もたれを抱きながら発端の話をした。
「あんたさ、あの小説(※)のこと、知ってんの。」
※学校のパソコンの中にtxtファイルとして保存されていた小説。
あるいは、一冊の本からその編だけ千切られたように乱暴にステープラーで綴じられた冊子。
僕はその小説のことを知っていた。なんといっても、僕が発見者だった。
なんとかして葬れないかと策を弄したが、残念ながら失敗してしまった。
「じゃあさ、あれ、あんたが書いたわけ。」
言歌さんには悪いけど、そのときだけは僕は少しだけ不満そうな顔をした。
「ち、違いますよ。……僕だって、あれをいいものだとは思ってないですから。」
言歌さんは前髪が長くて、ほとんど目にかかっていたから、流した前髪に隠されていない方の片目だけで僕を睨みつけていた。
審美眼だというのなら、せめて両目を使ってほしかった。
「は?あたしと親密だと思われたら困るっつってんの?」
「い、いやっ、そういうことじゃなくて、その……そっちだって、嫌だろうな、っていうか。」
あの小説(※)のことを、僕も言歌さんも、認めているわけではなかった。
※幼馴染のイチカとソウスケが、強姦されたイチカのために二人で逃避行に出る物語。
そのほか、中尾(実在の高校教師、担当教科数学)が登場する。
「うちら、吹奏楽部ってことになってるし、あたしに関しては強姦されたことになってっし、キャラも全然違うし。名前だけ勝手に使ってあんなもん作られて、うすら寒いんだよ。」
「僕だって、被害者なんですよ……僕だって、あれを絶対に葬らなきゃいけないって、わかってるんです。」
僕にとって、この夏休みの目標とは、あの小説を葬ることだった。
既にいろんな人に読まれてしまったから、そのハードルは最初期よりもよほど高くなってしまっている。
言歌さんは、僕が思っていたよりも強い言葉で言ったからか、少しだけ訝しげだった。
「あんたさ、結構怒ってんの……?」
「え?」
「いや、あんまり使わなくない?葬る、ってさ。しかも、絶対に、って。あたしだって迷惑してるけど、正直実害っていうほどはないし。でも、あんたがそんなに怒ってるなら、なんか実際に影響が出ちゃってんのかな、って思って。」
言歌さんはそのとき、僕のことを心配してくれていたのではないかと思う。
「ぇーっと、さ……嫌だった?うちに、話しかけられんの。」
言歌さんは、少しだけしょんぼりしているように見えた。
決定的に、何かを勘違いしているような気がして、しかし、僕はその論理について話すべきかを躊躇した。でも、結局言歌さんからの問いかけには返信しなければならないし、言ってやろうと思った。
「僕も、実害ってほど……影響はない、です……話しかけられるのも、……僕、友達いないから、新鮮で……嫌とか、思わないです。」
「お……ぅ。じゃあ、いいけどさ。」
少しだけきまずい沈黙が落ちた。言歌さんはそこで、根本的な疑問を思い出したみたいだった。
「じゃあ、なんでそんなに怒ってんの?あの小説にさ。」
僕と、言歌さんと、数学の中尾先生の名前を勝手に拝借して、霜山町の名前も使って、好き勝手に書かれた小説。僕たちの関係性や、僕たちの感情を勝手にいじくりまわされて、全く口に馴染まない台詞を、したり顔で言っている僕が、描写されている。
問題なのは。
「あの小説が、面白くないこと。」
「え?」と困惑した言歌さんは、少しだけ考えるような仕草で視線を彷徨わせた。
「そこかなぁ……?」
そこだよ。言い放ってやろうとしたけど、言歌さんは僕のことを知らない。問題文を読まない状態で答えだけ聞かされても、納得できるはずはないかと思った。
「少なくとも、僕たちという存在を使っているわけなんだから、そこに対する敬意みたいなのは、持っているべきだと思うんです。でも、まぁ別になくてもいいですよ。あの小説には実際にそれがないみたいだし。」
僕たちは、名前くらいしか合ってなくて、所属しているコミュニティも性格も、これまでの人生の何もかもが違う。
「でも、面白くないのだけは駄目だ。」
人間が生み出した、最も価値のあるもの。それが一体何なのか、僕は、どんな産業機械も、どんな美味しい料理をも差し置いて、コンマ二秒で言える。それは、”物語”だ。
絵画、小説、音楽、アート、イラスト、およそ芸術や創作と呼ばれるもの全てに通ずる、物語の行使する力。それが、人間が生み出した、最も価値のあるものだ。そして、物語には唯一絶対のルールがある。
それは、面白くないといけない、ということ。
「どれだけ難解でも、社会規範から外れていても、モチーフに敬意がなくても、面白ければ、許されるべきだ。逆に、どれだけ平易でも、模範的社会規範を持っていても、モチーフに敬意があっても、面白くなかったら駄目だ。」
僕は、物語の絶対原理を語った。
「面白くないものは、罪だよ。」
だから、僕はあの小説を葬ろうとしている。
あの小説が、面白いものでありさえすれば、僕はそれを傍観しただろう。でも、そうではなかった。僕の名前を、僕の人生を、僕の世界を、勝手に侵入して使い倒して、片付けもせずに出ていくような、そんな真似をして出来上がったのが、あれなのか?
なら、僕が断罪するしかない。あの小説を、葬るために。
「なんか、あんたってさ。ぽくないね。」
「すみません、急に……」
「いや、そういうことじゃなくてさ。ほんと、あの小説のソウスケっぽくない。」
それは、言歌さんの方も同じだろう、と思った。
言歌さんは、初めてそこで微笑んで、僕に言った。
「でも、そっちのがいい。かっこいいじゃん。そういうの。」
言歌さんが言ったそういうの、がどういうのを言ったのかよくわからなかったけれど、褒めてくれたんだっていうのはわかったから、特に何も言わなかった。無視したみたいになった僕に、言歌さんは気分を損ねた様子もなく、机の引き出しに入っていたノートを千切って僕の机に置いた。
大雑把な切断の跡に、思わず顔をしかめる。
「ね、名前の漢字考えようよ。」
「漢字……?僕たちの、ですか……?」
「そ。なんか腹立つじゃん。うちらじゃないうちらが、勝手に生きてるみたいにされてんの。だから、うちらが新しい名前名乗んの。あたしたちはあいつらとは別物です、って知らしめてやるためにさ。」
「……親から貰った名前ですよ……?」
「だから、漢字だけだって。それに、戸籍まで変えれるとか思ってないし。」
言歌さんは、「イチカ」「ソウスケ」と書いて、「ん」とシャープペンを差し出してきた。
「それ……考えて、なにに使うんですか?」
「あたしは……今日からこっちの名前で名乗る。……まぁ、そんくらいかな。漢字を変えるんだから、できれば文字にしたいけど……名札とかないし……ノートの名前くらいはこっちにしとこうかな。」
「なるほど……」
僕は、言歌さんから借りたシャープペンで自分の名前の端に触れた。ソウスケ。
「ちょい、違うって。」
「え?」
「お互いに決めんの。あんたはあたしの、あたしは、あんたの決めたげる。」
お世辞にも人の表情を読むのが上手いとは思わなかったけど、言歌さんはどこか誇らしげにどや顔しているみたいに見えた。
少なくともノートの名前とかに使われるような名前を、僕が決めてしまってもいいのか、少しだけ躊躇した。でも、言歌さんはもうああでもないこうでもないと考え始めていて、今更やめるなんて許してくれないだろうから、素敵な名前をつけられるように覚悟を決めた。
「ていうか……そこの席じゃないですよね。これ、誰のノートなんですか……?」
「え?知らん。いいっしょ、1ページくらい。」
僕は何個か候補を出していって、でも、ノートに書くことはできなかった。言歌さんに見られて酷評されたらと思うと怖かったし、そもそも、言歌さんが思いっきり顔を伏せて書くので、僕がペン先を差し込む隙間なんてなかったからだ。
「っし、これにしよ。」
そう言って顔をあげた言歌さんの手元、たくさん書かれた候補が見える。
創助、双輔、相介……どれでもない僕の新しい名前が、ソウスケの下に書かれていた。
「葬透、センスあるっしょ、うち。」
言歌さんがくれた、新しい名前。悔しいけど、僕はその名前をすぐに気に入ってしまって、僕はその名前で生まれてくることが決まっていたみたいな変な納得すら持ってしまっていた。
「ぇ、気にいらん?」
「いや……すごい、素敵な名前だ……ありがとうございます。」
「ぃ、や……別に、そんな……かしこまって言われたら、……照れるんだけど。」
恥ずかしそうに目線を逸らす。そこで、言歌さんは話をする人とちゃんと目線を合わせる人なんだと気付いた。
「んで、あんたは。あたしに、どんな名前つけてくれんの?」
僕は、イチカの下に手が震えないように二文字の漢字を書いた。
言歌さんの声は、女の子としても少しだけ高めで、ちょっとだけ儚い感じがする。でも、実際に話していると、儚さに消えてしまうような弱さがあるわけじゃなくて、むしろ忘れられないほどの強さを持ってるように思える。
君が言った声は、思わず歌にして響かせたいくらい、綺麗なんだ。
イチカ
言 歌
言歌さんの反応を見るのは、少しだけ怖かったけど、言歌さんは、多分怒ったりはしてなかったと思う。
少しだけ潜めた声で、言歌さんは聞いた。
「あんたさ……うちの、声のことばっか、……考えてたわけ……?」
「ぇ、と……うん……」
思い返してみると、僕のつけた名前は、言歌さんのどんなところが素敵か、と思考した内容の全てを現しているように見える。わざわざ言うつもりもなかったことが、思わぬ形で露呈して少し気まずい。
「恥ず……別に、自信あるとかじゃないのに。」
「そ、そっか……ごめん。」
「なんで謝るし。……素敵な、……名前じゃん?……大事にする。」
立ち上がった言歌さんは、どたばたと忙しなく走って行って、扉の横に放り投げていたままだった鞄から、いろんなノートを取り出した。僕の机にそれをどさっと置いて、自分の名前を二重線で消し始める。そして、新しい名前をそこに書いた。
「せ、」
「ちょっと待って、あんたマジ……?」
僕は、なんの言葉を検閲されたのかもわからずに黙らされた。呆れたみたいにため息をついた言歌さんが、種明かししてくれる。
「いまさ、名字で呼ぼうとしたくない?」
「ぇ、はい……そうですけど」
「言歌……!いまこんだけ名前の話したんじゃん、そっちで呼んでよ。あんたがつけたのにさ、呼んでくれないんだったら、意味ないでしょ。」
「そ、っか……じゃあ、……言歌……さん。」
「ん。いいじゃん、葬透。」
それから、言歌さんはインスタの名前変えよー、とかSNSをいろいろといじくったみたいだった。
こんな田舎で、もうスマホを持ってて、SNSとかをやってるのに、結構驚いた。僕は少し前まで、子供携帯で親と連絡してたし、買ってもらったスマホも、iPhoneじゃなくてよくわからない性能の低いやつだった。
「で、インスタやってないの?」
僕のスマホは重すぎて起動するのに数分かかったりするから、LINEはパソコンに入れていたし、パソコンでも使ってるのはTwitterとDAWくらいだったし、言歌さんと連絡先を交換できるようなアカウントは持っていなかった。
仕方なく電話番号を書いた紙を言歌さんはくれて、僕も家の固定電話の番号を書いて渡した。
「うわぁ……中学ぶりなんだけど、電話番号。」
「スマホ持ってない人も、……結構いるじゃないですか。うちのクラス。」
「まーね。でもあたしの妹の世代とか、もうほとんど持ってっけど。」
兄弟がいないから、世代間のテクノロジー浸透の度合いについて僕は無知だった。
「でも、クラスメイトの女子の電話さ、親が取ったりするかもじゃん。恥ずかしくないわけ?」
「……友達できたって、喜んでくれるかも。」
「っ、とさぁ……ちょっと恥ずいとか思ってたあたしが馬鹿みたいじゃん……嬉しそうな顔すんな」
両親を安心させてあげられるかもしれない、と思っていたのが顔に出たみたいで、言歌さんから軽く頭を叩かれる。
机の上のノートとかスマホを片付けた言歌さんは、鞄を持って「んじゃ、あたし先帰んね。」と小さく手を振った。
「また明日ね、葬透。」
明日から夏休みだというのに、言歌さんはそんなことを言って帰った。
②僕の希死念慮について
①から大体一週間ほどの出来事については、特筆するべきことはなかったので詳しくは記していない。
おおまかには、大体、お昼の13時か14時頃に電話がかかってきて、ほとんどは平日だったので家の中には僕しか居らず、ちょっとだけ緊張した声の言歌さんが「ぁ、あの、……葬透くん、居ますか?」と言うのに「はい。葬透です。」と返して「最初っから言え!」と怒られるというのをやっていた。そこから、僕がいつも行く小さな公園に行って、ブランコを漕ぎながらいろいろと話した。
僕が音楽を作ったりしているというのを話して、好きな音楽について話していた時間が多かったように思う。
その週の土日は、言歌さんは友達と一日中遊んだらしく、17時頃に電話が来て、家族から取り次いでもらって電話に出た。
「きょ、……今日は親、いたんだ。」
一体電話口でどんな第一声を放ったのか気になったけど、聞かないでおいた。
言歌さんは夜まで友達と遊ぶようで、この小さな町の中でそんなにも遊ぶことができるのに感心した。それで、少しだけ話をして、言歌さんは電話を切った。本当に、僕と話すためだけに電話をかけてくれたらしかった。
夕飯を食べて、明日から仕事という両親が20時には寝たので、ダイニングのカウンターに並べていた父親のウイスキーを拝借した。紙コップにバレないくらいをくすねて、冷蔵庫の中に五本くらい入っていたストロングゼロを一本取った。ベランダに行ったら、母親が半ばでやめた煙草の吸殻があったので、一際長いのを一つ目星をつけておいた。
自分の部屋で紙コップのウイスキーを呑み下す。なにがいいのかもわからないが、吐き出しそうになる味を我慢して嚥下する。ストロングゼロは三回くらいに分けないと飲み切れなかった。こちらは、ウイスキーよりはよっぽど飲み物の味がしたから、あまりきつくはなかった。でも、わざわざ味を楽しむために飲むことはないだろうな、と思った。
コンビニで買っておいたマッチを持って一階のベランダに戻り目星をつけていた煙草を取る。裏庭まで行ってマッチで煙草に火をつけて、母親を真似て吸い込む。酒よりもよっぽど、こっちの方が何がいいのかわからなかった。これに一箱300円も払っているなんて、もっとわからなかった。
すぐに変な味がするようになったので、マッチは土に埋めて、煙草は灰皿に戻しておいた。
随分といい感じに酩酊してきたので、階段を上って自分の部屋に戻った。徒労を嫌う脳みそが、そのときばかりは絶え間なく思考していて、僕は一時間ほど、生まれてくるアイデアを本能のままに記述する人間式筆記装置となった。
鍵をかけていた引き出しから睡眠導入剤を服用して、こみあげてきた吐き気をゴミ袋にぶちまける。自分を縛り付けている掃き溜めにもみたない常識がほどけて、心の全てが”物語”を追求する。DAWには、正気の自分では生み出せないトラックが積み重ねられていく。
頭蓋骨の裏側をぐずぐずに舐め回す万華鏡のような曼荼羅模様が、ぐるぐると脳みそに吸い込まれていった。
ふと目を覚ましたとき、僕は小さな公園のブランコに腰かけていた。
裸足の足に小石が刺さっていて、今更痛がった。服はそのままだったけれど、なぜかジャケットを着ていた。
僕は少し前に見たWikipediaの睡眠導入剤のページを思い出した。夢遊病というやつだろうか。
音が鈍いと思っていたら、イヤホンをつけていた。それを外して、絡まったコードの先に、持ち運び型のCDプレイヤーがついていた。
常習的にこんなことしていたら、そのうち死ぬだろうなと思った。
「なにしてんの、葬透。」
そんなときに限って、僕は言歌さんと出会ってしまった。
「あんたさ、飲んでるでしょ。」
「……。」
僕の胸ぐらを掴んだ言歌さんが、においを嗅ごうとしているんだと思って、顔を逸らした。
「煙草も吸ってんの。……なに考えてんの?」
僕はそれについてを説明するのが、心底面倒くさかった。
百万回再生に回った曲のトラックを見せてやろうかとも思ったけど、僕のスマホは全然やる気をだしてくれなかった。
「はぁ……もういいわ。」
僕から手を放した言歌さんは、少し棘のある声をしていた。また、独りか。そんなことを思った気がする。
でも、そんな僕の内心とは裏腹に、言歌さんは隣のブランコに腰を下ろして、電話をかけ始めた。デジタルな木琴の発信音のあとで、言歌さんはお父さんかお母さんか、親に「ちょっと遅くなる。」と言って通話を切った。ママ、と口走ったから、お母さんだったのかな。
「んで、なんでそんなんなってんの?」
僕は、腰を据えて、僕と向かうことに労力を発揮します、といったようなことをちゃんと見せてくれた言歌さんに、感動していたんだと思う。だから、僕は詳らかに音楽と人生と命のことを語って、それでも、「消えたい」の一言だけは、言わなかった。
「あんたが天才なのはわかるけどさ。……んなことばっかやってたら、死んじゃうよ?」
「……もしかしたら、天国はこの世界より居心地がいいかも。」
「天国に行きたいわけ?」
言歌さんは、興味がなかったのか、僕の好青年を逸脱した行為と人格についてを混同しなかったのか、さっきまでの刺々しさを感じない声で話してくれた。その声に、安心する。
「遠いところに行きたい、かも。」
「遠いって?羽田空港とか?」
「それ言歌さんが行きたいところですよね……?」
「具体的に言ってくんないとわかんねーって。どこだよ、遠いとこ。」
遠くで、花火の音がした。隣町の小さな納涼花火大会が今日だったことを思い出した。脳裏で、火の花が咲く。
「知らない花が、咲いてるところ、とか?」
「お、ロマンチックじゃん。いいね。」
僕も、誰も、言歌さんすらも、誰も知らない花が、咲いてる場所。
ただ、僕が、この体に埋められた才能だけを発揮して生きて行けるような場所。もっと、”物語”が自由な世界に、僕は行きたい。誰も、その花の名前を知らない。植物学者も、植物図鑑も、植物園も、誰も知らない花がある場所。この世では、ない場所。
本当は、今すぐにでも死んでやりたかった。どうして、素晴らしい作品の生産者に、模範的な人間性が強制されるのか。どうして、商業的に売れないチャレンジングな作品が醸成されない社会がよしとされているのか。クソくだらない現実から、息絶えてやりたかった。
言歌さんは、それ以上その話題に触れなかった。僕も、いつ口が滑って「死にたい」と言ってしまうかわからなかったから、ありがたかった。
「さっきさ、……あんたのお母さんから、彼女ですか?って聞かれたわ。」
「……それは、……ごめんなさい……」
僕の性格は父親似だったから、元気すぎるほどに元気な母親の言動を全く予測できなかった。
「言歌さんはそういうのじゃないって、ちゃんと伝えてはいたんですよ……?」
僕が友達ができた、と言ってしまって、親が帰ってくる頃、毎日家にいないから、そう誤解されるのも仕方はないが、夕食のテーブルという絶対に逃げられない場所で聞いてくるのは勘弁してほしかった。
「次は……もっとちゃんと、否定しときます。」
僕がそう言うと、隣のブランコから蹴りが飛んできて、がしゃん、と鎖が音を鳴らした。すごい、そこから蹴りが届くんだ、足長いんだな。と、自分でもわかるくらい変なことを考えていた。言歌さんは、見るからに不満そうだった。
「そんなに嫌かよ。あたしが彼女だと思われんの。」
「ぁ、ち、違いますって!……その、むしろ言歌さんが誤解されるの嫌かと思って……!」
「……あんたって、あたしの声しか好きじゃなかったんだな、って思っただけだから、別に気にすんなって。」
絶対に気にしないといけないんだろうな、と直感的に思った。言歌さんの目は、ずっと僕を睨んでいる。
僕はすぐさまに言葉に窮して、そこで流れたいくらかの沈黙の時間に過呼吸に陥りそうだった。
「あたしは、」と言歌さんが切り出す。
「あたしは、さ。ミカから……付き合ってんの?って聞かれて……ま、そんな感じ……って。」
「……。」
「言ったけど。」
ミカさんは、言歌さんといつも一緒にいる友達だった。今日も、その集まりで遊びに行ったみたいだったし。頭の中を流れるのは、そういう他人行儀な考えばっかりで、僕の本当の心の中は、全く停滞していた。
「なんか言えし。」
再び飛んできた蹴りが僕のブランコを揺らす。
「んもぉ……仕方ないなぁ。」
言歌さんが飛び降りて、ブランコが微かに揺れる。言歌さんはそのまま僕の前に来て、両手を広げていた。
それが意味するところがわからず、僕は言歌さんに手を引かれて立ち上がったところで、やっとその意味を理解した。
「ほら、お試し。これでぞわってしたら、あたしのこと嫌いってことでしょ。で、きゅんっ、てしたら、」
「……したら……?」
「あたしのこと、好きってことじゃない……?」
言歌さんは、高校生男子の見境の無さを知らないんだろうか。それとも、知ってて詭弁を並べているだけなのだろうか。
「いま、酒臭いし、煙草臭いから、やめといたほうがいいですよ……」
「あたしも一日中遊んで汗臭いからだいじょーぶ。ぁ、嗅いだら殺すから。」
と言って、言歌さんは僕の胸に飛び込んできた。
思わず抱き留めて、言歌さんが意外と小さかったのに気付いた。もちろん、男子の平均身長くらいの僕と比べて、言歌さんの方が身長が低かったのは知ってたけど、僕の記憶の中では、ずっと、言歌さんは大きな存在で、女子の中で一番背が高いから、そういうイメージになってたんだと思った。
それなのに、僕が図らずも抱き留める形になってしまった言歌さんの体は、小さくて柔らかくて、妙に心が高鳴った。
夏の夜は暑くて、半袖だった言歌さんの腕の熱が、ジャケット越しに伝わってくる。ここ数年で水を飲ませない部活は滅びたし、最近はむしろ水を飲まないと怒られるくらいになっていた。地球温暖化とかいう言葉は、親のころにはそんなに取り沙汰されてなかったらしい。
「んふ……やっぱ、酒くさ。」
「じゃあ、離れてください……」
「じゃあ腕ほどいてよ。力強いし、どきどきしてんの、めっちゃわかるけど?」
言歌さんの声が、吐息と一緒に耳をくすぐった。
知らない花。遠いところに行くとしたら。言歌さんは、連れてはいけないと思った。この人は、死んじゃいけない人だ。
僕が、死に誘っていい人じゃない。じゃ、ないのに。
誘いたくて、仕方がなかった。
③僕の希死念慮について2
8月15日。霜山祇園祭の日だった。祇園祭なんて大層な名前をしているけれど、その実情は町の中で一番大きな公園に屋台が並んで、その傍の高台の下にある田んぼから一発ずつ花火を打ち上げるだけのイベントだった。駅に自動改札機が置いてないような町にしては、頑張ってるんじゃないかと思う。
僕は家族と三人で祭りに行って、母親が知り合いと会って途中離脱したので父と二人になった。家族で行こうと言い出したのは母親だったんだけど。もうそういうのに慣れ切った僕と父親は、二人で焼き鳥を食べて、小さな抽選会の抽選券を貰った。抽選は特になにもあたらなくて、小腹が空いたのでクレープを食べて、父親は焼きそばとビールを飲んでいた。片手間に小さなステージで歌っている演歌歌手の歌を聞いて、僕がクレープを食べきったのを見て、父はもう帰るか?と聞いてきた。父親は明日も仕事だった。
少し散歩して帰るから、先に帰ってて、と伝えて、僕はいつもの公園に行った。
「やーい、まんまと来てやんの。」
いつもよりテンションの高い声で、言歌さんがブランコを漕いでいた。
さすがに浴衣は着てなくて、こんな小さなお祭りで着たって楽しくはないか、と思った。
「あたしに会いたくなった?」
「散歩したくなっただけです。」
「は?つめた。」
ブランコの遠心力で加速した蹴りを、間一髪で避けた。
でも、自分でもどうしてわざわざここに来たのかわからなかった。言歌さんの隣に座った。
「ね、流れ星が流れたらさ、なんてお願いする?」
「え、いきなりですね……うーん、なんだろ……」
夏の真っ黒の空に視線を投げて、僕はてっきり花火の話題を振られるものだと思っていたから返答に思考を要した。
言歌さんは、三回くらいブランコを濃いで、ざざー、と地面を擦りながら停止した。
「消えたい、ってお願いすんでしょ?」
なんでかわからないけど、吐き気を感じて、息を止めた。
バレてた。バレてた?隠してるつもりだったんだな、とそのときに気付いた。時間を稼ぐための醜い反問をした。
「言歌さんは……なに、お願いするんですか?」
「んー……?夫婦円満とか……?」
どこのどの夫婦への円満を願うつもりなのかわからなくて、呆けた顔をしてしまった。そんな僕を見た言歌さんは、「どんかーん。」と平坦な声で言って、僕のブランコに座ってきた。
「ちょ、狭いですって」
「は?うちのケツがでかいっての?」
「いやそんなこと一言も言ってないです!」
結局僕の足の間に座った言歌さんは、前髪で隠れている方の顔で振り返った。
「うちらの、夫婦円満。」
「……夫婦じゃないじゃないですか。」
「じゃあなに?恋人?」
「恋人でもないし。」
「じゃあ、あたし都合のいい女だ。ここでブランコ漕ぐだけの友達なんしょ。ブラフレだ。」
薄着の言歌さんと密着しているのに少々不都合が出てきたので、一旦言歌さんを立たせて、僕もブランコを下りた。
「お祭り、行こ。」
「……絶対、高校の人来てますって。」
「いーじゃん。やっぱ、嫌?あたしが彼女だと思われんの。」
「嫌とは……いいませんけど。」
「んじゃ行きまーす。」
どん、と背中を押されて、無人の住宅街を歩いていく。お祭りをしている公園までは、五分くらい歩かないといけなかった。
街灯がなくなったところで、また背中をどつかれる。次は、甘やかな抱擁も一緒だった。
「あんさ。手、繋ぐ……とかしたらさ、……流石に帰る……?」
聞こえないふりをして歩こうとしたら、結構な強さの力で反抗された。ずずず、と地面を擦る言歌さんの靴の音がした。
観念して停止して、暗いのをいいことに手を差し出した。
「……人が、いないとこなら。」
「この町、どこ行っても人いないって。」
平然とした声音の割に、ぎこちない力加減で手を繋ぐ言歌さん。どんな顔をしているのかは見えなかった。
「やった。夏休みの思い出、できちゃった。」
「お祭りが?」
「いい加減にしろアル中鈍感。」
「ひど……」
手を繋いだまま体当たりしてきた言歌さんの身体を、転ばないように全体幹で受け止めた。
「あんたと、急接近せいこ~、の……思い出?」
そうですか、とか、すげない返事をした。
手汗が酷くなってきたから、手を放そうとしたら、両手で握りしめられて阻止される。何度かそういう攻防を繰り広げているうちに、祭りの明かりが見えてくる。もう一度、手に力を込めた。
「ちょ……もう、終わり……?まだ、人いない。」
熱烈に握ってくる力が、強いのに、所詮女の子の力でしかなくて、急に愛おしくなった。
「手汗、拭きたいだけ……なので。会場、つくまでなら。」
「うんっ……!わかった。」
結局、会場についても手は離してくれなくて、僕はその日初めて偶然遭遇したミカさんと話をする羽目になった。
してやったり、みたいな顔の言歌さんが可愛かった。
僕は最初に来たときにいろいろと食べていたせいでお腹は空いていなくて、言歌さんが食べているのを傍から見ているだけだった。たこ焼きが美味しそうだったので一つねだったら断られて、その割に、チョコバナナとか焼き鳥とかシェアに向いてないものばっかり食べかけを差し出してくるので、結局何も食べなかった。
わたあめを口に詰め込んだ言歌さんと歩いていると、繋いでいた手をぐいぐいと引かれた。顔を見ると、口に詰め込み過ぎて喋れなかったのだろう、必死に視線を送る言歌さんの目とかち合った。
金魚すくいの屋台の前だった。
言歌さんはめちゃめちゃ下手くそで、早々に自分のポイを駄目にして、僕のものまで使ってやっと一匹捕まえた。水が入ったビニールの巾着の中で、真っ赤な金魚が泳いでいる。その水の奥、切れ長の瞳をした言歌さんが見えた。
「あ」と突然言った言歌さんに、少しだけ驚いた。
あらかた屋台を周り終えて、隅のベンチでくつろいでいたときだった。
「今からさ、うち来なよ。」
うち、というのが一人称だったのか家だったのか判断がつかなかったが、一人称だったら意味が通らないと思ったので、すぐに判断がついてしまった。
「いやいやいやいや……」
「は?そんな嫌がんなし。こんだけ手繋いでんの見せつけたんなら今更っしょ、家くらい。」
家くらい、なんてことが言えるのは、家がいつも片付いていて、いろいろと覚悟が決まっていて、それか軽薄な人だけだ。言歌さんは……多分、家が片付いていて、もう自分がなにを言われてもいいような覚悟とかもしていて、でも、軽薄な人ではないんだろうな、と思った。
僕は丁寧な案内でお祭りの会場のすぐそばにあった言歌さんの家に招かれて、ご家族に「友達」として紹介された。流石に、男を連れてきたことに対する家族の反応は、あの言歌さんにも羞恥心を思い出させたらしく、少し恥ずかしそうにしていた。
僕と言歌さんは電気を消した和室の縁側で、蚊取り線香を挟んで外を眺めていた。住宅街からは少し外れていたから、広い田んぼが薄闇の中に広がっていた。
「最初にさ、あの公園で会ったとき。正直わかったんだよね。あんたが、死にたがってんの。」
虫の声くらいしか聞こえない静謐に馴染ませるように、言歌さんは言った。
「聞こえないよ……って、聞こえないふりしたけど、聞こえちゃった。遠いとこ、行きたいんでしょ。」
遠いところ。それは、多分一般化したら天国、ってことになる。僕は、このクソな世界から逃げるために、新しい世界に行きたかった。その方法として現実的に可能だったのが、天国の存在を信奉することだった。
言歌さんは、うぁー、みたいな間の抜けた声を出して身を投げ出した。座布団を枕にして、足をぱたぱたと遊ばせた。
「あの小説、さ。久しぶりに読み返した。したらさ、ほんっとクソみたいな世界すぎて、読んでられんかった。ほんっと、なにあれ、って思ったし、あの冊子は燃やしちゃった。ま、どうせまたどっかから出てくるんだろうけど。」
僕も、そう思う。あれを葬る方法を、僕だって燃やすくらい考えた。けど、あれはどこかから現れて、当然みたいに自分の存在を絶やさない。ただデータを消すとか、燃やすとかだけじゃ、葬れないんだろうなって思った。
「うちらの人生っていうさ、最っ高のもの使って、あんなんが出てきたって思ったら、あたしも腹立ってきた。」
だから、逃げるしかないんだ、言歌さん。僕はそう言おうとしたと思う。
このクソな世界からも、逃げるしかない。あのクソみたいな本からも、逃げるしかない。天国に行って、知らない花とそれに誘われた蝶を眺めて、あの小説が僕たちのことだってわかんないくらいに、あの小説から離れるしかない。転校とか、退学とか、自殺とか。
「だからさ、作り替えよ。」
「ぇ……は……!?」
「なにそれ、うちの真似?似てねーし」
「ちがぅ……作り替えるって……」
「あの小説、あたしたちが新しいのに作り替える。てか、データ消したり、燃やしたりして全部壊して、あたしたちの本当の小説を作る。それで、クソみたいなあの小説を、あたしたちの最高の小説に上書きしてやんの。名案っしょ。」
壊して、作り替える。あたらしく、あの小説を作る。
気になったから、一応聞いてみる。
「小説、書いたこと、あるんですか?」
「いや、ないっしょ。あ、書くのは任せるから。あたしは、誤字チェックとかしてあげる。」
「なんで僕が書くんですか……」
提案したのは言歌さんだし、作業量が違い過ぎるし、いろいろと言いたいことはあった。
言歌さんは、なんでもないみたいに言った。
「あんたがやんないと、意味ないじゃん。」
それは一体、どういうことだったのか。僕はわかっていた。
「面白くないのは、罪、なんでしょ?うちら、絶対面白い人間だし。面白いの、できるって。」
今すぐにでも息絶えてしまいたい。僕はあの日、あのブランコを漕ぎながら、そんなことを思った。そして、新しい世界に向かう逃避行に、君を誘おうとしていた。君が示してくれた名案は、僕に、ある考えを芽吹かせた。
あの小説を壊して、あたらしい小説を作る。
この世界を壊して、新しい世界に誘う。
テロルに目覚めたわけじゃない。人を殺そうってんじゃない。爆弾魔になろうということでもない。
僕一人で逃げるんじゃない。君と、生きて笑うこと、そんな世界に、誘うこと。そのために。
その第一歩として。
「んー?やる気に見えるんですけど~?葬透くん」
揶揄うみたいに言った言歌さんの手を強引に取った。
「ちょ……急に、なに……びっくりすんじゃん。」
「一緒に、作りましょうよ。小説。」
この世界を、もっと”物語”本位の世界にする。いずれは、僕の音楽で。でも、その第一歩として、これほど相応しい仕事はない。
僕と、君の、小説を書く。
「せっかく付けた名前があるから、言歌と葬透って表記にして、」
「あ、んじゃさ、プロローグ的なとこにさ、これはあの小説がクソだー!って思いながら書きました、って注釈入れよ」
二人でその小説について語り合った。
面白いものができれば、面白くないものは葬り去ることができる。僕たちなら、やれる。だって、当事者は僕たちだ。
「ね。流れ星が流れたらさ、なんてお願いする?」
言歌さんは、同じ問いを繰り返した。
「その流れ星で、全部滅べってお願いする。」
「んで、どーすんの。」
「二人で、新しく作りましょう。」
言歌さんは、僕によりかかって、「いーじゃん」と賛同してくれた。それで、僕の首筋に口づけして、次を求めるように僕のことを見た。
「んで、どーすんの。」
あたしたちの、関係。
④僕たちのこれからについて
僕と言歌さんは、ある程度の構成とかいろいろを考え終わって、その日は、8月32日だった。
東歴2010年の霜山高等学校夏季休暇は、今日で終わりを迎えようとしていた。
「あー……全っ然遊び足んない。結局、ずっとうちで遊んでばっかだったし。もっとデートとかしたかった。」
僕の膝でぼやいた言歌さんが言った。確かに、蚊取り線香の匂いの中で、外に出るでもなくずっと小説のことばっかりだった。
「来年は、羽田、行きましょうよ。」
「え、めっちゃあり。首都なのに、なにげ行ったことないんだけど」
「僕もです。」
僕はたしか、もう小説の最初の方をパソコンで書き始めていて、言歌さんは楽しそうに観光スポットのサイトを見始めた。
「その小説、できたらどーしよっか。」
残念ながら夏休みの間には完成しそうもない小説を揶揄して、言歌さんは甘い声で言った。
僕たちのこの顛末を書き記したものを、新しく学校で流行らせる。でもそれは、僕たちの関係性を知らしめることでもあった。
「どーせならさ、全世界に発信しよ。宇宙とかにも。」
「……どっか違う世界とかに届いたらどうするんですか。」
「めっちゃいーじゃん。やったれやったれ。」
僕はあまり気乗りしなかったけど、それから相応の労力を以て作るものを、学校の不思議な小説として終わらせるのも味気ない気がしたから、言歌さんに「はい」と了承した。
という経緯で、僕はいまこの文章を書いている。隣には、「まだー?」と退屈そうにブランコを漕ぐ言歌さんがいる。
もう暗くなり始めていて、空にはまん丸の月が出ている。
ねー、流れ星じゃね、あれ!と言歌さんが空を指さした。どうやら僕は見逃してしまったみたいだ。言歌さんが何か言いたげに僕を見ている。今からなんていうんだろう。僕は返事をしてから、そのことについて次の行に書くことにする。
言歌さんは、「流れ星に願い事するなら、なんにする?」と聞いてきた。その質問好きだなぁ、と思わず苦笑いが漏れる。
普通に答えるのは芸がないから、ここに記して、その答えにしようと思う。
君と、また来年も。同じ空を見上げられますように。
今、肩越しに言歌さんに画面を覗かれているので、そろそろこの小説も終わりにしようと思う。
だから最後に、もし僕が見境なく発信したこの小説が、何かの間違いで、僕らとなにも関係もなく、お互いに認識もできないような世界に届いて、誰かがそれを受信したら。
そう、貴方です。これを受信してくれた貴方が、貴方の世界に発信してくれませんか。
僕たちの、あの小説への批判を、発信してください。あの小説が、貴方達の世界にも存在するなら、僕はそれを葬らなければならないので、どうかお願いします。
というだけの、
ただ、それだけの話です。