赤土の滑走路
国家とは、境界線に過ぎなかった。
通貨とは、幻想に過ぎなかった。
教育とは、最も静かで最も深い支配の回路だった。
この物語はフィクションである。だが、すでに現実の一部である。
東南アジアのある村に、一人の男が降り立った。肩書きも、国籍も意味をなさない。彼は「秩序の再定義」を目指し、教育を武器に村へ入り込み、AIと仮想通貨を用いて、国家という物語を静かに超えようとした。
人道の顔をした帝国は、銃を撃たない。だが、深く染みこむ。
境界なき、領土なき支配が、いま静かに形を持ちはじめている。
これは、未来の記録である。
雨季明けの東南アジア某国、メコン川の流域にある赤土にまみれた滑走路に、小さなプロペラ機が着陸する。マサは機内の窓からじっと外を見つめていた。<教育>、それが今回の名目だ。だが、それはあくまで入り口でしかない。
彼が降り立ったのは、山と川に囲まれた辺境に近い村だった。携帯の電波は通じる。SNSも使える。だが、その「接続」は、貧困と退廃の上に成り立っていた。
市場の裏通りでは、十代の少女たちが観光客の影を探し、街の役人は封筒を受け取って見て見ぬふりをする。学校の校舎はあるが、教師は常勤せず、授業内容は形ばかりだった。腐敗は制度の隙間に根を下ろし、だれも驚かない。
当然ながら、異国の中年男が突然現れたところで、村の人々が彼を歓迎することはなかった。言葉も違えば、信用もない。マサは空港近くの安宿に寝泊まりしながら、AIとの対話を重ねていた。
そしてある夜、ふとAIが提示した一つのシミュレーション結果を見て、マサの中で“国”という枠組みが過去のものとして剥がれ落ちた。領土、憲法、国旗、国家予算——すべてが一時代の幻影であり、支配の構造はもっと流動的で、分散的で、接続的なものになり得るという確信。
「ならば、秩序を作り直せばいい」
その端緒として彼が選んだのが“教育”だった。だれもが正義と希望と誤解する分野。だがそれこそが最も深く人間の価値観を作り変える回路だった。
マサは「無料の教育支援プログラム」として活動を始めた。AI教材を用い、現地語と英語で読み書きを教える。使用するタブレットは、日本で払い下げられた中古品。通信は衛星と携帯回線を併用して確保する。村でのやり取りにはAI翻訳機を使い、現地の子どもや保護者と、ゆっくりと言葉を交わすようになった。
「後に、「これは未来の希望だ」と人々は言うようになった。
だが、マサにとってそれは希望ではなく「接続」だった。知識、ネットワーク、依存関係——この村が世界とつながる初めの一歩。そして、その接続の先に彼は、見えない支配の回路を築こうとしていた。
半年が過ぎた頃、最初の“成果”が生まれた。ある少年が、AI教材とマサのサポートを通じて、カタコトながら英語を習得し、町のホテルのフロントに就職したのだ。月収は村の平均の二倍。この出来事は村に静かな衝撃を与えた。
彼のAIは黙って学習を続けている。生徒の成績、家庭の貧困度、村の人間関係、裏金の流れ、少女たちの所在、すべてが記録され、モデル化されていく。
マサは、微笑んでつぶやいた。
「これは帝国の礎だ。領土なき、境界なき、支配のかたち。」
作者はAIと対話して作成しています。アイディアをAIに伝え、文章として具現化している、半人間、半AIの共同作品です