第8話 未来への希望~SIDEフェリシア専属侍女サラ~
わたくしは王宮勤めをさせていただいております侍女、サラでございます。
この度、大変光栄なことにオリヴァー殿下の奥様になられるフェリシア様に使えさせていただくこととなりました。
お二人が結婚して数日が経ちましたが、まだ食事時も奥様は緊張されているようで、自分からお話にはなりません。
「今日は遅くなる。先に寝ておいて構わない」
「かしこまりました」
そんな少ない会話が夫婦の間にあるのみは、あとは静かな空間が流れています。
元々、殿下は言葉数が多い方ではなく口下手なため、よく冷酷や冷徹と勘違いされることもございました。
半年が経ちましたが、お二人の距離は離れたままです。
きっと殿下が奥様に冷たい態度をとっていらっしゃるのでしょう。
──ですが、少し気になりますね。
奥様はいつも不安げでどこか悲しそうな目をしてらっしゃいます。
政略結婚というものですから、お二人とも気が合うことがなく関係を築くのに苦労をなさっているのでしょうか。
そんな殿下の戦地行きが決まって、奥様はひどく落ち込んでいらっしゃいました。
しかし、半年後のクーデター事件の解決をきっかけにお二人の距離は急激に縮まってききました。
「サラ」
「どうしましたか、奥様」
「オリヴァー様は優しい方ですね」
その言葉を聞いて、わたくしは大変嬉しくなりました。
きっと殿下の態度が変わったのでしょうが、あの方の真っすぐで実は優しい部分に気づいてくださる方はそうそういません。
ですから、奥様が嬉しそうにお話をされているのを見て、わたくしもほっとしました。
それと同時に奥様のこんな笑顔を見ることができて、彼女のことを可愛らしい方だと思いました。
こんな素敵な笑顔を隠していらしたなんて……。
殿下はもう悩殺され……いえ、失礼しました。魅了されてしまいますね。
「サラ」
ある朝、わたくしは朝に奥様に声をかけられました。
「どうなさいましたか?」
「あの……プライベートで旦那様とモーニングがしたいのですが、ご準備をそちらにお願いすることはできますか?」
まあ、なんてことでしょう。
昨日夜遅くまで灯りがついているとは思っておりましたが、お二人の距離は縮まったそうですね。
「もっと殿下とお話になりたいと思われましたか?」
思わずそう尋ねてしまいました。
すると、奥様は頬を染めてこくりと頷きます。
わたくしは嬉しくてたまらなくなりました。
「奥様、これからも殿下をよろしくお願いいたします」
不思議そうな顔をしていらっしゃる奥様にわたくしは笑みを浮かべ、モーニングの準備へと向かいました。
不器用なお二人がこれからどんな夫婦となるのか。
いえ、きっとこのお二人なら素敵な夫婦になるのでしょうね。
そんな予感が今からいたしました。
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