第5話 家族との再会
デュヴィラール王国の王女とクライン王国王子の政略結婚の裏で行なわれたクーデター事件は、裏で糸を引いていたデュヴィラール国王と第二王妃の収監によって終わりを迎えた。
デュヴィラール王国は国王不在となったこともあり、クライン王国の支配下に置かれることとなった。
一方、一時的に命の危険があった王女フェリシアの姉であるクラリスと、姉妹の母である王妃ヘレナは無事に王宮へとたどり着いていた。
「お母様! お姉様!」
「フェリシア!」
フェリシアとクラリスは再会を喜んで抱擁した。
そんな姉妹の様子をヘレナは微笑ましく眺めた後、玉座のクライン国王に頭を下げる。
「国王陛下、この度は我が夫、そしてその妻が御国に大変なご迷惑をおかけいたしました。正妃であった身として二人を止められなかったこと、大変申し訳なく思っております」
「いいや、貴殿のせいではありませぬ。どうか、顔をお上げくださいませ」
クライン国王は自らヘレナのもとへ足を運び、顔をあげるように告げる。
二人のやり取りを見た姉妹も母親に合わせて、謝罪の意を示した。
「クラリス殿、そしてヘレナ殿には御身の安全も含めて居住専用の第二王宮で住んでいただく形になりますが、よろしいでしょうか?」
国王の申し出にありがたいといった様子で、クラリスとヘレナは了承をした。
「長旅でお疲れでしたでしょう。クラリス殿は体も強くないと愚息より伺っております。お部屋に案内させますので、お休みくださいな」
「お気遣い痛み入ります」
国王の部下が「こちらでございます」と言い、部屋へと二人を連れて行った。
「フェリシア」
「はい、オリヴァー様」
フェリシアはそんな二人を見送っていたのだが、オリヴァーに声をかけられる。
「良かったら少しお二人と話してきたらどうだ?」
「よろしいのですか?」
「ああ、しばらく会っていなかっただろう。それに、慣れない場所でお二人も心細いだろうから、家族で話してこい」
(オリヴァー様……)
フェリシアは彼の気遣いに心が温かくなった。
深々と頭を下げた後、二人の後を追おうとする。
しかし、その瞬間、オリヴァーに腕を引かれて耳元で囁かれた。
「────」
その言葉を聞いた途端、フェリシアは顔を赤らめてこくりと小さく頷いた。
クラリスとヘレナの部屋は一室ずつ与えられているものの、すぐに行き来できるように内部に扉が設置されていた。
「これなら、すぐにお母様に会えるわ!」
「そうね、私もすぐにあなたの体調を見に行けて安心だわ」
二人は新しい部屋に満足していた。
フェリシアの二人の様子を見て安心したのか、ホッと胸を撫で下ろす。
「フェリシア」
突然、姉に呼ばれて振り返ると、姉が嬉しそうにフェリシアに抱き着いた。
「お姉様……」
「心配した。それに、心配かけたわよね、きっと……」
「はい、お姉様もお母様も本当にご無事でよかった」
久々の家族の時間とあって、話は止まらない。
「クラリスもだいぶ体が良くなってきたのよ」
「本当ですか!?」
母であるヘレナが伝えると、フェリシアは嬉しそうに声をあげた。
すると、クラリスが元気だと見せるためにその場で駆け足をして見せる。
「ほらっ! すごいでしょ!」
「まあ、ほんと! でも、そんな走ったらドレスが……」
そう言った傍からクラリスは転びそうになった。
急いでヘレナとフェリシアが彼女に駆け寄って、事なきを得る。
「もう、ご無理なさらないでください……」
「ごめんなさい。でも、嬉しくて…!」
三人は久々に会えた嬉しさからそんな会話をしながら笑い合った。
「では、またこちらにも顔を見せますね」
「ええ、でもあなたは公務もあるでしょうから、こちらのことはあまり気にしないでね」
母親の気遣いにフェリシアは頷くと、二人に別れを告げて部屋を後にした。
(よかった、二人とも元気そうで……)
再び笑顔で会うことができた嬉しさに浸っていたフェリシアだったが、あることを思い出してその場に立ち止まった。
(そうだ、オリヴァー様に……)
それは謁見の間で囁かれた彼からの言葉だった。
『寝室で待ってる。初夜の続きをしよう』
その言葉を思い出して、彼女は顔を赤らめたのだった──。
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