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第11話 フェリシアの想いと民の声

 デュヴィラール国王に裁きが下されたことにより、デュヴィラール王国は正式に王族を失って国としての歴史を終えることとなった。

 デュヴィラール領は少しずつではあるが、クライン王国の所属地域となって行く予定だ。

 クライン王国の充実した国家支援や豊かさを享受できるとあって、デュヴィラール国民の半数以上はこのことに好意的だった。


 しかし、一部の者は自国がなくなった悲しみを受け入れられずにいる。

 そうした情勢の中、クライン王国建国100年式典は執り行われることとなった。

 両国の架橋となる存在として、フェリシアがこの式典で国民へのスピーチを任されたのだった。


 オリヴァーが隣で見守る中、フェリシアはゆっくりと口を開く。


「クライン王国が100年の時を無事に迎えるこの日に、わたくしが皆様に思いを届けられる機会を得られたこと、大変嬉しく思います」


 彼女のスピーチにクライン王国民はもちろん、元デュヴィラール国民も耳を傾けている。

 バルコニーからたくさんの人を眺めながら、フェリシアは言葉を紡ぐ。


「知っての通り、我が父は罪を犯しました。クライン王国民、そしてデュヴィラール国民であった皆様へ大きな危害を加えることとなりました。父の起こしたクーデターによって多くの人々の命が奪われ、辛い思いをしました。そのことについて、娘として謝罪をさせてください」


 フェリシアは深々と頭を下げた。


「デュヴィラール国はなくなり、そのことで心を痛めている人も大勢いると思います。私たち親子を恨んでいる方もいらっしゃると思います。私は二国の架橋となる存在として嫁ぎました。そこには政治的意味はあっても、愛される存在にはなれないと思っていました。でも違いました。父のクーデター関与を知ったオリヴァー殿下は、私のことを非難するでもなく怒るわけでもなく、突き放すわけでもなく、優しく包み込んでくださいました。そんな殿下のお傍にいられること、お傍でこの国の行く末を見守れることを今は嬉しく思っています。殿下、そしてクライン王国の皆様は私を愛してくれました。だから、どうか私の生涯をかけてこの国を……皆様を愛させてくださいませんか?」


 フェリシアは頭を下げて願った。


 しばしの沈黙が流れた後、一人の拍手が響き渡った。


「オリヴァー殿下?」


 彼の拍手をきっかけに群衆が皆、一斉に拍手を始める。

 大きな音の渦が巻き起こり、やがて歓声へと変わっていく。


 オリヴァーはフェリシアを抱き寄せた。


「ほら、見ろ。お前が守った皆の笑顔だ。胸を張れ」

「旦那様……」

「今は公務中だ。殿下と呼べ」

「はいっ! 殿下!」


 彼女のスピーチは国中へと届き、新たな王子妃への誕生を祝った。

次回、最終回となります!

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