第7話 アドリブ
「実験台ってどうしてそうなるんですか? 」
「君は、私の変なところを見たんだから、そのくらいしてもらわないと困るよ。もし断るって言うなら先生にえっちな事して来られたって言う」
急に僕の方に迫ってくるため、僕は、その女子にこう返事をする。
「分かりました。僕が実験台になります」
「それならさっきの事は許してあげる」
すると今度は、急に机を僕の机にくっつけてくる。
「ありがとう」
「別に良いよ。あっ、私は戸松 心美。よろしくね」
「僕は、桜井 勇人と言います。よろしくお願いします」
「桜井くん、硬いわね!敬語じゃなくて良いよ。席も隣なんだから」
「ありがとう、戸松さん」
この時、戸松さんは少し笑ってくれた。
笑ってくれた戸松さんの表情が僕にはすごく可愛く思ってしまった。
「あっ、次の休み時間になったら体育館の裏についてきてくれない? 」
「どうして体育館の裏になるんだよ」
「だって他の人に見られたくないから」
「それなら良いよ」
こうして僕は、次の休み時間に戸松さんと体育館の裏に行くことになった。
そして休み時間になって、僕と戸松さんは体育館の裏に移動すると、戸松さんがいきなり、セリフと行動について説明してくる。
「それじゃ、桜井くんは優くんの役で、私は彩希ちゃんの役をするから、桜井くんは、彩希好きだよって言って近寄ってきてくれる? 」
「分かった。今からセリフ言ってから近寄っていくよ」
「桜井くん、頼むわね」
僕は、言われた通りのセリフに少しあることを付け加える形で、言ってから戸松さんに近寄っていく。
「彩希、好きだよ。他の誰よりも好きだよ! 」
「優くん、そんなこと言われたらもう我慢できない! 」
(ちゅっ!)
すると物語の中に入り込んでる戸松さんは、そのまま僕の唇にキスをしてくれた。
僕は、この時すごく幸せな実験台だと思ってしまい、ドキドキが止まらなくなっていた。
そしてここで、戸松さんが急に顔を真っ赤にしながらこう言ってくる。
「桜井くん、勝手にアドリブをいれないでよ! 」
「実験だからアドリブを入れてみた方が、良い感じになるかなって思ったんだけど… 」
「良い感じになりすぎて本当にキスしてしまったじゃない! 」
「それは戸松さんが物語の中に入り込んでたからじゃないの? 」
僕がそう言うと戸松さんは、さらに顔を赤くしながら小声でこう言ってきた。
「桜井くん、私の唇を奪ってよ」
「ちょっといきなり何を言い出してるんだよ」
「私だけドキドキするなんてズルい! 」
「それは実験と関係あるの? 」
「関係あるよ!桜井くんのえっちなアドリブのおかげで今、すっごく良いキスシーンが思い付いたから」
「別にえっちなアドリブではないと思うけど… 」
僕が苦笑いしながらそう言うと戸松さんは、急かしてくる。