第32話 僕と部長
「そうなんですね。でも僕のせいで本当にごめんなさい」
僕は、結衣先輩に辛い思いをさせてしまうと思ったため再び頭を下げて謝ると、結衣先輩はさらにイライラしてしまう。
「勇人、次また謝ったりしたら本気で怒るわよ! 」
「結衣先輩? 」
「あたしが悪いの。勇人には妹が家で待ってると思うのに、あたしのせいで… 」
「結衣先輩は何も悪いですから」
僕がそう言うと結衣先輩は、泣き崩れていく。
「あたしは、他の部員みたいになかなか素直になれないし、すぐイライラだってしてしまう。おまけに勇人を今、巻き込んでしまってるし… 」
「巻き込んでなんていませんよ」
「巻き込んでるよ!だからあたしは責任を取らないといけない」
「責任ってどう意味ですか? 」
「あたし部長辞める!勇人を巻き込んでしまったんだから… 」
僕は、これ以上結衣先輩が泣き崩れていく姿を見たくないと思ったため、結衣先輩を優しく抱き締めていく。
「先輩、ちょっとだけ抱かせてください」
「ち、ちょっと今そんなことされたら困るんだけど」
「結衣先輩が僕をこの部に誘ってくれたお陰で、今の自分があります。それに僕は、結衣先輩が部長をやめてほしくありません」
「勇人… 」
「結衣先輩には、これからも今まで通りいてください」
「抱かれながらそんなこと言われたらあたしドキドキしちゃうじゃない」
「僕もドキドキしてますよ」
僕は、さらに結衣先輩を抱き締めていく。
すると結衣先輩の顔が真っ赤になっていき、こう言ってくる。
「勇人に抱かれてると、あたし落ち着いてきたよ」
「それは良かったです」
「勇人、今日だけ今から甘えて良い? 」
「もちろん良いですよ」
僕がそう言うと結衣先輩は、時計を見ながらこう言う。
「勇人、スマホはある? 」
「はい。スマホなら僕もあります」
「妹にメールしてる方が良いんじゃない」
「そうですね。ですが内容は、どうすれば良いんでしょうか? 」
僕が結衣先輩にメールの内容について質問すると僕のスマホを手に取って言葉を言いながら文面も同時入力していく。
「ちょっと借りるね。『作家部の部活が大幅に終わるのが遅れてしまって、校舎の中に閉じ込められてしまったから今日は帰れなくなった。本当にごめんね。でも明日の朝には帰れるから心配しないでね』」
「結衣先輩、これで良いんでしょうか? 」
「これで大丈夫だよ。あとは明日、勇人が家に帰ったら妹に、『部長と学校の警備員が謝ってて、再発防止を心掛ける』って言ってたからって言えば大丈夫」
「教えてくださってありがとうございます! 」
「こう言うことは、あたしに任せたら良いんだよ」
「すごく助かります」
すると結衣先輩が、スマホの画面をみながら、恥ずかしそうにお願いをしてくる。




