第30話 延長戦の始まり
すると結衣先輩が驚きながらこう言ってくれた。
「勇人、本当に全ページコピーしてきてくれたの? 」
「はい。ページ数が100ページ以上ありましたが、しっかり確認して全ページコピーしてきました」
「それじゃ段落の作業はあたしがするよ」
「結衣先輩、どうしてですか? 」
僕が結衣先輩に質問すると、杏先輩が時計を見ながら教えてくれる。
「あと2分で部活の時間が終わってしまうんだよ。でも部長は気になったところは、出来るだけその日のうちに済ませないと落ち着かないタイプだから」
「そうなんだね… 」
「だから部長は、勇人の事を気遣ってくれてるんだよ」
「杏先輩、そうなんですか」
僕は、明るく杏先輩に返事すると結衣先輩が、杏先輩に照れながら注意する。
「小倉、別にあたしは勇人に気遣いなんてしないから」
「部長、たまには素直になった方が良いんじゃないんですか? 」
「小倉、それは余計なお世話だと思うけど…」
すると時計を見ていた心美が、杏先輩にこう言う。
「小倉先輩、時間になりましたよ」
「心美ちゃん教えてくれてありがとう」
「いえいえ!ぜんぜん良いですよ」
心美が杏先輩にそう言うと、部長である結衣先輩が椅子から立ち上がって、みんなに向かってこう言う。
「それじゃ今日の部活はここまで!忘れ物はないように自己管理するように」
そして僕たち部員は、部長である結衣先輩に挨拶する。
「お疲れ様でした」
「みんなもお疲れ様」
それから部員である彩奈と心美と杏先輩は、楽しくおしゃべりしながら帰っていき、僕と結衣先輩の二人きりになった。
すると結衣先輩が僕に話しかけてくれる。
「勇人は帰らないの? 」
「結衣先輩のお手伝いをさせてください」
「良いよ。これはあたしの小説だし、勇人はコピーしてきてくれたんだから」
「でもこれでは段落出来ませんよ」
「それはあたしも分かってる」
「それなら一緒にやりましょう」
僕がそう言うと結衣先輩は、部室の鍵を閉めに行ってからこう言ってくる。
「勇人って変わってるよね。こんなことしたって勇人には何のメリットもないよ」
「メリットならあります。その分、結衣先輩と一緒にいられますから」
すると結衣先輩が恥ずかしそうにしながらこう言った。
「あたしといて楽しい? 」
「楽しいですよ! 僕、もっと結衣先輩の事を知りたいです」
「勇人、何言ってるんだよ。早く帰らないと妹が心配するぞ」
「妹なら大丈夫ですから」
僕がそう言うと結衣先輩が、はりきりながらこう言い出す。
「それじゃ今から一緒に小説の段落作業していくから、勇人は消しゴムで段落が必要と思うところを消して! 」
「分かりました! 」
「あたしは消しゴムで消したところを一文字ずらして書き直していくから」




