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僕の知る限り、第一歩

筆を折った気でずっと居たけどそろそろいい歳だし、何か形として残したいなと数年ぶりにちゃんと書こうと思いつつ若いころと変わらぬ見切り発車、ストック0、とにかく形にしたいだけなので不定期更新。

お時間があればお読みくだされば幸いです。

 知識とは知的好奇心から来るものでありそれが満たされることは人の生において、まずないだろう。

 ありとあらゆることを知っていれば人は何でもできる、なんてことはない。

 知っていても必ずしもそれに見合う能力があるなんてことはそう都合よくないんだ。

 しかし、今この時にそんな無能な自分にさえ出来るって知ってしまえば、やらない訳には行かなかった。


 今この瞬間から俺の物語が始まったと思える瞬間だった。


 時は二十二世紀、魔法と科学が程よく両立された技術体系として存在する、他にあまり見かけない世界。

 よほど田舎でもない限り存在しないはずの不思議と、月明り以外の光源がない薄暗い裏路地に睨みあう男女がいた。


 片や妹を組織に人質に取られ無理やり従わされてるサムライマン、剣崎佐助(けんざきさすけ)

 片や病気の妹の治療をする代わりにと機関に雇われてるガンスリンガー、楠宮詩織(くすみやしおり)

 共通項と言えば重度のシスコンであるということ、本来なら二人が殺しあう道理はないのだ。俺はそれを知っている。


 とはいえ今まさに一触即発、居合いと早打ちこのままいけば相打ちとなるのでそこへ一石を投じることにした。


 コツン。


 文字通りその辺に落ちていた小石を二人の間に投げると渇いた音が裏路地に鳴り響いた。


「ッ」


 瞬時に二人に睨みつけられる俺、正直俺は知ってることを話すしかないしがない一般人Aだ。

 とりあえず両手を上にあげ万歳でその場に留まる。


「……何者だ?一般人なら失せろ。」


「そうよ、ここはアンタみたいなのが来るところじゃないわ、何の真似だか知らないけれど、私たちの気が変らないうちに行くことね。」


 二人としては見逃してくれるようだがそれで、はい、そうですかというならそもそも石など投げていない。


「あー……俺はお二人に有益な情報を言いたくて来ました。」


 二人が訝しむような険しい顔になる。


「まず何者だ? お前が何を知っているというんだ?」


 片や興味を持ち。


「死にたがりか何か?そういうの他所でやってくんない?」


 片や興味なし。

 それは仕方ないことだ、置かれている状況が違う、あくまで二人の認識ではだ。


「えーまず何者かと言われたら俺は……全知無能とでも名乗っておきます」


「ぜんちむのう……?」


 こういえば女の方も少し興味を持つ事は知っていた。


「ええ、何でも知ってるが、特に役に立たない、そんな感じです」


「ふん、それで、お前は一体何を知ってるっていうんだ?」


「そうですね、例えば、お兄さんの妹さんの囚われてる場所とか」


「ッ」


 突然放たれた殺気のような凄味に思わず腰を抜かしてその場に座り込んでしまう。

 いやいや組織に従っている彼にとっては喉から手が出るほどの情報だ、仕方のないことと知ってはいたが、心構えがあっても所詮知識しか伴わない僕では耐えれるものではない。


「言え……桜はどこにいる……?」


「はぁ……落ち着きなよ一般人相手にそんなんじゃ彼話せないんじゃない?」


 楠宮さんに言われ剣崎さんが押し黙り、加えて武器から手を離した。

 続いて身構えていた楠宮さんも構えを解く。


「ふぅ……危うくチビるかと思った……助かりました楠宮さん」


「別に、けどアンタお二人にって言ったじゃない? 私にとっての情報って気になったのよね」


 それはそうだろう、彼女としては別に困っているつもりはないのだから。

 知らないし知らせれていない機関にいいように使われているだけなのだ。


「あなたについても妹さんの情報ですね、病気を治療していると思っているようですが実際は妹さんは病気でも何でもなくて実験体として扱われています」


「なんですって!? 病気じゃないってどこに証拠があんのよ?」


 聞き捨てならない情報ではあると思っている、のでここは知ることは全て明かす場面だ。


「そればかりは僕の異能である『全知』、全てを知っているではダメですか? どのぐらい知ってるかといえば、全部ですが、そうですね、まずお名前は楠宮詩織さん、二十一歳、家族構成は妹のみ、妹さんの名前は百合さん、表向きの病名は多動性細胞疾患、発現した異能『再生治癒』の力が暴走しているだけで現在は至って健康だが、機関は検査と称して大量の血液を採取、それを用いた薬を売ってぼろ儲け、手放したくないので未だ虚偽の報告をしている……こんなところですかね。」


 異能、別に世界中の人間全員が持っている訳でもなければ神様に授けられたとかそういったモノではないが今のところ世間一般では神が授けたギフトという説が主流だ。

 才能や技術とは違いある日突然目覚めては使い方もいつの間にか知っている、異能所持者からしたら大体不気味で気持ち悪いと最初は思う代物である。

 色々な思惑やらなんやらも知ってるが今は簡潔に話を聞いてもらうにはこのぐらいでいいだろう。


「何よ……それ……」


 信じていたものに裏切られた、少なくともスラスラと述べた俺の言い分に何らかの信憑性は見出した様子、それは彼女の持つ異能『超直感』から来る確かなものである。


「それで剣崎さんの方は住所言うので助けに行くだけですが、二つほど条件があります。」


「なんだ?」


「一つは救出の際はお二人で行ってもらいます、もう一つは妹さんを助けたら楠宮さんの妹さんの奪還に協力してもらいます。」


「いいだろう……しかしそれでお前に一体何のメリットがある?」


「一先ずはお二人に信用してもらえることと恩が売れますよ、僕がやりたい事をやるためにまずはお二人が欲しい。こんな色々べらべら喋ってますが僕は先ほども言いましたが知ってるだけで戦う力や能力はないただの一般人ですからね。」


 お二人が欲しいとは言ったがそこには言わずとも芋づる式にくっついてくるお二人の妹さんらも含まれる、が、重度のシスコンに妹さんらと同い年の僕が言うのでは反感を買うので黙っておく。


「普通の一般人はこんなとこ来るもんじゃないわよ?」


 楠宮さんには呆れられている、そんなことは言われなくても知っている。


「異能持ちの一般人ですのでそこはご容赦ください。」


「いいわ、それで助けるって具体的にどこで何したらいいわけ?」


「まずは剣崎さんの妹さんからですね、僕の知る限りタイミングとしては今日今からすぐに行くとチャンスがありますので、剣崎さんもよろしいですか?」


「そうだな、信用は未だに出来ないがそれでも俺は藁をも掴む思いだ、乗った。」


「ありがとうございます、とりあえず僕の隠れ家に来てもらいます、作戦等はそこで伝えるのでよろしくお願いします。」


 黙って頷く二人に背を向け隠れ家として使用している山小屋へと向かうことにした。

 こうして僕の物語は僕の知っている通りに歩み始めた、この先数多くの苦難があることを僕だけが知っている、これは僕にしか出来ないことなのだから、なんとしてもやらなきゃならないんだ。

評価の類は特に御自由にモチベーションはとにかく一つ作品を残しただけなので。

感想等はご自由に、返信はあまりしないかもしれないけど。

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